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エピソード

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全国学力調査と大阪府の橋本徹知事の教育論・学力観
 橋本徹大阪府知事は、マキャベリストの中山氏に親近感を示します。
(1)この国会議員失格の中山成彬氏が「日教組の強い地域は学力が低い」と発言したことについて、橋本徹大阪府知事は「なかなか本質を突いている発言なんじゃないですか。(教員が学力テストに反対する)本質的な理由は、学力テストが『自分たちの評価につながる』と猛反対したから。教員も、真正面からこの問題を受け止めないといけない」と語りました(9月27日の毎日テレビ)。
(2)「民主党が政権を取れば、大阪府みたいになる。大阪府は長年、トップと職員組合がゆ着関係にありました。だから、あそこは職員の給与も高いし、ヤミ手当てもある」と、大阪府と大阪市を取り違えた発言をしました。これに対し、橋下知事は「細かな事実関係の認識の違いはあるが、中山議員からの僕に対する熱いエールだと思ってる」と話しました(9月29日の関西テレビ)。
 私は、弁護士の仕事や知事の仕事はよく分りません。
 そこで、教育に関する橋本氏(弁護士時代)や橋本知事の発言から、橋本知事の教育論・学力観を検証しました。
 まず、読売テレビの『そこまで言って委員会』での発言です。
(1)評論家の三宅久之氏が「扶桑社の教科書を採用するのに、皆んな賛成か。あれは0点何%しか採用がない」と発言すると、弁護士の橋本徹氏は「あの教科書は戦争は美化していないですよ」と答えました。
(2)再び、三宅久之氏が扶桑社の歴史教科書を取り上げました。弁護士の橋本徹氏は「神話がたくさん紹介されており、とても楽しく読めました。素晴らしい教科書だ」と賞賛しました。
*解説1:どの事実をもって、戦争を美化していないというのでしょうか。具体的の資料を出さずに決め付けることに恐怖を感じます。
 歴史とは、語源的には「人間社会が時間の経過にともなって過去から現在に至るまでうつり変わってきた過程(の中で見られる出来事)。また、その記録」をいいます。
 文学とは、語源的には「感情・思想などを言語によってあらわした芸術で、神話・小説・詩歌・戯曲・紀行・随筆など」をいいます。
 つまり、歴史は人間の事実(ノンフィクション)の過程を記録します。文学は人間の感情や考えを文字で表現した創作(フィクション)を扱います。ノンフィクションやフィクションの違いを理解せず、「扶桑社の教科書はよかった」という発言は噴飯物です。人気者がテレビという公器を使って自分の無知をさらけ出す。滑稽ではありますが、大きな影響力をもつだけに看過できません。
 橋本徹氏の経歴をみてみましょう。
 1969年、東京都に生まれました。
 1986年、16歳で、大阪府立北野高等学校に入学しました。
 1988年、18歳で、第67回全国高等学校ラグビーフットボール大会全国大会に出場し、後に高校日本代表候補に選ばれました。
 1989年、19歳で、1浪して早稲田大学政治経済学部経済学科に入学しました。
 1994年、24歳で、早稲田大学を卒業し、司法試験に合格しました。
 2003年4月、33歳で、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系列)にレギュラー出演するようになりました。
 2003年7月、33歳で、『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)でもレギュラー出演するようになりました。
 2007年5月、37歳で、『たかじんのそこまで言って委員会』で、「何万何十万という形で、あの21人の弁護士の懲戒請求をたててもらいたいんですよ」と山口県の光市母子殺害事件の弁護団に懲戒請求を行うよう視聴者に呼びかけました。
 2007年6月、写真週刊誌「FLASH」のカメラマンに無断で写真を撮られ精神的苦痛を受けたとして、発行元の「光文社」(東京)などに慰謝料30万円の支払いを求めて大阪地裁に提訴しました。
