(s1077)

「陸羯南の国民主義」

『近時政論考』
「  政治に於ける国民論派の大要
 国内的政治(ナショナル=ポリチック)とは外に対して国民の特立を意味し、而して内に於ては国民の統一を意味す、国民の統一とは凡そ本来に於て国民全体に属すべき者は、必ず之を国民的にするの謂なり、昔時に在りては未だ国民の統一なるものあらず、其之あるが如き唯だ外観に過ぎずして、更に実相を見れば一種族一地方又は一党与の専有たることを免れざるあんり。帝室の如き、政府の如き、法制の如き、裁判の如き、兵馬の如き、租税の如き、凡そ此等の事物は皆本来に於て国民全体に属すべきものとす、然るに昔時に在りては斯る事物皆な国民中の一部に任して其の私領と為せり、是れ国民統一の実なきものなり、国民論派は内部に向て此の偏頗及分裂を匡済せんと欲す。されば国民的政治とは此の点に於ては即ち世俗の所謂る輿論政治なりと謂ふべし、『天下は天下の天下なり』と言へる格言をば之を実地に適用し、国民全体をして国民的任務を分掌せしめんことは国民論派の内治に於ける第一の要旨なりとす、此理由によりて国民論派は立憲君主政体の善政体なることを確認す」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)