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エピソード

284_01

産業構造の高度化
 「衣食たって礼節を知る」という諺があります。ある程度、衣食住の不満がなくなると、こころに余裕が出て、礼儀も弁えるという意味です。
 1973年にオイルショックが日本を襲いました。トイレットペーパーが不足して、それを買うために行列ができたりしました。私が仕事を終えて家に帰っていると、主婦が猛烈な勢いで、駆け出して行きました。しばらくすると、重い足取りで帰ってきる主婦に出会いました。「どうしたんですか」と聞くと、「スーパーでトイレットペーパーが売り出したと聞いたんで、飛んで行ったんですが、売り切れていました」と言うのです。これは、昔のトイレは、新聞紙を落とし紙に使っていたのが、この時には、新しい家では、水洗便所化して、新聞紙では使えなくなっていることを意味します。
 確かに生活は豊かに、文化的に、快適になりました。しかし、その裏で、失ったことも多くあります。
(1)工業の産業別生産額(単位:%)
  重化学工業 軽工業
  金属 器械 化学 食料品 繊維 窯業 その他
1950年 16.0 13.9 14.3 13.4 23.7 3.3 15.4
44.2 55.8
1960年 18.8 25.8 11.8 12.4 12.3 3.5 15.4
56.4 43.6
1970年 19.3 32.4 10.6 10.5 7.7 3.6 16.0
1980年 17.1 31.8 15.5 10.5 5.2 3.9 16.0
1990年 13.6 41.4 9.8 11.1 4.4 3.5 16.2
64.8 35.2
 上の(1)表を見ると、次のことが分かります。
 1950年には、軽工業>重工業でした。
 1960年には、重工業>軽工業となりました。生産額では、やっと先進工業国の仲間入りを果たしたことになります。重厚産業の発達により、人的資源、つまり労働力構成や、自然、つまり故郷に変化が起こりました。
(2)エネルギー供給源の変化(単位:%)
  石炭・亜炭 石油 水力 天然ガス 原子力
1950年 58.4 7.1 23.0 11.5  
1960年 42.1 37.7 15.3 4.9  
1970年 20.7 70.8 6.3 1.8 0.4
1980年 17.0 65.8 5.7 6.4 5.1
その1985年 19.8 55.2 5.8 9.8 9.8
 上の(2)表を見ると、次のことが分かります。
 工業の近代化と共に、エネルギー供給源の近代化も進みました。
 1970年に、エネルギー供給源は、初めて石油>石炭・亜炭となりました。石油が生活の隅々にまで浸透すると同時に、公害などの問題も発生しました。公害については、別項で取り扱います。
(3)産業構造の変化(単位:%) 専業・兼業農家(万戸)
  第一次産業 第二次産業 第三次産業 専業農家 兼業農家
1950年 50.2 21.3 28.5    
1960年 30.2 28.0 41.8 208 398
69.8
1970年 17.4 35.2 47.4 83 451
1980年 10.4 34.8 54.8 62 404
 上の(3)表を見ると、次のことが分かります。
 1950年には、第一次産業>第二次・第三次産業でした。
 1960年には、第二次・第三次産業>第一次産業となり、工業国となりました。
 1980年には、第一次産業が10%となり、先進工業国に仲間入りしました。
 つまり、産業構造が近代化したことで、第二次・第三次産業人口が増加し、その人口を農村が供給したことになります。その結果、農村では、「三ちゃん農業」とか兼業農家が増加し、深刻な食糧自給問題が発生しました。
 この項は、『近代日本総合年表』・『図説日本史』(東京書籍)などを参考にしました。
日本は、本当に、誇りうる、豊かな国でしょうか
 誰しも、自分の国を愛する心を持っています。その国とは、自分を生み・育ててくれた「ふるさと」です。戦前のような、美しい言葉で形容された意味のない空虚な愛国心ではありません。しかし、「ふるさと」がどんどん姿を消しています。
 衝撃的なTVを見ました。韓国に最も近い対馬では、韓国人が別荘をどんどん買い占めています。韓国の馬山市では、竹島ならぬ対馬を韓国領土だと宣言しています。
 地元に人に言わせると、日本人で別荘を買ってくれる人がいないので、商売で韓国人に売っているということです。
(4)耐久消費財の普及率(1995年。単位:%)
カラーTV 冷蔵庫 電子レンジ 乗用車 エアコン VTR
99.1 98.4 92.3 80.4 77.2 73.8
 上の(4)表を見ると、次のことが分かります。
 1995年の統計ですが、欲しい物が何でも手に入る時代になりました。
(5)生産的社会資本と生活基盤的社会資本(1986年。単位:米・英・仏・独の平均100)
GNP 家計消費 TV 電話 乗用車 社会保障 道路舗装 公園面積 下水道 部屋数
80 77 119 90 58 36 54 43 77
 上の(5)表を見ると、次のことが分かります。
 欧米先進国と比較して、GNP・家計消費・TV・電話などはよく検討しているといえます。
 しかし、日常生活や老後などの人間としての尊厳を保つ社会資本を見ると、恥ずかしい限りです。朝日新聞はこれを「豊かさのなかの貧しさ」と表現しています。
 戦前は、貧困を押し隠して、「世界に誇る神の国」と宣伝しました。今は、インターネットがあります。通用しない理論です。真に誇りうる社会資本を充実すべきだと思います。自ずと、愛国心が湧いてきます。

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