(s1299)
「社説-従軍慰安婦問題」 |
『産経新聞』 |
【主張】慰安婦決議案 一時しのぎのツケがきた 米下院に提出された旧日本軍によるいわゆる慰安婦非難決議案が波紋を広げている。参院予算委員会では、同決議案の根拠の一つともなった「河野洋平官房長官談話」(平成5年)をめぐって安倍晋三首相が追及され、韓国では盧武鉉大統領が、決議案をひきあいに「日本帝国主義の蛮行」と非難した。中国の李肇星外相も批判した。 このままでは、決議案の成立、不成立にかかわらず、日本のイメージに傷がつく。旧日本軍、日本人の名誉が不当に損なわれかねない。 河野談話は、慰安所の設置や慰安婦の移送などに「旧日本軍の関与」があり、慰安婦の募集は業者が主だが「官憲等の加担」「甘言、強圧による」などがあったとしていた。さらに、すべての元慰安婦に「心からのお詫びと反省」を表明し、補償に関する訴訟に「十分に関心」を払うとしている。 だが、河野談話の作成にかかわった石原信雄官房副長官(当時)の証言によると、「関係各省庁が国の内外で徹底調査したが、政府や軍が女性の強制連行を指示したような文書や証拠は一切なかった」という。 根拠は韓国の元慰安婦という女性たち16人の話だけだった。強制性を認めたのは、韓国政府の強い要請で河野官房長官、宮沢喜一首相(当時)が政治判断した結果だったという。 一時的に譲歩し、謝罪すれば、その後の対日批判は収まると判断したのかもしれない。だが、実際は逆だった。日本政府への責任追及が逆に高まり、今回の下院決議案も「河野談話が根拠になった」(提出者の一人、マイク・ホンダ議員)。政治の一時しのぎのツケが回ってきたというべきだ。 河野談話に関し、安倍首相は5日の参院予算委員会で、「(政府として)基本的に継承する」としたうえで、「狭義の強制性を裏付ける証言はなかった。官憲が家に押し入って人さらいのごとくつれていくという強制性はなかった」と答弁した。 いま河野談話の全面見直しを言えば、逆に反日的な勢力に誇大解釈、反日宣伝の材料にされかねない−との判断もあるだろう。日本の名誉回復には時間と忍耐と並んで、歴史の事実に基づいて、きちんと慰安婦問題の真実を訴える勇気が必要なのではないか。 2007年3月7日産経新聞 |