print home

エピソード

302_07

慰安婦決議案と日本の外交3
 我が家には、雑種ですが、ボーダーコリーの血をひく中型犬「豆太郎(愛称マメちゃん)」(娘が命名)がいます。
 娘が中学に入学したのを記念してもらい受けて17年になります。人間の年齢に換算すると84歳だそうです。娘が都会に嫁いだので、私たち夫婦が老犬(豆太郎)の世話をしています。
 自宅から20分ほど行くと、山を利用した公園があります。公園を20分ほど1周して、家に着くと約1時間経過しています。私たち夫婦には、かなり急勾配な散歩コースですが、健康に留意して、毎日頑張っています。「犬に連れられて健康な散歩」を実践しています。
 どうして、慰安婦決議案に犬の散歩が出てくるのか不思議に思われるかも知れませんね。
 安倍首相の言動を見ると、犬の散歩を思い出すのです。
 山を利用した公園では、よく放し飼いの犬に出会います。愛玩用の犬は、「キャンキャン」とわめき、騒いで、近寄ってきますが、「豆太郎」は動ずることはありません。あまりしつこいとチラッと睨みます。それだけで「キャン」と泣いて、退散します。「弱くて馬鹿な犬ほどよくほえる」にあてはまるのが愛玩用の犬です。
 かなり獰猛な「柴犬」が牙をむいて、かかってきます。飼い主の私が恐怖を感ずるほどです。喧嘩になってはと心配していると、一声低い声で「ウーッ」とうなると、尻尾を巻いて、獰猛な柴犬も退散です。
 お互い無視する犬もいます。「豆太郎」が「ワンワン」と挑発する「より大物」の犬もいます。
 本当に強くて、自信がある犬は、「泰然不動」を心得ているものだと感心しています。
 安倍首相の場合は、失礼ではありますが、犬にたとえると、愛玩用の犬とそっくりです。何にでも吠えたがる。
 以下は、従軍慰安婦問題についての安倍首相とその取りまき連の対応です。
 政界の安倍晋三氏を代表とする「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」、学問や教育界の藤岡信勝氏を代表とする「新しい歴史教科書をつくる会」、言論や思想界を代表するフジサンケイグループ、この3つのグループは緊密な連携をとりながら、新保守主義の運動を現実化してきたことが分ります。
 1993(平成5)年8月4日、河野洋平官房長官は「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」という河野談話を発表しました。石原信雄副官房長官は、「談話の文言は、河野官房長官、谷野作太郎外政審議室長、田中耕太郎外政審議官らと相談して決めた」と語っています。
 1997(平成9)年1月30日、「新しい歴史教科書をつくる会」は、創立総会を開き、初代会長に@西尾幹二、副会長に藤岡信勝を選出しました。
 つくる会は、歴史認識について、「歴史は科学ではない」・「歴史は物語である」と主張しています。
 つくる会は、従軍慰安婦についても、次の様に主張しています。
 「『従軍慰安婦』という用語は、第二次世界大戦前には使われていない。慰安婦とするために日本の国家政策として強制連行をしたと証明できる公文書は発見されていない。また戦争中、慰安婦は、世界中の軍隊に存在したもので、ことさら日本を訴え続ける外国訴訟団ばかりを取り上げる教科書には偏りがある」。
 2月27日、自民党の当選5回以下の議員を中心に「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(教科書議連)が結成されました。発足時の会長は中川昭一、事務局長は安倍晋三、幹事長は平沼赳夫である(中川が大臣になったので、現会長は古屋圭司、幹事長は衛藤晟一、中山成彬は文科相就任まで座長)。
 「教科書議連」と「つくる会」とは目的を同じくする緊密な関係にある団体です。。
 「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(安倍晋三事務局長)は、講師という資格で、次々と関係者を招いて、厳しい質問をしています。
 3月6日、遠藤昭雄文部省審議官に対して、渡辺博道議員は「客観的には『いわゆる従軍慰安婦問題』という記述なのであって、『従軍慰安婦』は客観的記述ではない」「これを載せることによってどういった教育的配慮をしているのか」と質問しました。
 3月13日、丁子 惇東京書籍社長で教科書協会会長と安倍晋三事務局長のやり取りは以下の通りです。
 安倍事務局長「強制連行についてはなかった、というのが政府の公式の回答であります」とし、「それがあったかのように教科書に載せるということをどう考えておられるのか」
 丁子教科書協会会長「前の官房長官(河野洋平氏)が言われたように歴史教育を通して記憶にとどめていく必要があるということで、・・・今回載せたということになります」
 安倍事務局長「中学校の教科書には「従軍看護婦」については全く一行も触れていないわけであります。従軍慰安婦には触れるけれど、従軍看護婦には触れない。これはどういうふうに整理をしておられるのでしょうか。」
 丁子教科書協会会長「小学校の教科書に載せるつもりは今のところございません」
 安倍事務局長「今のところ?」
 安倍晋三事務局長は、従軍慰安婦が教科書に掲載されることを批判しています
 「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(安倍晋三事務局長)は、講師という資格で、次々と関係者を招いて、厳しい質問をしています。
 3月26日、吉見義明中央大学教授に対して、吉田六左エ門議員は「吉見先生があまりこの方向に移行されると、先生もあるいはその国のお方なのかなと、私は疑問を抱くほど最近それらの人たちの水面下での教科書選定に対するパワーをなんとなく感じているんです」と質問しました。
 4月9日、石原信雄元官房副長官は、河野談話の経緯を問われて、「結論として、強制連行を裏付ける資料は見つからなかった。談話発表の直前に行った韓国での元慰安婦十六名からの聞き取りが決め手になった。この調査については裏付け調査はしていないが、当時の状況ではそれはできなかった」「裏付け調査はせずに河野談話を決定したことに異論のあることは承知している。決断したのだから弁解はしない」と語っています。