 2007年9月、山口県の光市母子殺害事件の弁護団4人は、1人当たり300万円の損害賠償を求めて広島地裁に提訴しました。
 2008年2月、38歳で、大阪府知事に当選しました。
 2008年7月、大阪地裁は「当時からテレビ出演していて全くの私人ではなく、取材は公共性があった。我慢の限度を超える利益侵害はなかった」と述べ、請求を棄却しました。橋本知事は控訴しませんでした。
 2008年10月、広島地裁は弁護士4人の主張を認め、1人当たり200万円の賠償を命ずる判決を下しました。
*解説2:大阪府立北野高校は進学校としても有名であり、ラグビーでも高校日本代表に選ばれただけに文武両道のエリートといえます。高校時代からのスーパースターは、24歳で弁護士となり、33歳でタレントとしても全国的に有名人となりました。
 その驕りか、無知で過激な失言が目立つようになりました。
 大阪地裁は大阪知事の提訴を棄却し、広島地裁は大阪知事に有罪判決を下しました。
 言論活動を命とする弁護士が、知事として訴えては敗れ、訴えられて敗れるという体たらくです。
 こんな大阪府知事の教育論・学力観を各新聞記事で探ってみました。 
橋下大阪次期知事が大胆提案、学力別クラス編成導入を(産経2008.2.2)
 2月6日に大阪府知事に就任する橋下徹氏(38)が平成20年度予算に、府内の小中学校などの教育現場での学力別クラス編成の導入を提案していることがわかった。
 綛山教育長は現実問題として「実際に学力別に分けると1クラス20人程度になり、クラス数が大幅に増える。現状の教員数では現実的ではない」と指摘。その上で「授業中、クラスを2つに分けて習熟度別に教えるなど、各市町村ごとに個別の取り組みもしている。学力別にクラスを編成するなら、必要な教員数など具体的な議論が今後必要になる」と話している。
 橋下氏は、@文部科学省の銭谷真美事務次官にも学力別クラス導入の意向を伝えたが、銭谷事務次官から難色を示されたという。
橋下知事指示 大阪府の私学助成削減を検討、聖域にメス(産経2008.2.9)
 2月8日、橋下徹知事の指示で、大阪府が約600億円に上る私学助成金の削減を検討することが分かった。
 府の裁量でカットできるのは約1000億円。この中で私学助成金は約600億円と最大の額を占める。
 これに対し、約160校が加入する大阪私立中学校高等学校連合会では「少子化が進み、毎年生徒数が減っている。もしかりに1割カットしても経営は立ちいかなくなるところも出てくる」と反発する。
橋下知事 大阪府立高校の学区制廃止を検討 府教委は苦慮(産経2008.2.9)
 2月8日、橋下徹知事は、府立高校の多様化を目的に学区撤廃の意向を示し、府教育委員会が対応に苦慮している。しかし学区制をめぐっては、今年度から従来の9学区を4学区に再編、施行したばかり。学区を撤廃すると「特定の学校に生徒が集中し、学校間格差が広がる」との専門家の懸念もあり、実現には多くの困難が伴うとみられる。
 東京都では平成15年度から都立高校の学区を撤廃。進学指導重点校に指定された日比谷高校が東大合格者数を増やすなど、進学実績や学校の多様化に一定の成果を上げた。他にも和歌山県などが学区を撤廃している。
橋下知事、35人学級見直し検討「予算使い道、他にも」(朝日2008年02月10日)
 2月9日、橋下徹知事は、府が単独事業として進めている小学校1、2年生での35人学級制度について「(学級編成を)40人から35人にするだけで30億円予算が増えている」とし、見直しも含めて府教委と議論する考えを示した。知事は、「30億円は他にも使い道があるのではないか」と疑問を呈した。
橋下知事が府教委に謝罪 「命じる」発言で(産経2008.3.10)
 3月10日、橋下徹知事は、先週の府議会代表質問で、「教員の評価をきちんとするように教育委員会に命じる」との趣旨の発言をしたことについて、「教育委員会に対して『命じる』という言葉を使ったことは知事として完全に間違っていた」と謝罪し、議事録からの発言削除も検討する意向を示した。この日の一般質問で答えた。戦前教育の反省から教育委員会は、地方自治法などにより政治的に中立な独立行政委員会と位置づけられている。
