体験 的パ ソコ ン論
ADSL対光ファイバー
本命は光ファイバー(送受信とも100MB)
ADSLは受信が40MB、送信はなんと1MB
映画は1秒間に30MB必要
なのに何故ADSL全盛なのか?

【013】光ファイバーの時代
(1)その時代(2003年以降)

 下の写真は今から6年前の朝日新聞の記事です。ブロードバンドという言葉すら珍しい時代に、この特集がありました。私はメールの作動環境に不満を持っていましたので、当時NTTが力を入れていた「ISDN」を1996年、いち早く導入しました。その2年後にこの記事を見たのです。「ISDN」なら映画のダウンロードに125時間かかるのに、「光ファイバー」なら5分でいいのです。
 早速物理の先生にその話を聞きました。その先生は「光の波長の間をぬって光の波長が流れるので、無限の波長が交差できる。今のところ光より速く情報を伝える物はない」と話しました。この時私はブロードバンドの本命は「光ファイバー」だと確信しました。
アメリカは「CATV」、韓国は「ADSL」、日本の選択は世界最速の「光ファイバー」か?
 同じ記事の中で、情報先進国のアメリカは「CATV」が張り巡らされ、同じく韓国は「ADSL」が全土を網羅されているとありました。当時情報後進国の日本は、何もない状態です。何もないということは何でも出来るということです。若い世代に私たち大人がしてやれる事は、「光ファイバー」を導入して、世界トップの情報先進国という環境を整えることだということも感じました。  
ダウンロードに必要な時間比較(2時間の映画=約3.6ギガバイト、5分の音楽=約4.8メガバイト)
2)魅力-送受信が魅力の「光ファイバー」  
 インターネット上のホームページを見る。かなり重い画像を「ISDN」環境でダウンロードするのにかなり時間がかかる。ブロードバンドの影響を受けて、動画やサウンドが多くなっている。知人が「風の盆」を見に行くと言う。そのBGMが聴きたいという。「ISDN」なら10秒のサウンドをダウンロードするのに数分かかっていたが、「光ファイバー(FTTH)」なら待つという感覚はない。知人に喜んでもらったことは言うまでもない。受信にその機能を発揮している。
 今までパソコンのハードディスク内に「動画忠臣蔵-人気の秘密に迫る-」(1テーマ=60秒が30テーマ)と題して保存していた。「光ファイバー」になってから、プロバイダーに簡単に短時間に送信できるようになった。1テーマ=60秒の動画(14,444KB)でも数秒で送信できる。
 個人段階で、「TV電話」が実現するという実感が湧いてきた。
 私の住んでいる隣町龍野市では「光ファイバー」が4年前に導入されている。
 秋田県矢島町(人口6,300人)では町長が「デジタルディバイド」(情報格差)の解消のために、「光ファイバー」を導入している。本命が「光ファイバー」と決意した証明である。
 なのに、「ADSL」がもてはやされるのであろうか。
(3)課題-受信に40MBの「ADSL」、送信に1MBという欠陥商品の「ADSL」。映画は1秒間に30MB必要!
 現在「光ファイバー」のサービスを提供できるのは限られている。NTTは既設の電話線を拡大すればよい。電力会社も既設の電灯線を拡充すればよい。
 そうした既設の設備を持たない企業は、間借りするしかない。ソフトバンクはその代表である。間借りするには、既存の電話線を利用する「ADSL」しか敷設できない。ソフトバンクの果たした役割を偉大である。加入が1,000万件を超え、料金を世界最少にして、ブロードバンドの主役に育て上げたのである。
 他方、NTTは「ISDN」から「光ファイバー」という戦略を持ちながら、ソフトバンクの「ADSL」路線に右往左往してきた責任は重い。「光ファイバー」は送受信とも数字的には100MBが可能と言う。「ADSL」の受信の最高は40MBであるが、送信はなんと1MBしか出せない。
 送信用に26〜138kHzを使用するが、1MBしかない。
 受信用にそれ以上の周波数を利用することで高速化を図るが、電話局との関係で数字どおりの効果は出せていない。
 「ADSL」の送信最高は40MBになる。しかし、電話局から1〜2キロ離れると20MBと同じ12MBにしかならない(左上と上の写真は朝日新聞より)。
「ADSL」利用者の7割が「光ファイバー」への移行を希望」
 KDDIが発表したブロードバンド通信に関する調査によると、「ADSL」などの利用者の約8割が、「光ファイバー」への移行を希望していることが分かった。