 5月27日、衆議院決算委員会で、安倍晋三氏が河野談話や教科書問題を執拗に取り上げ、質問しています。
○安倍晋三分科員「私どもの勉強会におきまして、何回か文部省の方に来ていただきまして、お話を伺ったわけでありますが、こうした記述が載るという根拠になったのは、先ほど申し上げました宮澤官房長官の談話と、そして河野官房長官の談話であります。しかし、先ほども申し上げましたように、河野官房長官の談話の前提がかなり崩れてきているという大きな問題点があると思うんですね。ですから、その中で、もし官房長官談話が強制性はなかったというように修正をされたら、これは果たして検定の中身も変わってくるのかどうか、このことについてお伺いをしたいと思います」
○辻村哲夫(文部省初等中等教育局長)政府委員「ただいまこの根拠が云々という御指摘があったわけでございますけれども、この政府調査、これ自体は何ら変更をされていないわけでございます。予算委員会でたびたび取り上げられておりますけれども、その際の政府答弁におきましても、強制性は認められているということで、この政府答弁も一貫をしているわけでございます」
 安倍晋三氏は、衆議院で政府費に河野談話の取り消しを要求しています
 「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(安倍晋三事務局長)は、講師という資格で、次々と関係者を招いて、厳しい質問をしています。
 6月17日、安倍事務局長と河野洋平元官房長官のやり取りです。
 安倍晋三事務局長「しかも、それがわが国の場合は教科書に載るということになってしまったわけです。本来、「官房長官談話」と教科書に載ると別の次元の話なんですが、日本のシステムはそうなっているんです。そうすると、ここのところを直さない限り教科書が直せないというのが文部省の……。私も何回も質問をしても、文部省が金科玉条のごとく、「この『談話』があるから、私たちは悪いことはしていませんよ。個人的にはこんなのは載せるべきじゃないと思っているけれども、これはしょうがないんです」と、文部省、誰に言ってもそういうことなので、我々としてやはりもう一度この検証をちゃんとするか、また事実として確定していないということであれば、事実として確定していないということにしなければいけないのかなと」
 河野元官房長官「いや、安倍先生のお話はそれなりによくわかりますが、私は「官房長官談話」を出すにあたって、そんなあやふやな状況下で出したつもりはないんです。これはその当時の調査、その当時の様々な……。あの当時、時間的な問題ももちろんあったかもしれません。「もっと慎重にやれ」という人もあったかもしれませんが、私は少なくともずーっと調査を重ねていって、あの時点で、これは「官房長官談話」に書きました意味において、私は「『強制性』は認められる」と言って憚らないという最終的な判断をいたしました」
 安倍晋三事務局長は、河野洋平氏に河野談話の取り消しを要求しています
10  こうしたやり取りを通じて、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」は、「通算10回にわたる勉強会によって、いかにわが国の歴史教育には深刻な問題が存在しているか、あるいはいわゆる慰安婦問題がいかに歪曲されて伝えられているか、そして日本外交のこれまでのあり方がいかに今日の問題を招く端緒となったか等々の事実が明らかになった」とし、それを改める「国民運動を精力的かつダイナミックに展開していく」と主張しました。
11  1998(平成10)年2月、「新しい歴史教科書をつくる会」理事会は、「事務局員との確執」を理由に初代事務局長の草野隆光を解任し、大月隆寛を2代目の事務局長に選出しました。
12  1999(平成11)年9月15日、「新しい歴史教科書をつくる会」の西尾幹二会長は、手紙で大月隆寛を解任勧告しました。
 7月29日、「新しい歴史教科書をつくる会」理事会は、藤岡信勝副会長と対立する濤川栄太副会長を解任し、藤岡の理事は留任させました。
13  2000(平成12)年4月フジサンケイグループ(フジテレビ・産経新聞など)の出版事業部門である扶桑社は、『新しい歴史教科書』・『新しい公民教科書』を文部省に検定申請しました。しかし、『新しい歴史教科書』については137箇所、『新しい公民教科書』については99箇所に検定意見が付けられました。
14  2001(平成13)年3月21日、安倍晋三事務局長であった「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」は、自民党本部で総会を開き、教科書の「公正な採択を求め、前面で戦っていく」ことなどを方針として決定した。
 4月3日フジサンケイグループの扶桑社版『新しい歴史教科書』・『新しい公民教科書』が検定意見箇所を修正し、検定に合格しました。
 9月、「新しい歴史教科書をつくる会」の西尾幹二会長が辞任して、新会長にA田中英道、新副会長に高橋史朗・種子島経・藤岡信勝を選出しました。
15  2002(平成14)年2月、「新しい歴史教科書をつくる会」の理事会は、親米保守の立場を確認したので、反米保守の立場の小林よしのりと西部邁が退会しました。
 7月、「新しい歴史教科書をつくる会」の第5回定期総会で、遠藤浩一・九里幾久雄・中西輝政・新田均を新理事に選出しました。
16  2004年6月14日、安倍自民党幹事長は、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」主催のシンポジウムで来賓として「『従軍慰安婦』という歴史的な事実はなかった。前回の教科書検定では左の勢力により『つくる会』に圧迫があり、言論の自由が奪われようとしていた。文部科学省にも教科書改善への働きを積極的に行っている」と挨拶しました。
