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「社説-従軍慰安婦問題」

『産経新聞』
【主張】慰安婦問題 誤解解く努力を粘り強く

 慰安婦問題で、日本政府に謝罪を求める決議案が5月中に米下院で採決される見通しだ。日本側はなお、あきらめず、この問題をめぐる誤解を解くための粘り強い努力を続けるべきである。
 決議案は「日本軍は第二次大戦中に若い女性たちを強制的に性奴隷にした」としている。慰安婦だった人たちには心から同情する。しかし、日本軍が慰安所の性病検査などに関与したことはあっても、直接、奴隷狩りのような強制連行を行った事実はない。これが最大の事実誤認である。
 米下院のアジア太平洋小委員長は北京での会見で、採決見通しを示すとともに「日本の指導者の間には(慰安婦の)存在を否定する気持ちがある」と強く批判した。これも誤解だ。慰安婦の存在まで否定はしていない。
 日本政府はこれまで、首相補佐官を米国に派遣したり、駐米大使がこの下院小委員長に書簡を送るなどの行動を取っているが、さらに強力なメッセージが必要ではないか。
 米国のメディアには、北朝鮮による日本人拉致事件と慰安婦問題を同列に扱い、「(日本政府は)戦争犯罪に目をつぶっている」(ワシントン・ポスト)と批判する論調もある。北もよく似た主張をしている。しかし、安倍晋三首相が反論したように、拉致事件は現在進行形の人権侵害であり、慰安婦問題とは全く別の問題である。
 決議案の根拠の一つとなった慰安婦問題に関する河野洋平官房長官談話(平成5年)についても、再調査がますます必要になっている。河野談話は慰安婦の募集について「官憲等が直接これに加担したこともあった」などと日本の軍や警察による強制連行を事実として認めた内容だが、その証拠は日本政府が集めた公式文書になく、韓国の元慰安婦の話だけが根拠だ。
 自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は河野談話の根拠になった資料を再調査するとともに、決議案に賛成しないよう米議員に働きかける方針だ。民主党の有志議員も「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」を発足させた。
 根拠の不確かな河野談話について、まず、与野党で学識経験者を交えた徹底検証を行い、見直すべき方向を政府に指し示してほしい。
2007年4月8日産経新聞