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「皇道派と統制派」

『青年将校と革新思想』
「皇道派といい統制派というも、名付け親がだれなのかもはっきりしない。また、その理由もわからない。しかし概念的には、統制派とは軍を統制して革新を行わんとしているから、統制派という名がでたのであろう。皇道派は皇道中心の精神主義によって革新を行わんとするものであるから、その名が生まれたと言えよう。皇道派も統制派もともに国家革新をめざしているのだが、その方法において懸隔がある。皇道派は精神主義だから経済施策などあまり重視しない。重視しないというより政治でも経済でも、それを運営する人のいかんにかかわるというのである。つまり、その人の人格や識見のいかんによって善くも悪くもなるとの見解に立つ。組織よりも人であるから、人をかえることが組織を考えるより先に立つ。だからテロの思想も生まれる。(中略)これに反して統制派では人も大切だと思うがそれ以上に重要なことは組織なり機構なりが改められなければ社会は良くならないとの見解に立つ。そして軍全体の組織によて、しかも合法敵に革新を行わんとするのだから血盟的な団結は必要としない。(中略)だから皇道派から統制派を眺めると赤に見えたり、国体を弁えない逆 賊のようにうつる。反対に統制派から皇道派を眺めると、神がかりだとか、足が地につかないと非難したくなるし、国体論だけでは飯はくえないと、ついに口がすべりたくなる」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)