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「浜口内閣の経済政綱」

『日本国政事典』
「昭和四年七月九日付
六、戦時好景気時代に馴致せられたる浮華の弊風は経済的反動及び大震火災に 遭遇するも多く減退する所なく近時却て甚しきを加ふる如し。社会の指導的 地位に在る者宜しく率先して勤倹力行以て一世を覚醒するの覚悟あることを 要す。即ち政府自から中央地方の財政に対し一大整理緊縮を断行し依て以て 汎く財界の整理と国民の消費節約とを促進せむとす。財政の整理を実現する に当り陸海軍の経費に関しても国防に支障を来せざる範囲に於て大に整理節 約の途を講ずる所あらむとす。斯の如きは実に国民経済の根底を培ふ所以な るのみならず又以て国家財政の基礎を鞏固にして他日大に伸びんとするの素 地を作る所以なり。若し夫れ整理緊縮の全貌に至りては昭和五年度予算編制 に於て之れが実現を期すべしと雖も現行年度に於いても亦極力之れが実現を 期すべし。
七、我国債の総額は世界大戦開始以来非常の勢を以て増加す今や六十億の巨額 を算す。而かも現在の財政計画に於ては其の増加は殆ど止まる所を知らず、 為に財政の基礎を薄弱ならしめ財界の安定を脅威し公債の信用を毀損するこ と実に甚しきものあり。依て政府は昭和五年以降一般甲斐家に於ては新規募 集を打切るべく特別会計に於ても其の年額を既定募集計画の半額以内に止め むことを期す。又国債償還の歩合は之れを増加するの方針を執り独逸国より 受領する賠償 金は之れを国債償還に充当するの方針を樹つべし。(中略)
八、金輸出解禁は国家財政及び民間経済の建直しを為す上に於て絶対必要なる 基本的要件たり。而かも之れが実現は甚しく遷延を容さず。(中略)政府は 諸般の準備を整へ近き将来に於て金解禁を断行せむことを期す。是れ則ち我 財界を安定し其の発展を致す唯一無二の方途なるを信ず」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)