17  2005(平成17)年3月2日、「新しい歴史教科書をつくる会」とともに行動してきた「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」は総会を開き、文科省に対して「つくる会」教科書の採択に有利になる「教科書採択手続きの改善に関する提案」を提出しました。同総会には、文科省の教科書担当の官僚のトップである山中伸一審議官と片山潤一教科書課長が参加しました(『産経新聞』2005年3月3日付け)。
 4月フジサンケイグループの扶桑社は、検定規則(省令)に違反し、検定通過前の白表紙本を教職員に配布していた事が発覚し、管理の徹底と回収を三度に渡って文科省から指導されていた事が明らかとなりました。
18  2006(平成18)年1月16日、「新しい歴史教科書をつくる会」の西尾幹二名誉会長が宮崎正治事務局長を解任しようとしましたが、擁護派の八木秀次と対立し、八木西尾幹二が名誉会長、遠藤浩一・工藤美代子・福田逸が副会長を辞任しました。
 1月17日、「新しい歴史教科書をつくる会」の新会長にB八木秀次が就任しました。
 2月27日、無断中国旅行を責められ、八木秀次が会長を辞任し、C種子島経が会長に就任しました。八木前会長は「今回の解任は私の意図と離れたいきなりのものであり、またその手続きや理由にも納得のいかないものがあり、受け入れることができないのです」とつくる会のニュースで声明を発表しています。
 4月30日、種子島経が会長を辞任しました。
 5月1日D高池勝彦が会長代理に就任しました。
 6月20日E小林正が会長、副会長に高池勝彦・藤岡信勝が就任しました。
 6月30日、八木秀次は、「新しい歴史教科書をつくる会」とは別組織の「日本教育再生機構」を設立しました。つくる会の会員であった屋山太郎も、八木に同調して「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)を設立しました。
 9月26日、安倍晋三首相が誕生しました。戦後生まれの最初の総理大臣です。
 10月3日、安倍首相は、衆院代表質問で、従軍慰安婦問題に対する認識を問われ、「いわゆる従軍慰安婦の問題についての政府の基本的立場は、93年8月4日の河野官房長官談話を受け継いでいる」と述べました。
 安倍首相は「河野官房長官談話を受け継いでいる」と表明しました(思わずウッソーと叫んでしまいました)
19  2007(平成19)年1月31日、日系のマイク=ホンダ下院議員らは、「若い女性を日本帝国軍隊が強制的に性奴隷化した」などという対日決議案を提出して、「公式に謝罪する日本の首相が声明を出すべきだ」と要求しました。
 3月1日、安倍首相は、旧日本軍による従軍慰安婦の強制動員を認めた河野洋平官房長官(当時)の談話に対する見解について、旧日本軍の従軍慰安婦について「強制性があったことを証明する証言や、それを裏付ける証拠はなかった」と述べました。この反論がアメリカ世論の目をさまさせました(持論が出ました)
 3月6日、アメリカの最有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は、社説で、安倍発言を批判し、日本の国会に「率直な謝罪と十分な公的補償」を表明するよう求めました。
 3月8日、安倍首相は、「政府は『河野談話』を継承する立場であり、『慰安婦』問題を改めて調査する考えはない」と述べました。
 4月27日、安倍首相は、ペロシ下院議長(民主党)やブッシュ大統領(共和党)に「慰安婦の方々を非常に困難な中でつらくて苦しい状況に追いやったことに対して、人間として首相として、心から同情しており、申し訳ない思いだ」と謝罪しました。これに対してブッシュ大統領は「(謝罪を)受け入れる」と応えました。この謝罪がアメリカ世論と議会の動きを鎮静化させました(又々2枚舌?)。
 しかし、外遊先で記者団に「米国に謝罪したのではない」と強調し、親日的な共和党関係者からさえ「どういうつもりなのか」といぶしがられました。やっぱりこれが安倍首相の持論ですよ
20  2007(平成19)年4月、「新しい歴史教科書をつくる会」の地方支部は、八木秀次の「日本教育再生機構」、屋山太郎の「改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会」(教科書改善の会)を分派活動として糾弾しました。
 5月31日、「新しい歴史教科書をつくる会」は、分派活動の責任を求めて小林正を解任し、副会長のF藤岡信勝が会長に就任しました。フジサンケイグループの扶桑社は、つくる会との関係解消を通告し、今後は「日本教育再生機構」(八木秀次)・「教科書改善の会」(屋山太郎)と提携することを表明しました。
21  6月14日、従軍慰安婦問題をめぐり、日本の国会議員有志や言論人らが14日付の米紙ワシントン・ポストに「旧日本軍によって強制的に従軍慰安婦にされたことを示す文書は見つかっていない」と訴える全面広告を出しました(英文資料1)(翻訳資料2)。
 賛同して署名しているのは、63人です(資料3)。
 政治家では平沼赳夫元通産相・西村眞悟氏ら44人です。平沼氏は若手議員の会の幹事長で、安倍氏が事務局長という間柄です。西村氏は、弁護士法違反で弁護士資格を剥奪された国会議員です。
 学者では遠藤浩一氏(拓殖大学)、西岡力氏(東京基督教大学)、藤岡信勝氏(拓殖大学)らで、つくる会と関係のある人脈です。
 政治評論家では、西尾幹二氏(電気通信大学名誉教授)、富岡幸一郎氏(文芸評論家)、岡崎久彦(外交評論家)ら産経新聞の常連執筆者です。
 その他では、フジテレビの常連である青山繁晴氏(独立総合研究所首席研究員)、産経新聞や正論などで活躍している櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)、フジサンケイグループの扶桑社から教科書を新たに依頼された屋山太郎氏(政治評論家)などがいます。
 全面広告の要旨は、「旧日本軍の強制を示す文書がない」「慰安婦は性奴隷ではなかった」と主張し、「公娼制度は当時の世界では普通のこと」「1945年に占領軍当局は、米兵による強姦を予防するため慰安所の設置を日本政府に要請した」として、「事実無根の中傷に謝罪すれば、人々に間違った印象を残し、日米の友好にも悪影響を与えかねない」としています。安倍首相が謝って、取り巻きに持論を喋らせていると誤解(?)した米議会関係者もいるという報道もありました。この全面広告がアメリカ議会の動きを加速させました
