体験 的パ ソコ ン論
本格的なノートパソコンの時代
・HDDが内蔵、メモリー・CPUも
・OCRで文字を簡単にデジタル化

【007】NEC98NX/C
(1)その時代(1994年以降)


 ハードディスクがない課題を克服するためにパソコンとしては2台目のNECのNX/Cを購入した。家でも出来るし、学校でも出来る。ラップトップより格段に小型化したノートパソコンである。ハードディスク(HDD)は500MB(メガバイト。FD500枚分)、メモリは9MB,CPUはi486(20MHZ)にODPをかませて、60MHZにした。MS−DOS版としては最後なので、機能的には当時としては最高ではなかったかと思う。

 今(この記事を書いた1997年のこと)も現役で頑張っており、メモリを足して
WINDOWS95として蘇っている。ワープロは一太郎V4となった。

四 赤穂浪士の筆記
心元ノ段常々御病身ノ御事二侯間、左様ノ御事ト存

被仰聞候御書面ノ内此方ヨリノ書付二相認侯儀ハ尤
御報不申候、左様御心得可被成侯
彼仁今程ハ本所二被居侯由縫二御聞届被成侯由大慶
侯、此方ニテモ寺井方:其通承届侯、尤動キ有
之侯哉無御油断御気ヲ可被附侯
貴様方御登ノ時節ハ兎角岡島罷下侯テノ上ト存侯、
此段モ本書二申入侯
山科ヘノ御状相届可申侯、アノ辺ノ趣ハ本書二申入
侯通二侯故不具
小山氏ヨリ健成申参侯由弥以難心得存侯、此男内
マタ膏薬カト存候、此頃十四日ノ会ニモ十一日ノ会
ニモ岡本ヨリハ不出来ノ了簡ニテ以不届ノ仁ト存
侯、惣右我折々侯キ
弥兵衛殿御連拝見仕侯、今日状数込侯故乍慮外
不能御報侯、宜御執成奉願侯、安丘ハ衛殿ヨリ幸右衛
門方へ御出侯半、辱奉存侯由申侯
叉之丞・勘助山科ニテ神文仕侯由御聞被成侯由私ハ
未不仕侯、承合左様ニモ可仕候、其元ニテ前原事神
文御尤二奉存侯、拙老ハ兎角無ニノ志ノミ込兼侯、
原氏潮田ヘノ御状明朝早遣可申侯御状相達候御返
事迄如此御坐侯、以上
 正月十七日             源吾判
    郡兵衛様
    安兵衛様
    兵左衛門様
  大高源吾へス返報留メ
(以下略)
スキャナとOCRでに取り込んだ史料(認識率99%) 原稿の史料(アナログ)

(2)その魅力

 ハードディスクに500MB(教科書500冊分)が入り、2HDのフロッピー(FD)1枚に山川出版社の教科書『詳説世界史』(26行×32文字列×356頁二54万5792文字)が保存できるようになった。単語も無限といえる程登録出来るようになった。前出の『日本史用語集』に『世界史用語集』の固有名詞や地名を登録し、カタカナ用語も全て登録している。
 用語集の人名・地名・歴史用語などを登録した上記の辞書が「一太郎」・「ワード」上で扱えるようにして、山川出版社から発売の予定である。私の定年の年(2001年5月)に現実に全国販売された。2002年には「一太郎」のジャストシステム社からネット販売されている
 私の持論の「仕事の延長が趣味につながり、趣味の延長が仕事につながる」に従えば、忠臣蔵の書籍や雑誌が1冊分がFD1枚に収まるようになった。大石内蔵助や瑤泉院、浅野内匠頭などの人名、呉服橋や三次などの地名、伝奏屋敷な浅野家上屋敷など膨大な固有名詞が全て登録できるようになった。
 課題の速度も以前の100倍近く早くなり、例えば大学・学部・学科コードはセンター前期・後期、推薦などが加わって複雑化して1万3000レコード以上に成っているが、dBASEVPLUSではいとも簡単に必要な形で処理できる。

(3)WINDOWSの魅力
 マイクロソフト社が発売したMS−DOSの上位OSであるWINDOWS3・1を使用した。マウスによるドロップ&ドロー機能によりMS−DOSでは不可能であった二次元のことやグラフィカルなことが可能となった。


 OCR(文字認識ソフト。WinreaderplusU)を使用して、忠臣蔵の書籍や雑誌をテキストファイル形式(TXT)に自動的に取り込んで(B5判で約3分)、一太郎で修正して保存する。これにより驚異的にデータベース化が可能となった。
 趣味から仕事に進んだ例がこの場合である。OCRであらゆる文字原稿(教科書、史料、新聞や雑誌、問題集)をテキストファイル化し、一太郎で修正した。そしてこの文字データをdBASEで情報処理化した。その結果、社会科としてほぼやれるところまで来たように思う。
 私のこの提案に、「教育をパソコン代用しようとしている」とか「手作りが温かみがあり、この無駄が教育には必要なことである」と反論する先生が当時多かった。私は無意味な無駄を省き、それで空いた時間を生徒と接する方がより革新的と主張した。生徒もチョーク&トークの教え方より、時代が要請する「新しい道具」を使った授業を支持してくれた。今はパソコンを否定する先生はいない。

(4)課題

 コンピュータの歴史は課題を次々と短期間に克服していった時代といえる。と同時に人間の欲望もどんどん膨らんでいく。文字データの情報処理化は完成したが、文字と写真との融合が出来ていない。
 また、それを何に使うのかというと、画面上で見るしかない。個人の情報としては完璧だが、苦労して入力した貴重なデータベースを私蔵しているのが現状である。情報を共有化したり、交換したり、より確実な情報であるための検証をはかることが必要である。

(5)ここで学んだこと…パソコンリーダーは先見の明が必要

 MS−DOSの上位OSであるWINDOWS3・1を苦労して入れてもらったことは先述した。しかし、マックの付録みたい
で使い物にはならなかった。
 しばらくして、県立学校のMS-DOSのパソコンが更新されることになった。県教育委員会が言うまま、A高校は3・1を20台導入した。しかし、隣のB高校ではWINDOWS95が、しかも40台導入された。担当者に聞くと、「WINDOWS95が
発売されることは分かっていたし、体験上、生徒1人に1台使えなければ意味が無い。2条件を満たさなければ導入を辞退する」と注文をつけたという。県に勤める知人は「責任をもって使える条件を現場から聞けた、いい例だ」と言う。
 WINDOWS3・1のパソコン室は眠れる森の美女の部屋となっているし、WINDOWS95は2003年の今も現役で動いていることは周知の事実である。「ただならいい」というものではない、好例である。

このパソコン論は『研究紀要第44号』(兵庫県社会科研究会、1997年発行)と『兵庫教育』
(兵庫県教育委員会、2000年発行)などを基に展開します。