(s1258)

「日本国憲法制定」

『マッカ−サ−回想録』
「一月末には委員会から改正案の思案が出されたが、これは旧明治憲法の字句をかえた程度のものだった。…そこで私は幕僚たちに、受諾可能な改正案を起草するため日本側に援助と助言を与えるように指示した。もし占領軍が憲法問題解決のため敏速に行動しなかったら、極東委員会がソ連の圧迫と制限の下でその後幾年かあてどなくさまようことになっただろう。
 日本の新憲法にある有名な戦争放棄条項は、私の個人的な命令で日本に押しつけたものだという非難が、実情をしらない人々や刊行物によってしばしば行われている。これは、次の事項が示すように真実ではない。…幣原男爵は一月二四日の正午に私の事務所をおとずれ…首相はそこで、新憲法を起草す際、戦力の維持を永久に放棄する条項を含めてはどうかと提案した。にほんはそうすることによって、軍国主義と警察による恐怖政治の再発を防ぎ、同時に日本は、将来平和の道を進むつもりだ、ということを自由世界の最も懐疑的な連中にも納得させるだけの確かな証拠を示すことができる、というのが首相の説明だった。…私は腰が抜けるほどにおどろいた。…戦争を国際間の紛争解決には時代遅れの手段として廃止することは、私が長年熱情を傾けてきた夢だった。…氏は…顔を涙でくしゃくしゃにしながら、私の方を向いて『世界は私たちを非現実的な夢想家と笑いあざけるかも知れない。しかし、百年後には私たちは予言者と呼ばれますよ』といった」



史料
現代語訳や解説については下記を参考にしてください
『詳説日本史史料集』(山川出版社)
『精選日本史史料集』(第一学習社)
『日本史重要史料集』(浜島書店)
『詳解日本史史料集』(東京書籍)