 安倍首相に最も近い下村博文官房副長官が「今回は事を荒立てないでほしい」と説得したので、自民党の賛同者は29人にとどまったといいます。
 これに対して、取り巻きで「安倍カラーを封印している」と不満を漏らして賛同した人もいました。
22  6月18日、米下院外交委員会は、従軍慰安婦問題で日本政府に対して明確に歴史的責任を認め、首相が公式に謝罪するよう求める決議案を26日に採決する日程を固めました。
 ワシントンポストの全面広告に反発して、「この広告は確実に採決を促す要因になった。態度を保留していた議員も『決議を通すのは今だ』と確信した」と言われ、共同提案者は7人から民主・共和両党の146人に増大しました。
 2007(平成19)年6月26日、米下院外交委員会は、従軍慰安婦問題で日本政府に対して明確に歴史的責任を認め、日本の首相が公式に謝罪するよう求める決議案を、一部修正のうえ、賛成39:反対2の賛成多数で可決しました(資料4)。
23  6月26日、産経新聞の古森義久記者は、米下院外交委員会(トム・ラントス委員長)が26日、慰安婦問題に関する対日非難決議案を可決したが、この動きの背後では中国系反日団体がラントス委員長に激しい圧力をかけ、敏速に採決の動きをとらなければ次回の選挙で別の候補を支援するという政治的脅しがあったことが報じられている。
 古森記者は、この可決が一部の圧力団体の動きであると矮小化して報道しています。共同提案者146人・決議案賛成者39人が買収され、反対の2人が圧力に屈しなかったということでしょうか。これは自分に不都合な事実は蓋をする歴史修正主義者の手法です。噴飯物です。
 「米紙ワシントン・ポストに『強制性を示す文書はない』とする全面広告を出すなど日本側の一部の動きは米議会関係者らの反発を買い、今回の委員会採決のきっかけにもなった」という記事の方がはるかに説得力があります。
 つまり、安倍首相の「謝罪」に一定の理解を示したペロシ議長(民主党で人権派)が7月の本会議で採択する意向を示していることからも分ります。
24
 6月27日、安倍首相は、米下院外交委員会が従軍慰安婦問題に関する決議案を可決したことについて、記者団に「米議会では相当たくさんの決議が決議されている。そういう中の一つなんだろう」と語りました。
 記者団が「米議会でたくさん決議されていてもその一つひとつは割と重要ではないか」と問うと、「それはあなたの意見ですね」と不快感をにじませ、質問を続けようとする記者団を振り切って質疑を打ち切りました。
25  6月28日、神戸新聞は「意見広告に米議会反発 櫻井よしこ氏ら 空気読めず裏目に」と題して、次の記事を紹介しています。
 「米下院外交委員会の従軍慰安婦決議案が二十六日、可決された。安倍晋三首相が四月の訪米時、議会関係者に謝罪を表明、採決は見送られるとの見方が広がっていたにもかかわらず、なぜ状況は一転したのか。舞台裏を探ると、ジャーナリストの桜井よしこさんら有志がワシントン・ポスト紙に載せた意見広告が米側を刺激、寝た子を起こした形になっていたという事実が浮かび上がる。日本側は米国内の空気を読み誤り、ちぐはぐな対応に終始した」
 安倍首相には、空気を読めない取り巻きが多いといえます。裸の王様です。と同時に、取り巻を制御できない王様にも困ったものです。
26  従軍慰安婦問題に関連して、安倍氏の言動をみてきました。
 それ以外でも、安倍首相の発言を拾ってみました。
(1)2月24日、民主党長妻昭議員の質問に、安倍首相は「年金そのものへの不安をあおる危険性がある」と答弁しました。(この時に重大さを認識しておれば、内閣や自民党を追い詰めることもなかったのに)
(2)5月28日、松岡利勝農水相の自殺を受けて、安倍首相は「ご本人の名誉のために申し上げておくが、『緑資源機構』に関して捜査当局が松岡農水相や関係者の取り調べを行っていたという事実もないし、これから取り調べを行う予定もないという発言があったと聞いている」と記者団に発表しました。(三権分立という民主主義のルールも知らない発言です)
(3)5月31日、民主党の小沢一郎党首に、安倍首相は「国民から申請があれば自動的に給付しろと言っているのか」と反論・否定しました。(反論・否定した内容を選挙前には自民党のPRに)
(4)6月5日、安倍首相は、「基礎年金番号導入時の厚相は誰だったのでしょうか、菅直人さんではありませんか」と街頭演説しました。(歴代自民党政治の中の一時期を誇大に宣伝)
(5)6月30日、久間章生防衛相が長崎への原爆投下を「しょうがない」と発言したことについて、安倍首相は「米国の(当時の)考え方について紹介したと承知している」と記者団に、問題はないとの認識を示しました。(蓮っ葉な歴史認識で擁護されても、いずれは破滅(辞任)に)
(6)7月8日、松岡農水相の後任に、クリーンさを売り物にして抜擢した赤城徳彦農水相に事務所費問題が浮上しました。安倍首相は「光熱費月800円で辞任要求するのか」 と擁護しました。(月11万円の光熱費を指摘せずに、月800円を取り出して、過少に宣伝)
(7)7月8日、 赤城農水相の両親が「実家を事務所として使ったことはない」と発言したことついて、安倍首相は「お父さんもお母さんもご高齢ですから、 そういう印象をもったのかもしれない」と発言しました。(元気な77歳の父親や母親を高齢で痴呆にするのか)→両親が発言を撤回する(「年老いた両親に嘘をつかせるなんて、許せない!!」というのが街の声)→安倍首相が目指す美しい国の悲しい実態
(8)7月9日、第三者委員会の「本人の訴えをできる限り認める」という判断基準を受けて、安倍首相は「これによって国民に安心していただけるのではないか」と記者団に答えました。(反論・否定した内容を選挙前には自民党のPRに)
