(s1048)

「工部省」

『大隈文書』
「国家の殷富を致す所以の者は、農工商の三事に在り。農は種殖、樹芸、地力を尽して以て百物を生ず。工は地産の物を取り、人力を尽し、凡百の器具を製し、以て世用に供す。商は二者の作る所を搬運・貨売して天下の融通をなす。此の三者備わらざれば天下日用衣食の具、人民相生じ相養の道絶ぬ。何を以て国家の富を望まんや。就中、工芸の事、費用もっとも広大にして、富強の道此より急なるはなし。(中略)神州古より農事を力め、種芸の業頗る其の秘を発せり。但し畊織の器具未だ精巧を究めず、猶ほ人力を費す事多し。是れ必ず工部の功によらざるべからず。通称融会の道、近時漸く盛なり。而して鉄道未だ設けず、電機未だ具らず。故に運輸出入の便、其の利を得ず。値価高下の度、其の均を得ず。且つ百工の技精ならず。製造の品多からず。乃ち商法また欠る所あり。是れまた工部の力を待つ事あり。今や戦艦銃砲の器、火薬弾丸の剤、国家一日欠くべからざるもの多く、これを海外に資す。是れ尤も工部の力を進めざるを得ざるものなり。故に今般工部の一省を置き、大に百工を褒勧し、智巧を開き、貨物を殖し、以て国家の須要に供し、人民生養の道を盛にし、神州富 強開化の力を逞せんとす」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)