(s1128)

「日露講和反対運動」

『大阪朝日新聞』
「明治三十八年九月一日付
竊に聞く米国に於ける和議已に成れりと。和約中掲ぐる所の条件も亦大略世上に喧伝せり。我等国民其の所謂条件なる者を観るに、一も露国と死命を制する者なく、将来の保障を求めんとするも得可からず。甚だしきは勝者の権利、猶且棄てて而して顧みざるに到る。是れ豈屈辱に非ずや。独り陛下の国民と共に期待したまへる帝国の光栄を保全する能はざるのみならず、退譲の余、自ら屈辱を召きて、将来の保障を得ず。他日露国の創痍漸く癒えて、痛苦梢除くに当りては、土を倦きて重来し、再び横暴を逞しくて帝国の危殆を致さんこと、目を東門み懸けて而して観る可きなり。尚何ぞ陛下の国民と共に期待したまへる永遠の平和を、此屈辱の和約に望む可けんや。則ち陛下の有司は、陛下の聖意に背き、陛下宣戦の大詔に悖戻して陛下の国民と共に期待したまへる帝国の光栄を傷け、永遠の平和を撹乱せんとする者なり。泣血悲憤の至に堪へず。
 陛下の赤子たる国民は此の和約を観て、因循姑息と為し、此の屈辱に甘んじて一時の安を偸むも、永遠の平和、固より望むべからずして、他日再び露国と戦ふの日あるべきを予想し、他日露国の創痍已に癒え、武備亦全きに及びて、勝敗を知らざるの戦争に従はんよりは、寧ろ今日の和約を破棄して戦闘を継続せんことを冀ひ、骨肉糜爛して焦土と為るを辞せず。(中略)
 我等国民伏して願くは、陛下が配下の聖意に非ざる和約の未だ調印せられざるに及びて破棄を命じ、閣僚を交迭し、更に賢良に命じて内閣を組織せしめ重ねて軍人に命ずるに進戦を以てしたまはんことを。果して斯の如くなれば、則ち人心一新して勇気百倍し、以て砲火の間に将来の保障を求め、帝国の光栄を保全することを得べきなり」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)