(9)7月10日、安倍首相はCMで「年金の全額支払いに責任を持って取り組んでいます」と訴えています。しかし、原案は「皆様の年金は責任を持ってすべて保証します」だったので、民放側が「視聴者に錯誤を起こさせるような表現をしてはならない」という考査基準に触れると難色を示したので、現在のように変更されました。(誇大宣伝、過少宣伝は安倍首相のオハコ)
 何にでもかみつく安倍氏の姿が鮮明に浮かんできました。まさに愛玩用の犬そっくりです。これでは大局を見失うことになります。
 「より大物」の犬のように本当に必要な時にしか、動じない「泰然」たる首相になってほしいと思います。
27 追記(2007年7月30日)
 2007年7月29日に参議院議員選挙が行われました。その結果、自民党は、改選議席64に対して当選者が37と27議席減らすという「歴史的大敗」を喫しました。他方、民主党は改選議席32に対して当選者が60と28議席増やし、初の第一党となりました。参議院選挙に勝てる人として首相になっただけに、皮肉なものです。
 29日の午後21時半の記者会見で、安倍首相は、「基本路線については、多くの国民のみなさまに理解していただいている」として続投を表明しました。
 私が知っている自治会のことです。皆があきあき、辟易しているのに、その風を読めない自治会長は「来年も私がやります」と続投宣言を毎年します。普通は、「来年度は誰か会長候補はいませんか」と問い、皆から「来年も是非おねがいします」と言われて、続投するべきでしょう。近隣に比べ、自治会活動が停滞しているのはいうまでもありません。
 同じ選挙で、A級戦犯の東条英機の孫に当たる東条由布子氏が選挙区東京で、無所属で立候補しました。1位の大河原雅子氏が108万7743票得たのに対して、由布子氏は5万9607票でした。うーん、どういうつもりで立候補したのでしょうか。
28 追記(2007年8月9日)
 7月30日、米下院は本会議で、従軍慰安婦問題について日本政府が歴史的責任を認め、公式に謝罪するよう求める決議を採択しました。同様の決議案は過去4回提出され、いずれも廃案になっていましたが、安倍首相の発言に対する反発が広がり、初めて本会議で採択されました。
 下院外交委員会では39対2の大差で可決し、本会議でも3分の2以上の賛成が見込まれたことから、今回の採決は発声投票で行われました。
歴史修正主義者と安倍内閣
 以前にも書きましたが、歴史修正主義(revisionism、リヴィジョニズム)とは「客観的・論理的・科学的・学問的に構築された歴史モデルから逸脱し、特定のイデオロギーに沿って独自の修正を加える思想・歴史観のこと」とされています(Wikipediaより)。
 その典型的な例が「新しい歴史教科書をつくる会」の主張です。扶桑社から文科省に提出された『新しい歴史教科書』の検定草稿には、歴史を科学としてでなく「物語」と把握していました。つくる会が歴史修正主義の立場にあることの証明です。
 物語(フィクション)の分野は文学です。歴史(ノンフィクション)は科学です。
 安倍首相の根底の部分には、つくる会の歴史修正主義が存在しています。
 安倍首相を取り巻く人々を検証してみましょう。当事者が語った史料を第一級史料といいます。
◆例えば、富田メモ「私あれ以来参拝していない それが私の心だ」について、識者の意見を取り上げてみました。
 櫻井よしこ氏は「メモの書かれた当時、陛下のご体調が万全でなかったのは周知のとおりだ。体調が優れないとき、人間は考えてもみなかった思い違いもする」と分析します(『週刊新潮』2006年8月3日号)。
 岡崎久彦氏は「昭和史についての私の知識から言ってどうしても昭和天皇のお言葉と読めないのである。これは、陛下と富田長官の一対一のメモでなく、何らかの記者会見のメモである」(『産経新聞-正論』2006年8月2日付け)
 このような櫻井氏や岡崎氏の考え方を歴史修正主義といいます。
◆昭和天皇の身の回りの世話をした卜部侍従の日記が公開されました。「靖国神社の御参拝をお取りやめになった経緯 直接的にはA級戦犯合祀が御意に召さず」とあります。
 この2つの第一級史料の前では、櫻井氏や岡崎氏は沈黙を続けています。これが歴史修正主義者です。
 つくる会は、最初から、科学的な歴史教科書を自虐的として攻撃してきました。つくる会こそ日本的な教科書として、採算の取れる10%採択に全力を注ぎました。しかし、2001年の発表では、採択率は0.039%でした。2006年の発表では採択率は0.4%以下という惨敗でした。つくる会は、最初から政治的で、歴史修正主義者の集団ですから、この結果を自省することはありません。
 採択されなかったのは、歴史修正主義の立場の教科書に、教科書としての科学性・真実性を認められなかったということです。
 公選制から任命制の教育委員会が偏向しているだの、組織率30%にも満たない日教組が採択権を牛耳っているだのと、攻撃を欠かせません。
 学者が政治化しているので、分裂・抗争は当然です。「子どもたちが明日を夢にて使う教科書」の著者が、夢もなく、誹謗中傷し合っている姿はマンガです。
 安倍首相のブレーンを自認する八木八木秀次氏は、産経新聞の正論で「教育三法成立の本当の意義」として「教組主導の『民主的な学校づくり』から校長主導の学校運営に転換するために副校長などの職を新設した」「『教育の地方分権』を一部見直し、文科省の教委への権限を復活させた」と述べ、露骨に教育の中央集権化を評価しています。
 歴史修正主義の教科書を採択させようという意図が明確です。
 しかし、断言しておきます。学問・教育に政治が介入すると、つくる会のような運命となるのです。
 経済界、言論界、宗教界、政界に、歴史修正主義を支持するグループがいることも事実です。
英文資料1  The Facts
 The purpose of this paid public comment is to present historical facts. At the end of April, an advertisement purporting to tell "The Truth about Comfort Women" appeared in the Washington Post.
