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「徴兵告諭」

『法令全書』
「我が朝上古の制、海内挙て兵ならざるはなし。有事の日、天子之れが元帥となり、丁壮兵役に堪ゆる者を募り、以て服さざるを征す。役を解き家に帰れば、農たり工たり又商賈たり。固より後世雙刀を帯び武士と称し、抗顔座食し、甚しきに至りては、人を殺し、官其の罪を問はざる者の如きに非ず。(中略)太政維新、列藩版図を奉還し、辛未の歳に及び遠く郡県の古に復す。世襲座食の士は、其禄を滅し、刀剣を脱するを許し、四民漸く自由の権を得せしめんとす。是れ上下を平均し、人権を斉一にする道にして、即ち兵農を合一にする基なり。是に於て士は従前の士に非ず。民は従前の民にあらず。均しく皇国一般の民にして、国に報ずるの道も固より其の別なかるべし。凡そ天地の間、一事一物として税あらざるはなし、以て国用に宛つ。然らば則ち人たるもの固より心力を尽くし、国に報ぜざるべからず。西人之れを称して血税と云ふ。其の生血を以て国に報ずるの謂なり。且つ国家に災害あれば、人々其の災害の一分を受けざるを得ず。是れが故に人々心力を尽し、国家の災害を防ぐは、則ち自己の災害を防ぐの基たるを知るべし。苟も国あれば則ち兵備あり、兵備あれば則ち 人々其の役に就かざるを得ず。是に由てこれを観れば、民兵の法たる、固より天然の理にして、偶然作意の法に非ず。然り而して其の制の如きは、古今を斟酌し、時と宜を制せざるべからず。西洋諸国数百年来研究実践以て兵制を定む。故を以て、其法極めて精密なり。然れども政体・地理の異なる、悉くこれを用ふべからず。故に今其の長ずる所を取り、古昔の軍制を補ひ、海陸二軍を備へ、全国四民男児二十歳に至る者は、尽く兵籍に編入し、以て緩急の用に備ふべし。郷長・里正、厚く此の御趣意を奉じ、徴兵令に依り、民庶を説諭し、国家保護の大本を知るらしむべきものなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)