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「国家改造案原理大綱」

『北一輝著作集』
「巻一 国民の天皇 憲法停止 天皇は全日本国民と共に国家改造の根基を定めんがために、天皇大権の発動によりて三年間憲法を停止し両院を解散し全国に戒厳令を布く。(中略)
華族制廃止 華族制を廃止し、天皇と国民とを阻隔し来れる藩屏を撤去して明治維新の精神を明かにす。貴族院を廃止して審議院を置き衆議院の決議を審議せしむ。(中略)普通選挙 二十五歳以上の男子は大日本国民たる権利に於て、平等普通に衆議院議員の被選挙権及び選挙権を有す。(中略)
 巻二 私有財産限度 日本国民一人の所有し得べき財産限度を三百万円とす。(中略)
私有財産限度超過額の国有 私有財産限度超過額は凡て無償をもって国家に納付せしむ。この納付を拒む目的をもって現行法律に保護を求むるを得ず。もしこれに違反したる者は天皇の範を蔑にし、国家改造の根基を危くするものと認め、戒厳令施行中は天皇に危害を加ふる罪及び国家に対する内乱の罪を適用してこれを死刑に処す。(中略)
 巻三 土地処分三則 私有地限度 日本国民一家の所有し得べき私有地限度は時価三万円とす。(中略)私有地限度を超過せる土地の国納 私有地限度以上を超過せる土地はこれを国家に納付せしむ。国家はその賠償として三分利付公債を交付す。ただし私産限度以上に及ばず。
 巻四 大資本の国家統一 私人生産業限度 私人生産業の限度を資本一千万円とす。(中略)私人生産業限度を超過せる生産業の国有 私人生産業限度を超過せる生産業は凡てこれを国家に集中し国家の統一的経営とす。(中略)
 巻五 労働者の権利 労働者の任務 内閣に労働省を設け国家生産及び私人生産に雇傭さるる一切労働者の権利を保護するを任務とす。労働争議は別に法律の定むるところによりて労働者これを裁決す。この裁決は生産的各省私人生産者及び労働者の一律に服従すべきものなり。(中略)
 労働時間 労働時間は一律に八時間制とし日曜祭日を休業して賃銀を支払ふべし。(中略)
 労働者の利益配当 私人生産に雇傭せらるる労働者はその純益の二分の一を配当せらるべし」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)