(s1053)

「新貨条令」

『法令全書』
「皇国往古より他邦貿易の事少なく、貨幣の制度いまだ精密ならず。其の品類各種にして其の価位も亦一定せいず。(中略)其の品類区々にして方円大小其の価を異にし混合雑駁其の質を同ふせず。抑貨幣の眼目たる量目と性合とに至りては、殆と弁知すべからず。新旧互に雑用し、品位自ら低下し、其の間或ひは贋造の弊ありて、竟に今日の甚しきに馴致せり。偶々良性の貨幣は徒らに富家庫中の宝物となり、或ひは外国へ輸出せしも亦少なからず。遂に諸品換用の能力を失ひ、日用便利の道を塞ぎ、流通の公益殆ど絶へんとするに至る。実にこれ天下一般の窮厄にして、万民の痛心更にこれより大なるものなし。今其の縁由をを尋繹するに、全く一定の価位なくして、善悪良否を雑用するの旧弊より生ずる事なり。方今貿易の道弥盛むなる時に当りて、旧弊を改め精良の新製を設けずんば、何をもって流通の道を開き富国の基を立てんや。是れ政府の責任にして然も燃眉を急務たり。故に去る明治元戌辰の年より早くその功を起し、莫大の経費を厭はず大阪にをいて新に造幣寮を建置し、壮大なる器械を備へ、広く宇内各国貨幣の真理を察知し、金銀の性質量目より割合の差等鋳造の方法 に至るまで詳かに普通の制を比較商量し、以て精密の通用貨幣を鋳造し、在来の貨幣に加へて一般の流通を資けんとするの都合を謀り、既に開寮の儀典を完了せり。されども前に言へるごとく、区々各種の貨幣多ければ、現場諸品の価値を錯乱し万民の迷惑なることなれば、漸々新旧を交換して、在来の通宝は悉く改鋳し、都て品類を一定せしめんとの御趣意なり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)