相生の昔話

(20)なにが昔さる昔

なにが昔、さる(去)昔、

猿が三匹、とんできて、

さーき(先)の猿も、物しらず、

あ−と(後)の猿も、物しらず、


いっちなか(一番中)の、こーざる(小猿)が、

よぅ(よく)、もの(物)、知って、

なーまず(鯰)川へ、とびこんで、

なーまず一匹、ヘーさぇ(抑え)て、

手ぇで、とーる(獲る)も、かーわいし(可愛い)、

あーし(足)、とーるも、かーわいし、
瓢箪(ひょうたん)で、おーさえて、

とーしみ(灯心)で、くーくって、

おがら(苧枯)で、いのて(担)、

地蔵の前へ、もっていて、

ちゃつきり、こっきり、切って、


あなたも、しときれ(ひと切)、

しときれ、たー(足)らいで、

しともり(一盛)、買うて、

汁にて、す(吸)やれー。

注1:「くーくって」とは、「括(くく)って」という意味です。
注2:「もっていて」とは、「持って行って」という意味です。
挿絵:立巳理恵
出展:『相生市史』第四巻