(s1095)

「農村における自給自足的経済体制の崩壊」

『自叙伝の試み』
「わたくしの記憶のうちには、わたくしの母親たちが糸を紡ぎ、その糸を染めさせ、あるいはみずから染め、染めた糸をいろいろに組み合わせて巻き、それを機にかけて、紺がすりとかいろいろの縞物とかを織りあげていたことが、はっきりと残っている。そういう活動は明治二十七年以後にもつづいたであろうが、わたくしの従兄の語るところでは、明治三十三年三月に彼が中学に入学したとき、彼の母親は久しぶりに機に坐って袴地を織ってくれたが、それが総じてこの叔母の手織り仕事の最後であったという。だからわたくしの母親も、明治二十七年よりも後まで機に坐っていたいあも知れない。しかし、わたくしの記憶に残っているのは、遅くとも二十七年ごろ、たぶんそれよりも前の姿らしい。(中略)
 衣食住のうち、衣に関係する仕事をだいたい村の女たちの手で弁じていた、という時代は、だいたい日清戦争のころに終ったのであろう」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)