 ブロードバンド通信は現在、「ADSL」が圧倒的多数だが、超高速の「光ファイバー」の潜在的需要が強いことをあらためて裏付けた(神戸新聞)
(4)ここで学んだこと…お金の問題でなく、5年後を見抜く先見性の問題
 パソコンに関して色々な方で出会う機会がある。パソコン・デジカメ・ビデオカメラを買う場合も、まず気になるのはお金である。その気持ちはよく分かる。しかし、お金に固執する余り、パソコンではCPUやメモリーを見落とす。デジカメの場合はお金と軽さに執着して、レンズや光学ズームやモニターサイズや手ブレが見落とされる。ビデオはデジカメにもなると言っても、デジカメを買い、後でビデオカメラを買う人が多い。
 ブロードバンドと名がつけば「光ファイバー」より、設備も簡単で、安価な「ADSL」を導入する。
 以上の視点で欠けているのは、5年後情報化社会はどうなっているかという先見性である。5年後を視野に高いか安いかを考える物の見方大切だということを痛感した。先見性に優れた人々との出会いもあった。熱く時代を語れる人でした。
(追伸T)Yahooの親会社ソフトバンク、来年度社員数3.5倍の6,300人に
 最近の新聞によると「ソフトバンクの孫正義社長は4,500人の新社員を採用する方針を明らかにした」とあります。
 新卒3,000人の採用計画に、中途採用1,500人が上積みされたということです。
 孫社長は、NTTが先行する光ファイバー通信について「事業計画の詰めに入っている」と、参入方針を示したということです。
 文字通り解釈すれば、光ファイバーに本腰を入れるため、最大規模の採用をするということは、ブロードバンドにとっても、就職希望者にとっても朗報である。
 しかし、3月期決算をみると、赤字は過去最大の1,070億円の純損失を計上している。ADSLサービス「ヤフーBB」が売り上げを伸ばしたが、新規利用者獲得のための営業費用が上回っている。深読みすれば、無理なサービスと人海戦術で欠陥商品であるADSLを売りまくったが、その無理なサービスがたたったということである。
 孫社長からすれば、導入後は黙っていても金が入る算段だろうが、人海戦術に使われた若者は、今どこにいるのだろうか。ADSLの未来をどうみているのだろうか。新規採用者も新規利用者獲得にフル動員され、その後使い捨てにされないように願いたい。
 顧客情報の流出を防ぐために、「正社員を増やして内部管理の強化を図る」ということらしいが、一生ソフトバンクに身を捧げるくらいの忠誠心あふれる少数の社員でなければ、流出騒ぎは繰り返されるであろうことも付記しておきます。
(追伸U)ブロードバンド急拡大、国内加入1500万件超(総務省のまとめ)
 総務省のまとめによると、国内世帯の約3分の1がブロードバンドを利用している計算(まで3分の2がナローバンド)で、米国に次ぐ世界二位のブロードバンド大国の地位を固めた格好だ。
 ADSLが1151万件、家庭向け光ファイバーが124万件、ケーブルテレビが262万件になる。
 特に光ファイバーの加入者は超高速のデータ通信ができるためADSLからの変更も多く、1年間で約3.6倍と大幅に伸びた(以上2004年6月1日付け神戸新聞)
(追伸V)KDDIやソフトバンクに対抗し、NTTが新戦略…やっと私が望んでいた時代がやってくる
 この記事を読んで、どう感じるだろうか。KDDIやソフトバンクという競争相手がいなければ、この巨人はいつまでも努力せず、独占的利益を貪っていたということでしょうか。
 NTTは、固定電話と携帯電話を1台の端末で使える次世代通信網を築く方針を発表しました。対抗上…(2004年11月5日朝日新聞
 NTTは、3000万回戦をIP電話に切り替える。家庭などへの回線も、通信速度は速い光ファイバーに切り替える。対抗上…(2004年11月4日神戸新聞)。
 私は携帯電話を持っていません。外出する時は、開放されたいからです。しかし、固定電話と同じように携帯電話が使える、光ファイバーによってTV電話のような使える、これが私の携帯電話観でした。KDDIやソフトバンクに対抗上でなく、NTT独自で先端を切って欲しいです。NTTの現場の技術者は、柔軟で、それを望んでいます。硬直化している経営者殿、よろしくお願いします。
 

このパソコン論は『研究紀要第44号』(兵庫県社会科研究会、1997年発行)と『兵庫教育』(兵庫県教育委員会、2000年発行)などを基に展開します。

参考資料
朝日新聞(2004年5月11日)
神戸新聞(2004年5月11日)
朝日新聞(2004年2月8日)
神戸新聞(2003年8月26日)
神戸新聞(2004年6月1日)