 The claims contained in these statements, though, were anything but the "truth."
 Rather than being based on "facts," they appeared, if anything, to be the products of "faith."
 The people of Japan have the highest respect for the United States as a fellow democratic nation and as a strong and reliable ally. For democracy to operate effectively, though, the freedom of speech, thought, academic research, and religion must be guaranteed so that individual citizens can draw their own appropriate conclusions.
 To enable this, people must have access to correct facts, rather than fallacies, distortions, biases, and factual errors.
 This public comment seeks to present a number of historical facts relating to "comfort women" that have not been adequately brought to light so as to enable the readers of this respected publication to draw their own conclusions.
    ====================================================================================
Fact 1
 No historical document has ever been found by historians or research organizations that positively demonstrates that women were forced against their will into prostitution by the Japanese army. A search of the archives at the
Japan Center for Asian Historical Records, which houses wartime orders from the government and military leaders, turned up nothing indicating that women were forcibly rounded up to work as ianfu, or comfort women."
 On the contrary, many documents were found warning private brokers not to force women to work against their will.
 Army memorandum 2197, issued on March 4, 1938, explicitly prohibits recruiting methods that fraudulently employ the army's name or that can be classified as abduction, warning that those employing such methods have been punished. A Home Affairs Ministry directive (number 77) issued on February 18, 1938, states that the recruitment of "comfort women" must be in compliance with international law and prohibits the enslavement of abduction of women. A directive (number 136) issued on November 8 the same year, moreover, orders that only women who are 21 years old or over and are already professionally engaged in the trade may be recruited as "comfort women." It also requires the approval of the woman's family or relatives.
 A historian who claims that the number of "comfort women" reached 200,000 - a contention frequently quoted in the US media - believes, on the other hand, that the memorandum offers proof of the army's active involvement.
    ====================================================================================
Fact 2
 There are many newspaper articles, moreover, that demonstrate that these directives were dutifully carried out. The August 31, 1939, issue of Dong-A Ilbo, published in Korea, reports of brokers who forced women to become ianfu against their will being punished by the local police, which was under Japanese jurisdiction at the time. This offers proof that the Japanese government dealt severely with inhumane crimes against women.
    ====================================================================================
 Unscrupulous Brokers Run Rampant Abduction of Rural Women and Girls More than 100 Women Victimized Pusan Police Officers Dash Off to Mukden
 Pusan - Unscrupulous brokers have been conspiring to abduct women from poor families by promising them generous rewards in Manchuria (where Japanese soldiers are claimed to be visiting brothels in swarms). Forty-five such brokers were found to be working in Pusan, where they hired unsuspecting young women away from their families and sold them into prostitution in Manchuria. Over 100 women have already been victimized. Intensive investigation by Pusan police has revealed the identity of a Mukden dealer involved in these activities, and six officers were dispatched in the evening of August 20 to the city to arrest this dealer. The arrest is expected to fully expose the nightmarish activities of these brokers.
    ====================================================================================
Fact 3
 There were admittedly cases, though, of breakdowns in discipline. On the island of Semarang in the Dutch East Indies (now Indonesia), for instance, an army unit forcibly rounded up a group of young Dutch women to work at a "comfort station." The station was shut down under army orders, though, when this incident came to light, and the responsible officers were punished. Those involved in this and other war crimes were subsequently tried in Dutch courts and received heavy sentences, including the death penalty.
    ====================================================================================
Fact 4
 House Resolution 121 sponsored by US Representative Mike Honda and other charges of Japanese maltreatment of "comfort women" are mostly based on testimonies by former ianfu. In none of their initial statements are there references to their being coerced to work by the army or other units of the Japanese government.
 Their testimonies have undergone dramatic changes, though, after the start of the anti-Japanese campaign. Those who testified in a House of Representatives public hearing first reported that they were whisked away by brokers, but then later claimed that their abductors were clothing that "looked like police uniforms."
    ====================================================================================
Fact 5
 The ianfu who were embedded with the Japanese army were not, as is commonly reported, "sex slaves."
 They were working under a system of licensed prostitution that was commonplace around the world at the time. Many of the women, in fact, earned incomes far in excess of what were paid to field officers and even generals (as reported by the United States Office of War Information, Psychological Warfare Team Attached to U.S. Army Forces, India-Burma Theater, APO 689), and there are many testimonies attesting to the fact that they were treated well.
 There are records of soldiers being punished for acts of violence against the women. Many countries set up brothels for their armies, in fact, to prevent soldiers from committing rape against private citizens. (In 1945, for instance, Occupation authorities asked the Japanese government to set up hygienic and safe "comfort stations" to prevent rape by American soldiers.)
    ====================================================================================
 Sadly, many women were made to suffered severe hardships during the wretched era during World War II, and it is with profound regret that we contemplate this tragic historical reality.
 At the same time, we must note that it is a gross and deliberate distortion of reality to contend that the Japanese army was guilty of "coercing young women into sexual slavery" in "one of the largest cases of human trafficking in the 20th century," as the House Resolution claims. After all, two-fifth of the approximately 20,000 ianfu during the war were Japanese women, as detailed in an academic paper by historian Ikuhiko Hata.
 We are interested, foremost, in sharing the truth with the American public. Criticism for events that actually occurred must be humbly embraced. But apologies over unfounded slander and defamation will not only give the public an erroneous impression of historical reality but could negatively affect the friendship between the United States and Japan. We ask only that the Facts be objectively regarded so that we may share a correct perception of history.
 Translation of an article demonstrating that there was no organized or forced recruitment: Misconceptions about comfort women and the Japanese military http://www.sdh-fact.com/CL02_1/31_S4.pdf
翻訳資料2          『 事 実 』
この有料意見広告の目的は史実を提示することである。
 4月末、「慰安婦に関する真実」を述べる趣旨の広告がワシントンポスト紙に掲載された。しかしその陳述における主張は「真実」とはほど遠く、それは「事実」に基づいていると言うよりも、むしろ「信念」の産物に見受けられる代物であった。
 民主主義国家の仲間、そして信頼できる強力な同盟国としてのアメリカ合衆国に対して、日本の人々は最高の敬意を払っている。
民主主義を実質的にオペレートするためには、言論・思想・学術研究そして信仰の自由は保証されるべきであり、その上で市民一人ひとりががそれぞれの適切な結論に達する事が出来る。それを可能にするためには、虚偽、歪曲、偏見や間違った情報ではなく、人々がいつでも正確な情報を入手出来ることが必要である。この意見広告の目的は、これまで十分明るみに出て来なかった「従軍慰安婦」に関する歴史的事実を幾つか提示し、ワシントンポスト紙の読者がそれぞれこの問題に関して考えを持って頂きたいと言うものである。
    ====================================================================================
事実1
 歴史学者や研究団体によって発見された如何なる歴史的な記録にも、女性達がその意志に反して日本軍によって売春を強制されたことを明確に示すものはない。戦時中の政府や軍幹部の指令を保管しているアジア歴史資料センターの記録でも、女性達が「イアンフ」又は「comfort
women (慰安婦)」として働くために、強制的に駆り集められたと示すものは何も探し当てる事は出来なかった。
 それとは対照的に、女性達をその意思に反して強制しないよう民間ブローカーに対して警告している文書が多く見つかっている。
 1938年3月4日付の陸軍省副官通牒2197では、軍の名義を不正に利用したり、誘拐と見なされる方法での募集を明確に禁止しており、そのような方法での採用行為は罰っせられていると警告している。1938年2月18日付の自治省指令(No.77)は、「慰安婦」の募集は国際法に従うべきで、女性の奴隷化や誘拐を禁じている。同年11月8日付の指令(No.136)は更に、21歳以上で既に売春婦として働いてる女性のみを「慰安婦」として募集して良いとの命令をしている。そこではまた、女性の家族や親類の許可を義務としている。
 一方「慰安婦」の数は20万人に及んだと主張している歴史学者(米国メディアでよく引用されている主張)は、この通牒が軍の積極的な関与の証拠であると考えている。
    ====================================================================================
事実2
 更に、これらの指令が責任を持って実行された事を示す多くの新聞記事が存在する。1939年8月31年付の朝鮮で発行された東亜日報の記事では、女性達を強制的にイアンフにしたブローカーが、当時日本の管轄であった朝鮮の地元警察によって逮捕されたニュースを報じている。これは日本政府が女性に対する非人道的犯罪に対して厳しく対処していたと言う証拠となるものである。
 悪徳紹介業者が跋扈 農村婦女子を誘拐 被害女性が百名を突破する 釜山刑事、奉天へ急行
 【釜山】満州において悪徳業者が貧しい家庭から報酬と引き換えに女性誘拐をしていたことが明らかになった[満州は、日本兵がこぞって売春宿に通っていたとの主張がされている所]。釜山に拠点を置く45の悪徳業者が摘発された。それらの業者は釜山で何も知らない若い女性を雇い、家族から引き離し、満州の売春業者に売り飛ばしていた。100人以上の女性が既に被害に会っている。釜山警察による徹底的な捜査で、奉天におけるこれらの業者の存在が明らかになり、6人の刑事が8月20日の夜に現地に向かいこれらの業者を逮捕した。今回の逮捕劇で、これらのブローカーの暗躍が完全に明らかになるものと予想される。
    ====================================================================================
事実3
 尤も、明確な規律違反のケースもあった。オランダ領東インド(現在のインドネシア)のスマラン島では、陸軍部隊が若いオランダ人女性の一団を強制的に「慰安所」で働かせるために駆り集めたと言う例がある。この事件が明るみに出た時、その慰安所は軍の命令で閉鎖され、更に関係した将校らは処罰された。これらの人物やその他の戦犯はオランダの法廷で死刑を含む厳しい判決が言い渡された。
    ====================================================================================
事実4
 マイク・ホンダ下院議員による決議案121や、その他の日本の「慰安婦」虐待に対するの告発の殆どが、元イアンフの証言によるものである。しかし当初の陳述には、彼女達が軍や日本政府機関によって強制的に働かされたことを証明するものは何一つなかった。
 それにも関わらず、反日キャンペーンの開始後、これらの証言は劇的な変化を遂げた。下院公聴会での最初のレポートでは、彼女等はブローカーによって連れ去られたとあるが、その後、誘拐した人物の服装を「警察の制服に見えた」と主張している。
    ====================================================================================
事実5
 日本軍に付随していたイアンフは、一般的に言われてるような「性奴隷」ではなかった。
 当時は国際的にも売春が合法であるのが普通であり、それらの慰安婦はそう言った認可制度の下で働いていた。実際、慰安婦の女性の多くは、将校や将官よりも多くの収入を得ていたとあり(米軍インド・ビルマ方面作戦部隊付米軍情報部心理作戦班APO689によると)、彼女達は好待遇を受けていたと言う事実を証明する多くの証言がある。
 女性達に対して暴力をふるって罰せられた兵士の記録もある。実際多くの国が民間人に対するレイプを防ぐために、軍隊のための売春所を設けていた(例えば1945年には、進駐軍は米兵によるレイプ事件を防ぐために、日本政府に衛生的で安全な「慰安所」を設けるよう要請している)
    ====================================================================================
 悲しい事に、第二次大戦中の不幸な時代に多くの女性が極甚な苦難に合い、この悲劇的な歴史事実を私達は深い遺憾の意を持って考える。
 同時に、下院決議案の「20世紀の最も大きな人身売買事件の一つ」として日本軍が「若い女性達を性奴隷に強制した」戦争犯罪者であると言う主張は、粗野で計画的な事実歪曲であることを私達は注意する必要がある。戦時中のおよそ2万人のイアンフの2/5は日本人女性であることは、歴史学者秦郁彦氏の研究論文で詳しく述べられている。
 アメリカの一般市民の方々と真実を共有する事が私達の第一の関心事である。実際に起こった事への批判は甘んじて受け入れるべきものであるが、根拠のない中傷や名誉毀損に対して謝罪することは、歴史的事実に関してアメリカ世論に間違った印象を与えるだけでなく、日米友好に否定的な影響を与えることになるかもしれない。私達が求めているのは「事実」が客観的に見られることのそのたった一点であり、そこで初めて正確な歴史認識が共有出来るようになる。
資料3 ワシントン・ポスト紙に意見広告『THE FACTS』を掲載した議員・有識者一覧
【自民党】
赤池誠章(比例:山梨1)、稲田朋美(福井1)、江藤拓(宮崎2)、大塚高司(京都8)、岡部英明(比例:茨城5)、小川友一(東京21)、鍵田忠兵衛(比例:奈良1)、亀岡偉民(福島1)、木原稔(比例:熊本1)、土井亨(宮城1)、戸井田徹(兵庫11)、平将明(東京4)、薗浦健太郎(千葉5)、鈴木馨祐(南関東比例)、杉田元司(比例:愛知14)、島村宜伸(東京16)、坂井学(神奈川5)、木挽司(兵庫6)、土井真樹(比例:愛知11)、西本勝子(四国比例)、林潤(神奈川4)、古川禎久(宮崎3)、松本文明(東京7)、松本洋平(東京19)、武藤容治(岐阜3)、中川義雄(参院北海道)、渡部篤(比例:福島4)、山本朋広(比例:京都2)、愛知和男(東京比例)
【民主党】
松木謙公(比例:北海道12)、笠浩史(比例:神奈川9)、牧義夫(愛知4)、吉田泉(比例:福島5)、河村たかし(愛知1)、石関貴史(比例:群馬2)、泉健太(京都3)、神風英男(比例:埼玉4)、松下新平(参院宮崎)、松原仁(比例:東京3)、北神圭朗(比例:京都4)、鷲尾英一郎(比例:新潟2)、田村謙治(比例:静岡4)
【無所属】
西村眞吾(比例:大阪17)、平沼赳夫(岡山3)
【教授】
福田逸・明治大学、遠藤浩一・拓殖大学、宮崎正弘・拓殖大学、東中野修道・亜細亜大学、荒木和博・拓殖大学、
島田洋一・福井県立大学、西岡力・東京基督教大学、藤岡信勝・拓殖大学
【政治評論家】
加瀬英明・外交評論家、西尾幹二・電気通信大学名誉教授、富岡幸一郎・文芸評論家、岡崎久彦・外交評論家
【ジャーナリスト】
青山繁晴・独立総合研究所首席研究員兼代表取締役社長、茂木弘道・世界出版社代表取締役
【上記コメントを支持する歴史的事実のための委員会メンバー】
屋山太郎・政治評論家、櫻井よしこ・ジャーナリスト、花岡信昭・政治評論家、すぎやまこういち・ミュージシャン、
西村幸祐・ジャーナリスト
資料4 慰安婦決議案要旨
 一、慰安婦制度は日本政府による軍用の強制的な売春で、20世紀最大の人身売買の一つ。
 一、現在の日本にはこの問題を軽視しようとする教科書もある。慰安婦問題で謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話を否定する世論もある。
 一、日米同盟はアジア太平洋地域の平和と安定の要。政治的、経済的自由の促進、人権、民主主義の尊重という価値観の共有に基づいた同盟であり続ける。
 一、第二次大戦中に日本軍がアジア太平洋地域を支配した時代に行った従軍慰安婦問題について、公式声明で首相が謝罪すれば今後、この問題が再燃するのを防げるだろう。
 一、日本政府は、日本軍が女性を性的奴隷にしたり人身売買に加担したことはないという主張の誤りをただすべきだ。
 ワシントン・ポスト紙に掲載された英文・和文は、ホームページより転載致しました。お礼を申し上げます。 
 翻訳資料2の出典は、Red Fox氏の「ワシントンポスト慰安婦問題意見広告 全文訳」です。重ねてお礼を申し上げます。
Red Fox氏の「ワシントンポスト慰安婦問題意見広告 全文訳」←クリック

index print home