(s1251)

「原爆の被害」

『長崎の鐘』
「既に被爆後二十分、浦上一帯は火の森林と化した。病院も中央から燃えひろがりつつある。僅に火の見えないのは東側の丘のみ。ポンプ、バケツ、水槽、元気な人間、消火に従うべきものは一瞬になくなっているのだから、ただ火の燃えひろがるのに任せるばかり。生き残った者の強力な放射線に貫かれ着物ははぎとられて素裸のまま、下の町から焔を逃れてよろめきつつ山へ登ってくる。子供が二人で死んだ父親を引きずって通る。首のない赤ん坊を抱きしめた若い女が走る。年寄夫婦が手をつないで喘ぎ喘ぎ登ってゆく。走りながらもんぺがぽっと燃え上ってそのまま火の玉となってころがるのもいる。火にとりまかれた屋根の上でしきりに歌いながら踊っている人が見える。気狂いになったのだろう」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)