(s1296)
「社説-従軍慰安婦問題」 |
『産経新聞』 |
【主張】慰安婦決議案 正しい事実関係で反論を 旧日本軍が先の大戦中にアジアの女性を強制的に性奴隷として連行した−と一方的に断罪し、日本政府に事実の認知と謝罪、日本国民への教育などを求めた決議案が、またも米下院に提出され、審議が始まっている。政府は決議案の内容の不当さを内外に示し、事実をもって徹底的に反論すべきである。こうした動きを助長している「河野洋平官房長官談話」(平成5年)の事実認定に関しても再調査に乗り出すべきだ。 いわゆる慰安婦に関する非難決議案は昨年も提出され、9月に下院外交委員会で採択されたが、その後廃案となった。今回の決議案は1月末、日系米国人のマイク・ホンダ議員(民主党)らによって改めて提出された。 決議案は、「日本政府は帝国軍が第二次大戦中に若い女性たちを“イアンフ”として知られる性奴隷にしたことを公式に認め、謝罪し、歴史的責任を受け入れるべきだ」で始まる。 続けて、日本政府の関与、日本軍による強制連行、強姦(ごうかん)、陵辱、強制中絶があったなどと断じ、その上で、日本政府に(1)事実の認知と謝罪、責任受諾(2)首相による文書での公式謝罪(3)日本軍による蛮行はなかったとする説への明確な否定(4)若い世代への慰安婦問題に関する教育−を求めている。 今回の決議案には昨年の決議案にあった「強制連行された慰安婦は20万人」などという記述はないが、ホンダ議員は決議案提出に際し、「日本軍による非道に苦しんだ20万人以上の“慰安婦”」と演説している。 決議案や一部米議員らの認識は、事実に反したものであることが明らかである。政府はこの問題で世耕弘成首相補佐官を米国に派遣したほか、加藤良三駐米大使も下院小委員長に書簡を送るなどの行動を取っているが、最大限の努力を傾けるべきときだ。 決議には法的拘束力はない。しかし、委員会だけでなく、本会議でも採択されれば、不当な誹(そし)りが歴史的事実として広まりかねない。 安倍晋三首相は昨年秋の国会で、河野談話を「政府として受け継ぐ」と答弁した。だが、談話は事実に基づくより政治配慮の結果−との証言もある。河野談話が意図的に拡大解釈されるのを防ぐためにも、事実関係の再調査と適切な見直しを改めて求めたい。 2007年2月21日産経新聞 |