体験 的パ ソコ ン論

初めてのパソコン体験(1)
ワープロのデータベース化
パソコンの情報処理化

梅沢方式の精神は今も現役
「1枚1史料」はデータベースの機能
「項目で選別」は情報処理の機能

【005】NEC9801LX
(1)その時代(1989年以降)
 フロッピー1枚が数千円する時代に100枚以上も購入し、ワープロで膨大な時間を使っ
て史料を打ち込んだことは前回に紹介しました。この貴重な財産を維持するために、私は東芝ルポと心中するつもりでした。
 そこへ、転勤してきた先生が「ルポからNECの98に簡単に変換するコンバーターがある」という話を聞き、ワープロからパソコンにシフトを移すことにしました


(2)パソコンでワープロは出来ますが、ワープロでパソコンが出来ません

 ワープロの限界を、昔のコマーシャルに比喩して表現すると「パソコンでワープロは
出来ますが、ワープロでパソコンが出来ません。あしからず」となる。その限界とは保存
量、単語登録、表示画面、処理速度などの課題である。
 この課題を克服するために初めて買ったのがNECのラップトップ型パソコンである。
進路の仕事で企業訪問をしていた時に見た、事務所の机上で一番普及していた携帯
型である。携帯型とはいえ、上の写真で見るごとくとてつもなく重く、大きい。
 この機種を決めたきっかけは、パソコンの大先輩でハード・ソフト両面の技術があり、
年齢は若いがよく相談にのってくれる先生が持っていただけである。しかし、これは重
要な要素である。私の人生でパソコンを通じてたくさんの学校の先生や、色々な職業
の人と接することが出来た。老若を問わず教えを乞うた。今の私はそのような人々に支
えられて存在するといっても過言ではない。知らない人は、パソコンを使う人を「オタク
族」と表現するが、逆に多くの人との交流を広げるのもパソコンである。
 こうした経過をたどって、私のルポのデータはものの美事に国民的パソコン「98」上
の国民的ワープロー太郎上で処理できるデータに変換された。
 それに表計算ソフトのLOTUS123やデータベースソフトのdBASEVPLUSを使
ってパソコンで成績処理などをする風潮が出てきたことである。


(3)日本史の固有名詞すべてを単語登録
当然忠臣蔵の人名や歴史用語も第三水準以外はすべて単語登録

 使用しているワープロソフトは一太郎V3であるが、データ保存容量は2HDの1MB
(漢字50万文字分、教科書1冊分)が使用できるようになった。その結果史料集(53
行×35文字×70頁)は1枚、教材(53行×35文字×273頁)は2枚に保存でき、保
存したデータは2003年の今も修正・加筆しながら現役を統けている。
 表示は20行と飛躍的に増加した。単語登録も無限に近く、山川出版社の『日本史
用語集』に出てくる固有名詞の全てはフロッピー1枚に収まり、日本史教科書の固有
名詞を普通名調のごとくブラインドタッチで入力することが出来る。
 仕事の延長が趣味の延長の論理からすると、忠臣蔵の史料(txt形式)のほとんどが
1枚のフロッピーに保存できるようになった。また忠臣蔵に登場する約700人はもちろ
ん、それ以外の地名・職制などの歴史用語も単語登録することが出来た。第三水準に
ついては未だ今も涙の物語である。


(4)データベース化と惰報処理化

 一太郎のおかげで膨大なデータの蓄積が可能になり、dBASEVPLUSを使うこと
で、膨大なデータの処理方法や速度に関しての問題が解決した。
 前提となる考えは、ワープロを使用してデータを入力し、テキストファイル(.txt)で保
存することを、情報処理とはいわず、あえてデータベース化と呼ぶ。このデータベース
化されたテキストファイルをdBASEVPLUSなどを使って検索・印刷・情報発信する
ことを情報報処理化とよぶ。今まで、データベース化と検索・情報発信化をともに情報
処理化と呼んでいたことが、「ワープロさえあれぱ、パソコンはいらない」という誤解の
源になり、その誤解がパソコンの発展を阻害してきたからである。パソコンを利用する
者の責務はパソコンに出来てワープロに出来ないことを具体的に提示することである。
つまり、ワープロでは情報処理化出来ないことを証明することである。


(5)パソコン余話
 保存されたデータを情報処理するソフトにdBASEがある。これを抜きにしてパソコンは語れないと直感した。そこで、パソコンに精通していて、よく相談にのってもらっていた理科の若い先生に、ある時dBASEの質問をした。今まで親切に対応してくれていた彼が突如「これは難しいソフトですよ。先生は社会科だし、年齢を考えて、これは私たちに任せてください」とつれない返事であった。この時私は47歳であった。
 この言葉で私は反省した。「調べもしないで、何ごともすぐ質問する」ことを指摘していると理解した。そしてdBASEの本を買っては1冊1ページづつ実践していった。購入したdBASEの本は膨大になる。そして次に質問する時は、同じレベルでありたいと課題を設け、必死で克服していった。この姿勢は今に通じている。
 あのつれない返事があったからこそ、質問病から自立でき、今の自分がある。あちこちで、つれない返事をしている自分を発見している。
 今も感謝している先生の一人である。

(6)dBASEを使った情報処理化と(7)課題は次回へ

このパソコン論は『研究紀要第44号』(兵庫県社会科研究会、1997年発行)と『兵
庫教育』(兵庫県教育委員会、2000年発行)などを基に展開します。