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「江藤新平の法による興国策(外交)」

『江藤南白』
「並立の目的、何等の方略を以て之を達するや、将た幾年を期して之を成すや。試に見よ、荷蘭、白耳義、瑞西の如き小弱国の能く並立の体を完くする者は、法律の精しく行はるればなり、鄂羅の如き法律精しく行れずと雖も強国の一に居るものは、兵力の盛なればなり。然らば則ち兵と法とは並立の要務なる事明なり。所謂法なるものは国法、民法、商法、訴訟法、治罪法、刑法にして、御国も其の会議是迄の如く相運ばば、自今満二年を経れば之を施行し終り、満五年を経れば吏民大概熟すべし。所謂兵なる者は、陸軍の如きは既に之を兵制御施行なりしことなれば、満五年を経れば士卒共に相熟すべし。(中略)右、兵法両条の務め五年を期して定まらば、たとひ兵力の盛は鄂羅に至らずとも、又法律の精しき蘭・白・瑞に至らずとも、我は法兵二つの者を並成する訳なれば、並立の目的初めて達するを得べき歟。夫れ兵と法と一度相整はば、是迄条約を以て制せられたる外国交際通商の事、皆各国同様に改正せんと欲す。而して彼無理に我改正に承諾せずんば理の曲直を相分て戦と決して談判すべきなり。而して談判若し整ひ条約改正に至らば、我始て外人の御国中に在る者へ皆我国 法を奉ぜしめて違はざらしむ。左もこれ無く此の侭打過ず、法と兵との要務を張らずんば、我国の弱且つ貧なる、一年は一年より甚しきこと智者を待たずして知るべきなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)