(s1099)

「社会民主党綱領」

『労働世界』
「 社会民主党宣言
(中略)
 今日の政党なるものは全く富者に使役せらる所のものにして決して多数人民の意志を代表するものにあらず。今や国民の多数を占むる労働者小作人は無学無識にして、殆ど富者の一顧にも価せざるべしと雖も、彼等は実に財富の生産者なるが故に、将来の社会組織に於て重要なる地位を占むるに至るべきは論を待たず。而して彼等をして其得べき地位を得せしむるは、即ち社会全体の利福を増進する所以なりとす。我党は茲に多数人民の休戚を負ふて生れたり。然れども貧民を庇護して富者を敵とするが如き狭量のものにあらず。而して其志す所は我国の富強を謀るにあれども、然も外国の利益を犠牲に供して顧みざるが如き唯我的のものにあらず。若し直□に其抱負を言へば我党は世界の大勢に鑑み、経済の趨勢を察し、純然たる社会主義と民主主義に依り、貧富の懸隔を打破して全世界に平和主義の勝利を得せしめんことを欲するなり。故に我党は左に掲ぐる理想に向かって着々進まんことを期す。
 別に左の如き綱領を定めて実際の運動を試むべしと云ふにあり。
一、全国の鉄道を公有すること。
二、市街鉄道、電気鉄道、瓦斯事業凡て独占的性質を有するものを私有するこ と
七、政府の事業は凡て政府自らこれに当り、決して一個人若くは私立会社に受 負はしめざること。
九、高等小学校を終る迄を義務教育年限とし、月謝を全廃し、公費を以て教科 書を支給すること。
十一、学齢児童を労働に従事することを禁ずること。
十三、少年及び婦女子の夜業を禁ずること。
十四、日曜日の労働を廃し、日々の労働時間を八時間に制すること。
十六、労働組合法を設け労働者が自由に団結することを公認し、且つ適当の保 護を与ふること。
十七、小作人保護の法を設くること。
十九、裁判入費は全く政府の負担とすること。
二十、普通選挙法を採用すること。
二十三、選挙は一切直接且つ無記名とすること。
二十四、死刑を全廃すること。
二十五、貴族院を廃止すること。
二十六、軍備を縮小すること。
二十七、治安警察法を廃止すること。
二十八、新聞条令を廃止すること。
我党は此の如く社会主義を経とし民主主義を緯として其の旗幟を明白にせり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)