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「神田孝平の田税改革議」

『明治前期財政経済史料集成』
「方今税法を改正し右に所謂諸弊を除かんと欲せば、田地売買を許し沽券高に準じ金子にて税を収むるより善きはなし。猶ほ詳にこれを論ぜば、先ず田地売買を許し毎田其の沽券を作らしむべし。且つ其の沽券に役所の割印を付し、印なければ証拠とならざる趣を令すべし。此の如くするときは是迄の沽券なき所も不日に出来すべし。沽券直段は地主の定め次第なること勿論なり。然れども故さらに廉価に申立て税を免れんとする者も有るべければ、これを防がんが為に一法を立て、若し地主の定むる所より高価に買はんと云ものあらば、これを売るべし。売る事を欲せざれば、付直段通りに沽券直段を改め、且つ其の直段の一割を与へてこれを謝すべき由を予め訓諭すべし。(中略)納税の手続に至ては、毎年一定の期日に至り、田主自ら税金を懐にし、小役所に届り吏に渡し、受取書を取るのみ、別に煩労費用なし。吏は田券帳に引合せ、是を受取り、管内税金を総括して、上庁に納む。上庁にも兼ねて管内小役所の沽券合帳を設け置き、これに引合せて受取り、総括して大蔵省に納む。大蔵省には国中府県の沽券総計帳を設け置き、これに引合せて受取り、以て海内の税金を統一するな り。租税の法此の如くなれば、其の利勝て計ふべからず。先づ検地も必要ならず。上中下田の別を立つるにも及ばず。検見も無用なり。新田本田の混雑、込高無知高など云ふ埓も無き愚法は一切消尽すべし。又、金納の事なれば、凶年には別年の貯へを以て税に充つる事も出来、米作少くして他産多き地などにては、他産を売り金を税に充つる事も出来るゆへ、民自作の米を食ふ事を得べし」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)