(s1228)
「新体制問答」 |
『朝日新聞』 |
「昭和十五年十月二十六日付 質問一 公益優先はいいが、それを余り強調すると赤だと云はれる、さうい ふ声を聞きます。そのけじめはどうなのですか(埼玉県S生) 質問二 世上には我国の新体制とソ聯の共産主義を同視する人がある様に見 受候に付、その差違及び今回の新体制が世界各国の政策より優越せる 点を御答下され度し(船橋市海神町中村生)。 (答) 公益優先を強調すると赤だといふ考へ方は、新体制運動即ち大政翼 賛運動が何故必要であるかといふよりも、何故この運動が起ってきた かといふ根本の理由を考へれば自ら明瞭でせう。日本は今支那事変と いふ未曽有の大戦争を遂行して居る一方、欧州に於ける大戦は、独伊 を中心として勢力と、英米を中心とした勢力及びソ聯を中心として勢 力、それに日本を中心とした東亜共栄圏の確立のためには、先づ日本 民族が強くなること、とりもなほさず日本といふ国が諸外国の間に伍 して政治、経済、文化その他総ての部門で強くなること、即ち高度国 防国家の建設が必要です。この場合高度国防国家建設のためには、会 社員も商人も労働者も農民も斉しく全部、日本人の全部が一人残らず 高度国防国家建設のために一丸となり、自分の職域で大御心を体して 御奉公しなければなりません。ところがソ聯の共産主義は一言に云ふ と労働者や農民など勤労者階級のために、資本家や地主と戦ふといふ 階級闘争意識が根底となって居るものであって、それは公益優先とは 云ひながら、結局は『労働者階級や農民のため』といふその国にとっ ては、国民全部ではなくつまるとこりは一部分の利害関係を代表した 考へ方になるのです。そこに新体制運動が唱へる公益優先とは本質的 な違ひがあります」 |
現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |