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「自由党と伊藤内閣の提携」

『党報第97号』
「我党は夙に立憲政体を扶殖し責任内閣の基を鞏くし、以て皇室の威厳を保ち其国民の康福を進めんことを企図する年既に久し。議会開設以来幾歳を経るも其効果未だ完きを得ず。従て国家急要の事業未だ興らず海陸の軍備未だ整はず。而して海外の形勢は日に迫り、終に我国は忽然彼の朝鮮の変乱より延て清国との交戦と為り、国力の足らず軍備の全からざるも尚能く凱旋の功を奏し、世界列国に対し強国の名を得ると共に益々其関繋の重きを加へ外交の危変測る可らず。此際上下一致以て百年の大計を定め内外の庶政を理するは当に務むべきの急たり。区々争闘の為めに前途を誤るが如きは我党の深く憂慮に堪へざる所なり。是を以て我党は本年七月方針を議定して之を世に公にし、今後我党と其方針を同ふし相共に謀るべき者は相共に内外の事に力を致し、以て将来の謀を成さんことを宣言、即ち朝野を論ぜず其方針を相同き者あれば相共に提携せんことを以てせり。我党愛国の至誠又た必ずや大に一世を警醒するに足るべきを信じ、肝胆を吐露し以て之を当路者の詢る所あり。当路者亦た深く時局の要を察し我党の誠を諒し、間々民翼を容るるに吝ならざらんとし、其の立憲政体を完 備にし国家の基礎を鞏固にするの方針を取り、内外の事を処するに於て我党は将来に其望あるを認めたり。是に於て我党は向来当路者と其の進運を致さんとす。我党は立憲政体を首唱せり。即ち之が完成を期するは宜しく自ら任ずべき所なり。我党は深く内外の形勢に鑑み憂国慨世の情自ら禁ずる能はず。噫我党は唯だ奉誠以て国に尽すあるを知るのみ、豈に他心あらんや。人に自主あり党に主義あり。苟くも其自主を害し其主義に戻るに至ては固より之を為さず。而して意気相投じ偕に時運に察して当路者と進路を同くするに躊躇せざるもの、是れ我党が大に国家将来に向て期する所あるを以てなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)