(s1231)
「元駐英大使吉田茂のドイツに対する考え」 |
『西園寺公と政局』 |
「昭和十五年八月二十九日の昼、吉田大使にホテルに来てもらって食事をしながらいろいろ話した。その時に吉田大使は 『一体どうなるんでせうか。まことに憂慮に堪へない。いま日本の新聞はドイツが結局において勝つやうなもとを書き、ドイツに有利な宣伝を書いてゐるけれども、実際の情況はイギリスも相当にやっている。今年の秋頃から暮にかけて、ヨーロッパはほとんど九百万噸から千万噸に近い穀物が不足になるので、穀物の飢饉に瀕しやしないか。その時に一体どうなるかといふことを考へると、ドイツの勝利もすこぶる疑はしい。のみならず、イギリス海峡を渡ることは、どうも実際において難しいやうに思へるし、今後の戦争の成行きについては逆賭ち難い。一方、ソヴィエトは非常に日本を見くびって来てゐるし、アメリカも態度が怪しい。かういふ時によほど重大な結果を生みはせんか。将来のことを考へると非常に心配だ。(中略)』 と言ってをった。自分は共鳴する点もあり、共鳴しない点もあったけれども、一応話をきいて帰って来た」 |
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現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |