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エピソード

302_03

慰安婦決議案と日本の外交
 慰安婦決議案については、アメリカの動向を見極めて取り上げたいと思っていましたが、大きな動きがありました。
 それは、今まで、一貫して従軍慰安婦の強制性はなかったと発言していた三宅久之さんら言論人が、テレビで、微妙な発言をするようになったからです。
 後に述べますが、金美齢さんらは、臭い物に蓋をする如き発言をして、歴史修正主義者の仲間入りをしています。反共という旗印であれば、誰とでもくっつき、台湾の現状から目をそらし、日本に媚を売っています。
 しかし、金美齢さんらの発言は、今はインターネットによって、簡単に覆せる情報が張り巡らされています。
 三宅さんらのバランス感覚の発言、インターネットによる情報源、そういう人・物がある限り、まだまだ戦前のような無言論の時代になるには、防波堤があると感じました。
 そこで、今回も、慰安婦決議案を取り上げました。
 2007年3月1日
 安倍晋三首相は、旧日本軍による従軍慰安婦の強制動員を認めた河野洋平官房長官(当時)の談話に対する見解について、旧日本軍の従軍慰安婦について「強制性があったことを証明する証言や、それを裏付ける証拠はなかった」と述べ、「そのため、強制性の定義については大きな変化があったことを前提に考えていかなければならない」と語りました。
(1)共同通信は、安倍首相の「強制性があったことを証明する証言や証拠がない」という発言について、旧日本軍が直接的に関与したという「狭義の強制性」を裏付ける証拠がない、という意味に解釈しています。
(2)産経新聞は、「河野談話の見直し」を示唆したものと解釈しています。
(3)AP通信は、旧日本軍による従軍慰安婦の強制動員を、安倍首相自ら、はっきりと否定した発言だと解釈しています。
(4)アメリカの状況を見ると、2005年末までホワイトハウスでアジア問題を扱っていたグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長は、「先週、何人かの下院議員に働きかけ決議案への反対を取り付けたが、(安倍発言の後)今週になったら全員が賛成に回ってしまった」と語っています。
(5)アメリカ務省は、今週に入り、議員に対し日本の取り組みを説明するのをやめたといいます。
 2007年3月1日
 「河野談話」について、安倍首相と記者団が行ったやりとりです。
 記者団「自民党議連で談話見直しの提言を取りまとめる動きがありますが?」
 安倍首相「当初、定義されていた強制性を裏付けるものはなかった。その証拠はなかったのは事実ではないかと思う」
 記者団「強制連行の証拠がないにもかかわらず、(強制性を)認めたという指摘もあります。談話見直しの必要性は?」
 安倍首相「(強制性の)定義が(「狭義」から「広義」へ)変わったということを前提に考えなければならないと思う」
 記者団「(議連の動きは)中韓との関係に水を差す懸念はありませんか?」
 安倍首相「歴史について、いろいろな事実関係について研究することは、それはそれで当然、日本は自由な国だから、私は悪いことではないと思う」
 2007年3月5日
 参議院予算委員会で、従軍慰安婦問題の質疑がありました。
 小川敏夫氏(民主)「日本の謝罪を求める決議案が米下院に出ている。一九九三年の河野洋平官房長官の談話をどう考えているか?」
 安倍首相「基本的に継承する」
 小川氏「旧日本軍による強制運行は?」
 安倍首相「官憲が人さらいのように連れて行く強制性はなかった。「慰安婦狩り」のような官憲による強制的連行があったと証明する証言はない。間に入った業者が事実上、強制していたケースもあった。広義の強制性はあったのでないか」
 小川氏「謝罪せず、決議を無視するのか?」
 安倍首相「決議があったからといって、われわれが謝罪することはない。決議案は客観的事実に基づいておらず、日本政府のこれまでの対応を踏まえていない」
 小川氏「過去の戦争について真撃な反省が足りないという国際評価を招くのではないか」
 安倍首相「まったくそうは思わない。小川氏は、戦後六十年の日本の歩みを、ことさらおとしめようとしている」
 2007年3月5日(毎日新聞)
 安倍晋三首相の従軍慰安婦問題に関する発言についてフィリピン外務省は、声明を発表し、日本政府に対し、慰安所の設置などで旧日本軍の関与を認めた、93年の河野洋平官房長官(当時)談話の順守を求めました。
 声明は、「この重要で微妙な問題について、フィリピン政府は、河野官房長官談話や、02年に小泉純一郎首相(当時)がフィリピンの従軍慰安婦被害者に送った書簡の内容を順守するよう、求める」と訴えました。
 2007年3月6日(朝日新聞)
 今月末に解散する「女性のためのアジア平和国民基金」の理事長である村山富市元首相は、記者会見で、河野官房長官談話をめぐる安倍首相の発言について、「基金は河野談話の精神をふまえ活動している。首相が河野談話を継承するという限り、信頼している」と述べました。
 また、米下院が審議している慰安婦決議案について、村山元首相は「歴代首相が慰安婦の方へおわびの手紙を出したことが理解されていないのがきわめて残念」と語りました。
 2007年3月6日(毎日新聞)
 自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は、従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野洋平官房長官談話」(93年)の見直しを安倍晋三首相に求めない方針を決めました。「旧日本軍による従軍慰安婦の強制連行の事実はない」との立場から見直しを求める考えでしたが、官邸側から自制を促されたこともあって方針を転換しました。
 首相はもともと河野談話に否定的でしたが、就任後、強制連行など「狭義の強制性」はなかったが、自らの意思に反して従軍慰安婦となる「広義の強制性」はあったとの解釈で談話継承の立場を明確化していました。
 首相は見直しを求める自民党保守派と、見直しに反発する中国や韓国などとの間で板ばさみ状態になっており、同会の方針転換は首相の立場にも配慮したとみられています。
 2007年3月6日
 アメリカの最有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は、社説で、安倍発言を批判し、日本の国会に「率直な謝罪と十分な公的補償」を表明するよう求めました(史料1)。
 以下はその要約です。
 「日本の首相の安倍晋三は『日本軍の性的奴隷』のどの部分に関して理解や謝罪ができないというのか。(慰安所)というのは商業的な売春宿ではなかった。女性の徴用には暴力が使われた。実行されたのは連続の強姦であって、売春ではない。日本軍の関与は政府の文書に記録されている。米国議会には日本に公式の謝罪を求める決議案が出ているが、日本が遅まきながらでも完全な責任を受け入れることを求める国は米国だけではない。安倍氏は日本の国際的な評判よりも、自民党内の強大な右翼派閥へのアピールを優先しているようだ。1993年の声明(河野談話)は削減ではなく拡大されねばならない。日本の国会は率直な謝罪を表明し、犠牲者たちに寛大な公式の賠償を与えねばならない。日本の政治家たちはまず安倍氏から始まって、恥ずべき過去を克服する第一歩はその過去を認めることだと知るときである」
 そして、従軍慰安婦について「女性たちは強制徴用され、彼女たちに対する行為は買春ではなく、連続レイプだった」「日本は事実をねじ曲げて恥をさらしている」と厳しく非難しています。
 さらに、日本政府は率直に謝罪し、生存者に十分な補償金を支払うべきだと訴え、「恥ずべき過去を乗り越える第一歩は、事実を認めることと政治家は自覚すべきだ」と強調しています。
 2007年3月6日
 ロサンゼルス・タイムズ紙は、「日本はこの恥から逃げることはできない」と題する大学教授の論文を掲載しました。
 マイケル・ホンダ議員の地元紙サンノゼ・マーキュリーは、首相発言について「ホロコースト(ユダヤ人虐殺)を否定するようだ」とのコメントを掲載しました。
 日本から戻ったばかりのキャンベル元国防次官補代理は、「米国内のジャパン・ウオッチャーや日本支持者は落胆するとともに困惑している」「日本が(河野談話など)様々な声明を過去に出したことは評価するが、問題は中国や韓国など、日本に批判的な国々の間で、日本の取り組みに対する疑問が出ていることだ」と指摘し、「このまま行けば、米国内での日本に対する支持は崩れる」と警告しています。
 知日派のグリーン前国家安全保障会議上級アジア部長は、「強制されたかどうかは関係ない。日本以外では誰もその点に関心はない。問題は慰安婦たちが悲惨な目に遭ったということであり、永田町の政治家たちは、この基本的な事実を忘れている」と指摘して、日本のとるべき態度として、次の3点を挙げています。
(1)米下院で決議が採択されても反論しない
(2)河野談話には手を付けない
(3)謝罪でなくても、何らかの形で首相や外相が被害者に対する思いやりの気持ちを表明する
10  2007年3月7日
 マイケル・ホンダ議員の地元紙サンノゼ・マーキュリーは、社説で、「下院は歴史の教訓を創出すべきだ」と決議案の採択を主張しました。
 ロサンゼルス・タイムズ紙は、社説で、「日本と近隣の国民とを最も和解させ得る人物は、昭和天皇の子息である明仁天皇」であり「家族(昭和天皇)の名において行われたすべての犯罪への謝罪」と書いています。
11  2007年3月8日(毎日新聞)
 自民党の有志議員でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の中山成彬会長らが、いわゆる従軍慰安婦問題で、「再度の実態調査と関連資料の全面公開」などを政府に求める提言を手渡したのに対し、安倍首相は「資料の提出・提供など、必要に応じて協力していく」と答えました。
 会談終了後、首相は再調査は「自民党が行う」と記者団に述べ、政府による再調査を否定しました。
 一方、中山氏は、「我々は政府による再調査を要請したので、(資料提供の協力をもって)政府が再調査してくれると受け止めている。自民党で調査するつもりはない」と語り、再調査をめぐり政府との間で認識にすれ違いも見せています。
12  2007年3月8日
 ボストン・グローブ紙は、社説で、首相発言を「近隣アジア諸国にとどまらず、同盟国たる米国の信頼も失った」「日本のプライド回復で内政的には有利だろうが、対外的には悪いタイミングで日本を孤立に追い込む」と主張しています。
 アメリカの最有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は、1面に、「日本の性の奴隷問題、『否定』で古傷が開く」という見出しで、安倍首相を「戦時中の日本の過去を抑え込むことでキャリアを築いた民族主義者だ」と断定したり、安倍首相の強制性を否定する発言が元従軍慰安婦の怒りを改めてかっていると伝えました。
  安倍晋三首相は、記者会見の席で、慰安婦問題で謝罪と反省を表明した平成5年の河野官房長官談話について、「自民党が今後、調査、研究をしていくので、資料の提出、提供で協力していく」と語りました。首相は、国会などで「官憲による強制的連行があったと証明する証言はない」と答弁しており、関係資料・文書を公開し、自民党側で事実上の再調査を進めることで、「強制連行」の裏付けがないことを改めて明らかにしたい考えとみられる。
13  2007年3月9日
 アメリカのシーファー駐日大使は、大使公邸で、記者会見して、「決議案は拘束力のないものだが、この問題の米国での影響を過小評価するのは誤りだ」「日本が河野談話から後退していると米国内で受けとめられると破壊的な影響がある」と語り、慰安婦問題で謝罪と反省を表明した1993(平成5)年の河野洋平官房長官談話の踏襲に期待を示しました。
 安倍首相は、アメリカのメディアを意識して、参院予算委員会では、「(元慰安婦に対し)本当に心から同情し、すでにおわびも申し上げている。しかし、必ずしも発言が正しく冷静に伝わらない。事実と違う形で伝わっていく現状で非生産的な議論を拡散させるのはいかがなものか」と述べました。
14  2007年3月11日
 安倍首相は、NHKのテレビ番組で、従軍慰安婦問題をめぐる自身の発言が波紋を呼んでいることについて「河野談話を継承していく。当時、慰安婦の方々が負われた心の傷、大変な苦労をされた方々に対して心からなるおわびを申し上げている。小泉首相も橋本首相も元慰安婦の方々に対し、(おわびの)手紙を出している。その気持ちは私も全く変わらない」と語り、元慰安婦に対する首相としての「おわび」も受け継ぐ考えを強調しました。
 その一方で、麻生太郎外相は、フジテレビの番組で、従軍慰安婦問題で米下院に提出された日本政府に対する謝罪要求決議案について「今の段階で謝罪をする必要は特にあるとは思えない」とか「日米(関係)を離間させる有効な手段だ。対日工作、日米離間工作が結構それなりに効果を上げている」(司会者が「北朝鮮や中国による工作か」と問うと)「もちろんそうでしょう」と述べました。安倍首相の足元をすくう麻生外相という構図です。
*コメント:この安倍首相・麻生外相の発言は、日韓米のみならず、世界に発信されます。それだけ、外交は影響が大きいのです。だから発言は慎重を要するのです。
15  2007年3月12日(毎日新聞)
 マイケル・ホンダ議員が注視している日本の政治家の最も最近の状況を、「慰安婦問題:再調査めぐり、自民議連と官邸が押し付け合い」と題して、毎日新聞の平元英治記者が次の様に報じています。
 「いわゆる従軍慰安婦問題の再調査をめぐり、自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(中山成彬会長)と首相官邸が押し付け合いを続けている。「政府が調査すると言ったはず」と主張する議連に対し、首相官邸は「党が調査すると言っている」と完全否定。安倍晋三首相を支援するつもりだった議連だが、「はしごを外された」との不満も飛び出し、関係は冷え込んできた。
 塩崎恭久官房長官は12日の会見で「政府として調査することは決めていない。聞くまでもなく、何かの間違いじゃないか」とそっけなかった。
 旧日本軍の関与を認めて謝罪した「河野洋平官房長官談話」に関する議連の提言は、政府に再調査を求める内容だった。議連幹部によると、3日未明の衆院本会議で、議連の中山泰秀衆院議員が首相から「提言を持ってきたら引き取る」と事前の「約束」を取り付けたはずだという。しかし、どちらも「調査するつもりはない」という状況に陥り、提言は宙に浮いた形となっている。」
16  2007年3月13日(読売新聞)
 読売新聞のワシントン=五十嵐文記者は、「従軍慰安婦問題、米の対日決議案提案者42人に増える」と題して次のような記事を報告しています。
 「12日時点での共同提案者は、民主党32人、共和党10人。リベラル派が多数だが、2008年大統領選への出馬を表明している保守派のダンカン・ハンター前軍事委員長(共和党)も名を連ねている。
 安倍首相が、官憲による強制連行など「狭義の強制性」を裏付ける証言はなかったと発言し、米メディアが取り上げられるようになった3月以降、新たに17人が加わった」
*コメント:外交音痴の政治家が、国内の選挙の組織票を意識しての発言によって、国益が損なわれていることを実証する好例と言えます。
17  2007年3月13日
 オーストラリアの日刊エイジ新聞は、「日本を訪問中のジョン・ハワード豪首相が、慰安婦強制動員がなかったという
日本の主張について、”過去の出来事に対してつまらない言い訳はしてはならない…強制動員がなかったという主張は、私としては絶対に受け入れることができないことであり、他の同盟国たちも絶対に受け入れることができない”と強く警告した」「慰安婦問題に対してだけは安倍首相と正面から対立するという態度を確かにした」と報道しました。
 さらに、エイジ新聞は、「ハワード首相は、米国下院聴聞会に出席し、自分の日本軍慰安婦生活に対して証言しているオーストラリア人のオヘルンさん(84)と会い、彼女の訴えを聞いている」とも報じています。
18  2007年3月13日(時事通信)
 次期米大統領選への出馬を表明している共和党実力者のハンター前下院軍事委員長は、従軍慰安婦問題について、「日本政府は歴史的事実に立脚し、謝罪することが必要だ」と述べ、下院で審議中の対日謝罪要求決議案の採択を求めていく考えを強調しました。
 ハンター氏は、日米同盟を重視する保守派の代表格だが、3月5日に決議案の共同提案者に加わっています。その理由について、ハンター氏は、「関係者の話をいろいろと聞いたところ、多くの女性が慰安婦として人道的にひどい扱いを受けたことは事実だと判断したためだ」と説明しています。
*コメント:ここでも、大切な親日派を失っています。
19  2007年3月15日(毎日新聞)
 河野洋平衆院議長は、従軍慰安婦問題に関する自らの官房長官談話(93年)の見直し論が自民党内に出ていることについて、国会内で記者団に「談話は信念をもって発表した。あれはあの通り受け止めてほしい」と述べ、不快感を示しました。
*コメント:今もっとも日本でバッシングにあっている張本人の発言です。「今も信念をもっている」という言葉に重みがあります。
外国人の媚び・追従は喜んでばかりいられない
 余りテレビを見ない私ですが、歴史関係は見るように心がけています。
 従軍慰安婦問題で、三宅久之さんが微妙な発言をした同じ番組(3月18日「そこまで言って委員会」)で、台湾出身の金美齢さんは、次のような発言をしています。
 「もし万が一本当に台湾の女性が強制的に拉致されていたのに、台湾の人間が何も声を上げなかったということがあったとしたら、恥ずかしいじゃないかと。なぜ自分達の同胞やね、その、女が連れていかれてるのにね、誰も何も言わなかったと。少なくとも私はその、11才まで日本統治の下にいて、戦争も体験してるから、もしそんなことがあったら耳に入るだろうと」
 さらに続けて、金美齢さんは続けます。
 「あの時、何で、何にもね、そういう話を聞かなかったの。でも私は11才だからわからないけれども、私、頼んだんですよ。もっと年上の人に調べてもらったら、台湾ではそいういうことはね、聞いたことがないって言うんです。つまりあの当時みんなが貧しくて、で、ま、半分は甘言に騙された人も当然いるしね、その、看護婦だって言われて行ったら違ってたとかいうことも当然あるけども、強制連行ってのは一切なかったと。むしろたとえば、あの、台湾の中で身を売ってるよりは、戦地に行った方が収入もうんといいし、衛生管理も行き届いてるからと言って、自ら行った人もかなりいたんだって話を、私は聞かされたわけ」
 この放送は、3月18日でした。早速、インターネットで、「台湾 従軍慰安婦」と入力して調べてみました。すると、次のような記事がありました。
(1)台湾行政院(内閣)の鄭文燦報道官(閣僚)は、安倍晋三首相が従軍慰安婦問題について「(旧日本軍による)強制を裏付けるものはなかった」と発言したことに対し、「深い遺憾と抗議を表す」との声明を発表した。鄭報道官は、日本側に反省を促すとともに、被害者と家族への謝罪と賠償を求めた。
 さらに、次のような記事もありました。
(2)台湾外交部(外務省)も同じ趣旨の声明を発表した。従軍慰安婦問題を「かつての日本の侵略戦争が残した未処理の問題」と指摘した上で「被害者が受けた心身の傷は癒やされておらず、日本政府は責任を持って真剣にこの問題を処理すべきだ」と批判した。
 日付は、「3月6日にあった」こととして紹介されていました。
 (1)は内閣の大臣、(2)は外務省です。両方とも、公的機関の発言です。
 金美齢さんの発言は、3月18日に放映されています。3月6日以前の録画だったのでしょうか。3月6日以前の録画なら、あてにならない情報源であてにならない発言したことになります。3月6日以後の録画なら、台湾を代表して発言する立場の人が、台湾の情報を知らなかった無責任な代表といえます。
 外国人の日本への媚び・追従は、日本人には快く感じますが、事実の蓋をしてまでの媚び・追従は、日本や台湾のためにはなりません。日本のTVで活躍するためには、外国人には必要なことかも知れませんが…。
 金美齢さんにもう一つ情報を提供します。これは放映後の記事です。発言を訂正する機会はありますよ。
 安倍首相が「強制を裏付けるものはなかった」と発言したことに対して、2007年3月21日、台湾の元慰安婦3人は、台北市にある日本の対台湾窓口機関・交流協会台北事務所前で、「史実をわい曲する言葉であり、アジア各国の元慰安婦の怒りに再び火をつけた」などと抗議しました。
 ここで指摘したい国会議員の立場があります。
 教育や歴史認識に政治が介入した場合、不幸な結果を招いたということを私たちは、戦前に体験しています。
 事実関係の研究は学者に任せて、政治家は、大所・高所から、日本の方向性を考えて、政治にすべきです。
 2007年2月25日、慰安婦決議案を提出したマイケル・ホンダ下院議員(民主党)が出演したフジテレビの「報道2001」で、竹村健一氏が次のような発言をしました。
 「だいたいね、日本のマスコミを毎日見てたらね、国会議員って大したことないと軽く思うようになるわい。しょうもないことばっかりやってんだから。ところがアメリカは議員って偉いんだよ。国会議員だけじゃなくて、町会議員でも市会議員でも。市民に選ばれたというだけでね、格が上。ちょっと短く言うけどね、ある時にね、通産省かどっかの課長が、市会議員みたいなの20人ほど連れて、アメリカ行ったわけ。そしたら自分が、通産省の課長が、俺が団長だと思ってたら、向こう行ったらもう全然扱い悪いわけ。それはあなたは公務員だと、この人たちは市民から選ばれた人たちだと、全然態度が違うことがわかって、民主主義というのは国民が選んだ人が立派なんだということがわかったと言うんだけどね。もうちょっと国会議員を大事にして下さい」
 つまり、アメリカでは、学者や評論家の発言より、国家を左右する政治家の発言を重大視していることがよくわかります。外交に関して、政治家は、このことを肝に銘ずべきです。
 インターネットで、従軍慰安婦問題で、安倍発言に批判的な外国のマスメディア・ウエブなどを調べてみました。
(1)アメリカ:「ニューヨーク・タイムズ」、「ワシントン・ポスト」、「ボストン・グローブ」、「ロサンゼルス・タイムズ」、「CNN」、「ABC」、「ザ・ネーション」
(2)イギリス:「BBC」、「エコノミスト誌」、「ガーディアン」、「テレグラフ」、「フィナンシアル・タイムズ」
(3)フランス:「ヘラルド・トリビューン」
(4)オランダ:「国営通信」
(5)オーストラリア:「日刊エイジ」、「オーストラリア・ネットワーク」
(6)カナダ:「トロント・スター」、「CTV」
(7)アラブ圏:「アルジャジーラ」
(8)フィリピン:「マニラ・タイムズ」
(9)マレーシア:「ニュー・ストレーツ・タイムズ」
(10)インドネシア:「ジャカルタ・ポスト」
(11)中華民国(台湾):「中央通信」、「Taiwan Security Research」
