(s1091)

「製糸女工の実態」

『女工哀史』
「凡そ紡績工場くらい長次官労働を強しる処はない。大体に於ては十二時間制が原則となって居るが先ずこれを二期に分けて考えねばならぬ。第一期は工場法発布以前であって、此の頃は是員国の工場殆ど紡績十二時間織布十四時間であった。而して第二期に当たる工場法後から今日へかけては、紡績十一時間、織布十二時間というのが最も多数を占める。(中略)東京モスリンでは十一時間制が原則となって居り、織部は昼業専門だと、公表している。而し乍ら実際では十二時間制の上に夜業がある。(中略)しからば同社は十一時間制を公表して如何なる方法によって十二時間働かせているかと言えば、後の一時間は残業という名目であり、夜業は自由にその希望者のみにやらせるのどと言い逃れている。一年三百有余日残業するところがはたして欧米にあるだろうか。

 篭の鳥より監獄よりも寄宿住いはなお辛い
 工場は地獄で主任が鬼で迴る運転火の車
 此処を抜けだす翼がほしやせめてむこうの陸までも
 会社づとめは監獄づとめ金の鎖が無いばかり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)