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「大久保利通の薩長協力論」

『大久保利通文書』
「明治二年十二月十八日付
東北平定、干戈、漸く止むといへども、天下方向定まらず。列藩、狐疑を抱て躊躇し、在朝の官員、覊旅の思を成す。危急、今日より甚しきはなし。是に於て、朝廷人材を救ひ、勅命屡々下るといへども、速に詔に応ずる者鮮し。殆ど孤立の形を成んと欲するに至る。是、固より朝廷上大信を天下に宣布すること能はず、一として朝廷の失体に帰すべし。 (中略)壬戌以来、勤王を唱、参朝して以て天顔を拝し、王事に鞅掌するの基を開きしも薩長也。而して天下列藩これに慣ふ。丁卯冬、王政復古の業を開きしも薩長及び土芸等也。而して天下列藩これに慣ふ。当春に至り、版図奉還を願ふ者も薩長及び土肥也。 而して天下列藩これに慣ふ。其の進退挙止、天下の大勢に関係すること此の如し。今、薩長天下の動静を伺ひ退て傍観する時は天下列藩これに慣ひ、今、薩長朝廷を重んじ、進んで尽す処あれば天下列藩これに慣ふ。其の勢、瞭然として顕はるべし。 況乎、今日力の強弱を計るに朝廷よりも威力ある者は薩長なり。  然るに、両藩力を朝廷に用ひずして、藩々蓄へ、進まずして退くときは、朝廷身ら微弱なる所以なり。(中略)薩長は皇国の柱石なり、命脈の係る所なり。両藩相合はざるは 皇国の命脈を縮むる所以なり。(中略)故に云ふ、今日の急務は薩長合一して力を朝廷に尽すにありと」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)