 ここでは、中華人民共和国と韓国のメディアは省略しています。それにしても、この取り上げようは異常です。いい意味でも悪い意味でも、総理大臣の発言は、国の命運を左右するということです。
 そのことを理解しない総理大臣が誕生した時、不幸がやってきます。これらを教訓として、今後に期待しましょう。
 「ニューヨーク・タイムズ」の社説原文を紹介します(史料1)。
「No Comfort
What part of “Japanese Army sex slaves” does Japan’s prime minister, Shinzo Abe,have so much trouble nderstanding and apologizing for? The underlying facts have long been beyond serious dispute. During World War II,Japan’s Army set up sites where women rounded up from Japanese colonies like Korea were expected to deliver sexual services to Japan’s soldiers.
These were not commercial brothels. Force, explicit and implicit, was used in recruiting these women. What went on in them was serial rape, not prostitution. The Japanese Army’s involvement is documented in the government’s own defense files. A senior Tokyo official more or less apologized for this horrific crime in 1993. The unofficial fund set up to compensate victims is set to close down this month.
And Mr. Abe wants the issue to end there. Last week, he claimed that there was no evidence that the victims had been coerced. Yesterday, he grudgingly acknowledged the 1993 quasi apology, but only as part of a pre-emptive
declaration that his government would reject the call, now pending in the United States Congress, for an official apology. America isn’t the only country interested in seeing Japan belatedly accept full responsibility. Korea and China
are also infuriated by years of Japanese equivocations over the issue.
Mr. Abe seems less concerned with repairing Japan’s sullied international reputation than with appealing to a large right-wing faction within his Liberal Democratic Party that insists that the whole shameful episode was a case of healthy private enterprise. One ruling party lawmaker, in his misplaced zeal to exculpate the Army, even suggested the offensive analogy of a college that outsourced its cafeteria to a private firm.
Japan is only dishonored by such efforts to contort the truth.
The 1993 statement needs to be expanded upon, not whittled down. Parliament should issue a frank apology and provide generous official compensation to the surviving victims. It is time for Japan’s politicians ― starting with Mr. Abe ―to recognize that the first step toward overcoming a shameful past is acknowledging it.
 次に、下村博文官房副長官が引用した平林博内閣外政審議室長の答弁を掲載します(史料2)
 参議院予算委員会(1997年3月12日)
○小山孝雄君(自民党) お配りしております資料をごらんいただきたいと思いますが、この「朝鮮人強制連行」という見出しが入って、写真が入って、その下の段の真ん中辺に「警察官や役人が土足で家に上がり、寝ている男を家から連れ出すこともありました。抵抗する者は木刀でなぐりつけ、泣きさけびながらトラックに追いすがる妻子を上からけりつけたともいわれます。」と、わずかこのページの中でこれだけのことが書かれております。
 外政審議室にお尋ねいたしますが、つぶさに政府資料等々、平成4年、5年当時、お調べいただいたようでございますが、こういうことが日常茶飯行われていたんでしょうか。
○政府委員(平林博君) 内閣外政審議室長の平林でございます。
 今の強制連行につきましてでございますが、私の方で調査いたしましたのはいわゆる従軍慰安婦の関係でございますが、従軍慰安婦に関する限りは強制連行を直接示すような政府資料というものは発見されませんでした。その他、先生の今御指摘の問題、朝鮮人の強制労働等につきましては我々が行った調査の対象外でございますので、答弁は関係省庁にゆだねたいと思います。

○小山孝雄君 重ねて要請しておきます。
 そこで、先ほど外政審議室長から答弁もございましたが、もう一度お尋ねをいたします。
 一月三十日の本委員会で、片山委員の質問に対しまして、政府のこれまでの慰安婦問題に関する調査では慰安婦の強制連行はなかったという答弁をされましたけれども、もう一度外政審議室に確認をいたします。
○政府委員(平林博君) お答え申し上げてきておりますのは、政府の発見した資料の中に軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示すような記述は見出せなかった、こういうことでございまして、その点は確認させていただきます。


○小山孝雄君 外政審議室にお尋ねいたします。
 先ほど慰安婦の強制連行はなかった、政府の資料から見出せなかったということを御答弁になりましたけれども、どうしてそういうことを平成五年八月四日の調査結果を報告するときに記入しなかったんでしょうか、あるいは発表しなかったんでしょうか。それどころか、報告書には「業者らが或いは甘言を弄し、或いは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが数多く、更に、官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた。」と、ここまで書いております。それはなぜですか。
○政府委員(平林博君) 平成五年八月の調査結果におきましては、個々の出典とか参考にした文献、証言等を個別に言及しておりません。実態として、今まで申し上げましたように、政府の発見した資料の中には強制連行を直接示す記述は見当たらなかったのでございますが、その他各種の証言集における記述でございますとか韓国における証言聴取とか、その他種々総合的にやった調査の結果に基づきまして全体として判断した結果、一定の強制性を認めた上であのような文言になったということでございます。
○小山孝雄君 全体としてというのでは本当によろしくない。例えば、午前中、本委員会に入る前に科技庁長官から東海村の動燃の事業所での爆発事故の経緯説明がありましたけれども、こうしたことは一つ一つ真相を常に明らかにして進んでいくということが大事だと思います。
 再び外政審議室長にお尋ねしますが、政府の報告書の中で、調査資料の中で強制連行があったと判断したもとの資料は何でしょうか。
○政府委員(平林博君) 政府の発見しました資料の中からは軍ないし官憲による強制連行の記述、そういうものはございませんでした。
 今申し上げておりますのは、ほかの証言、資料等も含めまして総合的に強制的な要素があったということを申し上げている次第でございます。
○小山孝雄君 ここに報告書の写しを持っております。私がここに持っておりますので、どれがどれで、どれが公開されて、どれが非公開なのか、明らかにしてください。
