(s1086)
「即天去私」 |
『こころ』 |
「私の後には何時でも黒い影が括ッ付いてゐました。私は妻のために、命をひきずって世の中を歩いてゐたやうなものです。 …すると夏の暑い盛りに明治天皇が崩御になりました。其時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったやうな気がしました。最も強く明治の影響を受けた私どもが、其後に生残ってゐるのは必竟時勢遅れだといふ感じが烈しく私の胸を打ちました。私は明白さまに妻にさう云ひました。妻は笑って取り合ひませんでしたが、何を思ったものか、突然私に、では殉死でもしたら可からうと調戯ひました」 |
現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |