(s1056)

「戸籍の編成」

『法令全書』B
「戸数人員を詳にして猥りならざらしむるは、政務の最も先じ重ずる所なり。夫れ、全国人民の保護は大政の本務なる事、素より云ふをまたず。然るに其の保護すべき人民を詳にせず、何を以て其の保護すべき事を施すを得んや。是れ政府戸籍を詳にせざるべからざる儀なり。又人民の各安康を得て其の生を遂る所以のものは、政府保護の庇蔭によらざるはなし。去れば其の籍を逃れ、其の数に漏るるものは、其の保護を受けざる理にて、自ら国民の外たるに近し。此れ人民戸籍を納めざるを得ざるの儀なり。中古以来、各方民治趣を異にせしより、僅に東西を隔るれば忽ち情態を殊にし、聊か遠近あれば即ち志行を同ふせず。随て戸籍の法も終に錯雑の弊を免れず。或ひは此の籍を逃れ、或ひは彼の籍を欺き、去就心に任せ、往来規によらず、沿襲の習人々自ら度外に付するに至る。故に今般全国総体の戸籍法を定めらるるを以て、普く上下の通義を弁へ、宜しく粗略の事なかるべし。
   第一則
戸籍旧習の錯雑ある所以は、族属を分つて之を編製し、地に就て之を収めざるを以て、遺漏の事ありと雖も、之を検査するの便を得ざるに依れり。故に此の度編製の法、臣民一般(華族・士族・卒・祠官・僧侶・平民迄を云ふ。以下これに准ず)其の住居の地に就て之を収め、専ら遣すなきを旨とす」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)