(s1021)

「国会開設の請願書」

『自由党史』
「国会を開設するの允可を上願する書
 日本国民臣片岡健吉、臣河野広中等、敢て尊厳を畏れず茲に謹て恭しく我天皇陛下に願望する所あらんとす。臣等我国の在て国会開設を望むこと既に久しく、其之を望む所以も亦一ならざる也。故に臣等は今先之を上陳せん。夫れ天の斯民を生ずる也、之に賦するに自由の性を以てし其をして至高の福祉を享受せしむ。凡そ人間たる者、豈に此本性を保存して其□を完ふせざる可けん哉。抑人間の責任も亦重大矣哉。蓋人民の国家を結び政法を立つるも、亦其本分を尽し、その通義を達せんとするに在る耳。然るに我国の如きは、古来政府にして独り国政に任じ、人民も亦曽て自ら之に関与すること無く、自ら焉を知らざるものの如くせり。豈に是れ斯を可矣とせん哉。蓋斯くの如きは則是其自主人たるの力を空ふし、一国民たるのは権義をかくの理にして、真に耻づ可きも亦太甚矣也。故に臣等は今に在て中心之を愧ぢ且つ憾む。焉んぞ今より参政の権利を得て、以て陛下が多労を減ずるを謀り、従来国家の政を挙て皆悉く一に政府の煩はし、政府を労せし罪を償はざるを得ん哉。是れ其臣等が国会の開設を望む所以の一也。凡そ国家に急要なる所のものは人民の一致協和するに在りて、人民の一致協和する ことは、各人同じく其国を愛するの心よりせざるは莫く、若夫人民にして愛国の心なければ、各人別離して一致協和する事靡く、国民にして一和せざれば変乱随て起り、百災由て兆し、国力爰に衰退し、紀綱茲に頽廃し、甚しければ則竟に其国を滅し、若くは其国の大権を喪ひ、不可言の大害を蒙むるに及ぶ可く、而して今其所謂国家の人民にして善く一和せしむるものは、其をして自ら国政に関与せしめ、自ら国事を審知せしむるに在りて、人民をして愛国の心を減殺せしむるものは、専制政体より甚しきは莫ければ、愈王室の安泰を保全し、其鞏固を得可きことは、定律政事に若く事は莫く、王位を危殆に陥れ、王位の鞏固を失ひ易き事は専制政体より甚しきは莫く、国家を危険に傾け、億兆の不幸を醸し易きことも亦、専制政治より甚しきは莫き也。臣等国民たる者定律の政治を望まざることを得ん哉。而して定律の政体を立てんとするも亦必国会を開設せざるを得ざる也。是れ其臣等が国会の開設を望む所以の二也」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)