○政府委員(平林博君) 今、先生のお持ちの資料の中には、日本の関係省庁、それから国立国会図
書館、アメリカの国立公文書館等のほかに、関係者からの聞き取り先、あるいは参考としたその他の国の内外の文書及び出版物が並べられておると思うんですが、このうち公開していないものは関係者からの聞き取りだけでございまして、その他はすべて公開をしている次第でございます。
○小山孝雄君 参考とした国内外の文書は全部公開でしょうか。
○政府委員(平林博君) 原則として今おっしゃったとおりでございますが、韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会というのがございますが、ここの資料だけは内部資料だということで渡されておりますので、これは例外的に非公開ということになっております。
○小山孝雄君 そうしますと、我が日本国の各行政機関、それから国立国会図書館、国立公文書館、そして米国国立公文書館から出たものは全部公開されている。そこには強制連行を直接示す資料はなかったということが確認された。
 そうすると、残りは関係者からの聞き取り調査です。すなわち、元従軍慰安婦を中心とした関係者からの聞き取り調査は明らかにされていない。それから、参考文献の中に太平洋戦争犠牲者遺族会等韓国の遺族会がまとめた元慰安婦の証言集、これが非公開ということですね。
○政府委員(平林博君) そのとおりでございます。
○小山孝雄君 その証言集の裏づけはとっておりますか。
○政府委員(平林博君) お答え申し上げます。
 個々の証言を裏づける調査を行ったかという御趣旨でございましたら、それは行っておりません。個々の方々、これは元従軍慰安婦もおりますし、元慰安婦もおりますし、それから軍人さんたちのあれもございますが、それの証言を得た上で個々の裏づけ調査をしたということはございません。
○小山孝雄君 そうしますと、公開されていない資料、そして個々の裏づけ調査をしていない資料で政府は平成五年八月四日の決定を行った、こういうことになりますか。
○政府委員(平林博君) 結論としてそのとおりでございますが、全体を子細に検討して、総合的に判断した結果ということでございます。

○小山孝雄君 そういうことですから、当時この調査に当たった、政府の方針に携わった方々が今いろんなところで疑問を呈しておられる、こういうことだと思います。既に公表されているものでも研究者が、例えば秦郁彦千葉大教授だとか西岡力東京基督教大学助教授の詳細な調査、検証が行われていて、既に公にされている証言集等についてはほとんど信憲性がないということが立証されているわけであります。
 例えば、今発売されている文芸春秋誌上には先ほど申し上げました櫻井よしこさんのレポート、あるいは産経新聞の先週の日曜日だったでしょうかインタビュー記事、例えば当時の石原信雄官房副長官が、韓国における政府の聞き取り調査が決め手になったことを認めた上で、「最後まで迷いました。第三者でなく本人の話ですから不利な事は言わない、自分に有利なように言う可能性もあるわけです。それを判断材料として採用するしかないというのは……」と述べているわけであります。
 また、当時の外政審議室長も、今どこかの大使に行っていますが、「そのまま信ずるか否かと言われれば疑問はあります」と証言しております。さらにまた、聞き取り調査に行った当時の外政審議室の審議官田中耕太郎さんは、調査が終わった日にソウルでの記者会見で、証言をした慰安婦の方々の「記憶があいまいな部分もあり、証言の内容をいちいち詳細には詰めない。自然体でまるごと受けとめる」という記者会見をしたのも日本のマスコミにきっちり出ているわけであります。
 こうした経緯があるわけでございますけれども、やはりここで大きな疑問が残るわけでございまして、そうした資料をもとにああいう決定をしたんですかという疑問はまだまだ残るわけであります。
 官房長官、お尋ねいたしますけれども、そうした経緯があって河野長官のときにあの決定がなされたわけでありますけれども、そうすると、あの時代、軍や警察に身を置いて国のために身命を賭した方々の名誉というのは一体どうなるのかという問題も残るわけでございます。官房長官、御所感をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(梶山静六君) いわゆる従軍慰安婦問題に関する官房長官談話につきましては、当時政府として全力を挙げて誠実に調査した結果を全体的に取りまとめたものと認識をいたしておりますし、その判断をもととし、それを踏襲して現在に至っているわけであります。
 委員の御指摘を伺いながら、またさまざまな報道や資料を改めて拝見いたしますと、この問題の難しさを改めて感ずるわけであります。

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