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「川路利良の警察制度の建議」

『警視庁史編纂資料』
「夫れ警察は国家平常の治療なり、故に養生に於けるが如し。是を以て能く良民を保護し内国の気力を養ふものなり。一世『ナポレオン』是なり。方今『フロイセン』の四方従へ威武を世界に輝かせしも、警察を以て能く内外を治め、常に能く外を切り国の事情を探れり、故に『フランス』の強国も終に破られたり。然れば国を強くし海外に接する、必ず先づ此の設けなかるべからず。(中略)
一、西洋各国に於て其の首府の警保寮は直に内務省に属し、府下の警保を管掌 せり。其の他の府県は其の長官此の権を兼ぬ。故に内務省内に安寧局ありて、 内務卿に関する全国の警保事務を取扱ふ(警保寮に非ず)。(中略)
一、若し司法・行政の両権を分明にする時は、内務省を置き、内務卿全国行政 警察の長となり、首府の警察令此の権を府下に行ひ、其の他の府県は知事令 に於て警察令の権を兼ね、首府の警察令をして是を奉行せしめ(司法警察に 付て検事の探索・捕亡等必ず警部に依る。所に寄り警部或ひは検事の職を代 理す)、司法卿は全国司法警察の長となり、各裁判所の検事是の権を奉行す (検事の探索・捕亡等、内務官下の警部に依ること前注に云へるが如し)。是 れ欧州各国の例たり。方今吾邦内務省なし。故に姑く警察寮を司法の管下と し、其の事務は行政警察の職を掌り、直に太政官の指令を奉し、隠密警察等 正院監部の職掌を移して警保寮に委任せば、梢欧州の体裁に庶幾からん。
(中略)
一、邏卒の職、平常には司法地方の警察を勤むと雖も、止むを得ざれば銃器を 取りて兵となる。因て各国の警保寮には銃器を予備せり。是れ全く事あるに 臨んで、警察の権力を以て鎮静するを要し、漫りに兵を動かすを恥るなり。 故に地方の一揆・暴動には、警保寮に於て人数を操立るの権あるべし」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)