(s1188)
「陸軍軍縮」 |
『上原勇作関係文書』 |
「大正十三年九月四日付、田中国重より上原勇作宛書簡 一、輿論や民心に迎合せむが為陸軍自ら減師を断行するは、国防を政争の具に 供するの端緒を開く事なり悪例を将来に貽すを以て断じて不可なり。国防上 絶対必要の兵力は仮令政変を惹起するも之に斧鉞を加ふるを許さず。斯くて 初めて、憲法の精神たる陸海軍は大権の発動に属するてう信条も、燦として 光を放つに至るべし。 二、国際的孤立無援の我帝国が我国防の主体たる師団を減少するは、我国威国 権を世界に失墜す。 三、先に師団の整理を行ひ今又師団数を減ずるは、将卒の士気を泪喪せしめ惹 ひて我国民国防観念の冷却となり、国防上無形的方面に多大の欠陥を生ず。 (中略) 六、日露戦争後露国を目標としてけんせつせられたる現存師団を減少して国防 に不安を来す事なき程度に、我帝国四囲の現状は風波静かなるや否や。 露国陸軍は昔日に比すれば其威力衰へたるも、露国に代りて米国なる一剄敵の出現するあり、これに加へて日英同盟は破棄せられ我海軍は華府会議の結果攻撃力を喪失したるのみならず、隣邦支那は動もすれば米国に愁波を送り其歓心を求むるに汲々たるの状に想到せば、我陸軍は米露支の連合軍に対して準備を整ふるの必要なきや。右の情況は減師の理由を裏切るものにあらずや」 |
現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |