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「天皇機関説問題」

『天皇機関説問題の背景』
「天皇機関説というのは、統治権の主体はは法人としての国家にあり、天皇は国家の再興機関として憲法の条項に従って統治権を行使するという学説である。憲法の起草にあたった伊藤博文は、枢密院の憲法審議に際して、憲法第四条の『天皇は国の元首にして統治権を総覧し此の憲法の条規により之を行ふ』という条文から、『国の元首にして』及び『此の憲法の条規に依り之を行ふ』の文章を削除せよとする修正意見(その論拠は、天皇の国家統治の大権は憲法の規定によってはじめて生じたものではないとする立場)を斥け、憲法政治の本質は君主権の制限にあることを説き、『此の憲法の条規に依り…』はそのことを意味するものであって、天皇は国に元首であるが故に統治権を総覧するものであることを協調した。伊藤は憲法第四条をいわば天皇機関説的に解釈していたのであって、それは長らく憲法のもっとも正統的な解釈として、歴代内閣はもとより宮中関係者においても是認されていたのである。しかし、陸軍のとくに皇道派をはじめ『現状打破』を標榜する国家主義革新勢力は、統治権の主体を天皇であるとして(天皇主権説)、『天皇機関説を信奉する現状維持勢力』の 打倒をめざし、政府を激しく追求したのである」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)