体験 的パ ソコ ン論

デジタル機器との最初の出会い
新しい時代の夜明けを予感

キーボードから漢字に変換の不思議
でも、電源を切ると「全てさよなら」

【003】パナワードとの出会い

「キーボード上でローマ字入力すると漢字に変換」の不思議

(1)その時代
 私が初めてデジタル機器と出会ったのは、今から18年前の1985
年のことであった。
 ある友人が子どもの「おもちゃ」として買ったものを使わせてもらっ
た。


(2)魅力
 JIS規格のキーボード上でローマ字入力すると、見ている前で日本
語(もちろん漢字に)変換される。それが不思議でした。その上間違
えれば、その場で訂正ができるし、追加もできる。何度も推敲が出来
るのが魅力で、その時の心のふるえを今も覚えている。
 小学生の子どもとその「おもちゃ」の取り合いをしている自分を発見
して、恥ずかしい思いをしたものだった。
 このデジタルの「おもちゃ」は大人を虜にする魅力を持っていた。デ
ジタル時代の到来を予感する出来事であった。


(3)課題
 表示が1行なので、文字入力に苦労する。改行すると一行目が画面
から消えて全体のレイアウトが把握できない。
 フロッピー(FD)がなくて保存できない。印刷物として保存するしかな
い(つまり、追加・訂正が一度電源を切ると出来ないである)。
 忠臣蔵の史料を入力・整理する場合、固有名詞(特に人名や歴史用
語や地名)の入力は仕事上の生命線である。その単語登録も出来ない
のである。
 例えば、大石内蔵助の文字を入力する時、「おお」と入力して「大」の
字を確定する。「いし」と入力すると「意思・意志・医師・石」が表示され
その中から「石」を確定する。「ない」と入力すると「無い・内」が表示さ
れ、その中から「内」を確定する。「くら」と入力すると「倉・鞍・庫・蔵」が
表示され、その中から「蔵」を確定する。「すけ」と入力すると「介・輔・助」
が表示され、その中から「助」を確定する。大変な労力を要する。
 しかし苦労して入力しても、電源を切った瞬間に「さようなら」である。


(4)パソコン余話

 この年、私は地元の少年野球の代表になる。部員は各学年15人で約
60人の大所帯である。県大会には尼崎や園田から約15チームが相生
の野球場(過去巨人・阪神のオープン戦をこともある本格的球場)に集合
する。その費用はリクルート方式といい、パンフレットを発行する広告費を
充てる。会費を合わせて、年間でかなりの額の収支がある。
 過去の帳簿を引き継いだが、金銭出納簿に電卓ではじいた数字がペン
で記入されている。会計の仕事は大変だと思っていると、帳簿は「マルチ
プラン」でするから、簡単だというお父さんが登場した。機械的な数字が
打ち込まれて、B5用紙にものの見事に印刷されていた。その時の私に
は「マルチプラン」もプリンタで印刷された帳簿は、縁の遠い存在に思わ
れた。このお父さんと、後に大きなつながりになるとは、その時は神も知ら
なかった。


  このパソコン論は『研究紀要第44号』(兵庫県社会科研究会、
1997年発行)と『兵庫教育』(兵庫県教育委員会、2000年発行)
などを基に展開します。