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「普選運動の展開」

『大阪朝日新聞』
「大正九年二月十二日付
紀元節の普選大示威運動 芝と上野から二重橋へ 三団体より成る数万の民衆 大旆を押立てて普選の歌を高唱 万歳を三唱
 十一日紀元の佳節を卜して全関東労働聯盟の大演説大示威運動は上野の二団体と相呼応して芝公園で挙行された。
 前日来の好天気を受けカラリと晴れた空の下に日章旗が翻る。民衆の絶叫を挙げるには得難い好天気である。(中略)民衆の足は芝へ芝へと踵を接し、開場に先だちて会場はすでに群衆数千の動揺めきを見る。『労働者の叫びを聞け』『団結の力を見よ』抔と書したるメガホンからの叫びが其処此処に起る。十二時四十分各団体代表者集合して夫々手配りを終り、司会者鈴木友愛会長登壇、君が代合唱二回、次に普通選挙の歌の合唱。了って鈴木会長開会の辞を述べる。『労働者の熱烈なる意気は竟に雪をも融したり。吾等の決心は如何なる難関も突破し得べしと信ず』と本日の示威運動の二個の意義を述べ、『選挙権を与へず団結の自由を与へざるは労働者を奴隷視するものである。労働者は奮闘せざるべからず。普選案の通過不通過は吾々の死命に関する大問題なり』と述べ降壇。続いて技工組合の金田氏、全国坑夫組合の坂口氏、信友会の入沢氏、自由労働の小笠原氏等各団体の演説あり。(中略)終って友愛会の松岡理事起って、『それ労働者は生産の原動力にして又文化の支持者なり』との宣言書を朗読し、次に『決議 吾人労働者は悪法治警法第十何条@の撤廃を期す。吾人労働者は普通選挙の即 時断行を期す。右決議す。全関東労働聯盟』の朗読ありて満場の拍手天地に震す。午後二時音楽隊を先頭に普選歌を高唱しつつ芝公園を出た。
 大示威行列一万余人は先づ警官隊に包囲厳戒されて、政友会始め各政党を歴訪し各新聞社に敬意を表して日比谷に入り、上野よりの大示威行列と合して二重橋前にて万歳を唱へ、四時半解散」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)