(s1274)
「講和方式をめぐる国論の対立」 |
『朝日新聞』 |
「(前略)今や講和の確立及び占領の終結は一切の日本国民の切迫した必要であり要求である。 けれども講和が真実の意義を有し得るには、形式内容共に完全なものであることを要し、然らざる限り、仮令名目は講和であっても、実質は却て新たに戦争の危機を増大するものとなろう。この意味に於て、講和は必然的に全面講和たるべきものである。この全面講和を困難ならしめる世界的対立の存することは明らかであるが、かの国際軍事裁判に発揮せられた如き国際的正義或は国際的道義がなお脈々としてこの対立の底を流れていることは、われわれを限りなく励ますものである。更に日本がポツダム宣言を受諾して全連合国に降服した所以を思えば、われわれが全連合国との間に平和的関係の回復を願うは、蓋し当然の要求と見るべきものである。 われわれの一般的結論は右の通りである。更にそれに関連して、われわれが真摯なる討論の末に到達した共通の諸点を左に略述するに先立ち、われわれが討論の前提とした二つの公理を指摘する必要を感じる。即ち、第一は、われわれの憲法に示されている平和的精神に則って世界平和に寄与するという神聖な義務であり、第二は、日本が一刻も早く経済的自立を達成して、徒らに外国の負担たる地位を脱せんとする願望である。(中略) 結語 一、講和問題について、われわれ日本人が希望を述べるとすれば、全面講和以 外にない。 二、日本の経済的自立は単独講和によっては達成されない。 三、講和後の保障については、中立不可侵を希い、併せて国際連合への加入を 欲する。 四、理由の如何によらず、如何なる国に対しても軍事基地を与えることには、 絶対に反対する。 昭和二十五年一月十五日 平和問題談話会 安倍能成 和辻哲郎 清水幾太郎 羽仁五郎 武田清子 鶴見和子 中野好夫 南博 宮城音弥 宮原誠一 久野収 田中耕太郎 高木八尺 蝋山政道 鵜飼信成 川島武宣 丸山真男」 |
現代語訳や解説については下記を参考にしてください |
『詳説日本史史料集』(山川出版社) |
『精選日本史史料集』(第一学習社) |
『日本史重要史料集』(浜島書店) |
『詳解日本史史料集』(東京書籍) |