 橋下知事の府教委への「命じる」という発言は5日、自民党府議団の朝倉秀実幹事長の代表質問に答えた中で飛び出した。この発言について10日、民主党の中島健二府議に真意を正され、知事は「コメンテーターであればともかく知事という立場では絶対に使ってはいけない言葉」と答弁。「教育委員会の皆様方、どうもすいませんでした」などと3回にわたって謝罪するとともに「議事録からの発言の削除についても対応させていただきたい」とした。
*解説3:橋本知事は、「教育委員会に対して『命じる』という言葉を使ったことは知事として完全に間違っていた」と謝罪しました。
 ここで、橋本知事のために教育委員会のおさらいをしておきます。
(1)歴史的にみてみましょう。
1946(昭和21)年、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)要請でアメリカ合衆国からの教育使節団は、日本が戦争手段として軍国主義を学校教育に持ち込み、「天皇制」や「神道の教義」を「修身の教科書」などを利用したとして教育委員会の設置を勧告しました。
1948(昭和23)年、文部省は、教育委員会法により、教育行政の地方分権、民主化、中立性の確保という趣旨で、教育委員会を創設しました。地方自治体の長から独立した公選制・合議制の行政委員会で、予算・条例の原案送付権、小中学校の教職員の人事権も持っていました。不幸にも、初期から、首長や企業からは反対が多かった制度です。
1956年(昭和31年)、党派的対立が持ち込まれる弊害を解消するとして、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」が成立しました。その結果、公選制の廃止と任命制の導入が行われ、教育長の任命承認制度の導入、一般行政との調和を図るため、教育委員会による予算案・条例案の送付権の廃止を盛り込んだ地方教育行政法が成立しました。首長(知事・市町村長)などの任命制による中立性の崩壊など現在の教育委員会の問題は、ここに源があります。
(2)教育委員会の組織をみてみましょう(藤原 和博=前杉並区立和田中学校校長の文章を紹介します)。
・自治体には5人程度の「教育委員」がいて会をなし、その「教育委員会」の代表が「教育委員長」である。
・教育委員は学識経験者ではあっても、教育行政の専門家ではない。実際の教育行政は自治体の1、2フロアは占めるほどの人員を擁した「教育委員会事務局」が担う。そのヘッドが教育委員の1人でもある「教育長」だ。
・ほとんどの政策は、実際にはラインの長である教育長に率いられた教育委員会事務局が文科省や都道府県教委の顔色を見ながらつくってしまうから、教育委員の活躍の余地は極めて少ない。教育委員は、教育政策の方向性を決めるスタッフ的な役割をしているにすぎない。つまり、“名誉職”という色彩が強いのだ。
・教育委員会事務局は、教育長と教育次長で構成されますが、実務面ではは、教育次長や教育課長・指導主事などが全体を掌握します。
橋下行革の焦点 私立教員は公立より高給(産経2008.3.16)
 3月15日、大阪府内の府立高校と私立高校で教員の平均給与を比べると、私立の方が年間で約60万円(平成18年)高いことがわかった。私学をめぐっては、財政再建を進める橋下徹知事が年間600億円近い私学助成の削減を検討しているのに対し、私学側は「削減されれば授業料のアップにつながる」と反発を強めている。教員給与を含めた私学側の経営改善も今後、議論の焦点となりそうだ。
 ただ、教員1人あたりの生徒数は府立14人、私立17・8人で、単純に比べると教員の負担は私立の方が大きい。給与も「私立は進学など特色のある教育を行うため、優秀な教員を高待遇で招いている。その分、常勤・非常勤講師の比率を高くして人件費を抑えており、一概に高いとはいえない」(府私学課)という。
 府の19年度の私学助成は、約690の幼稚園・小中高校・専修各種学校に対し計約595億円。うち約500億円が教員給与などの経常費補助で、約75億円が保護者の所得に応じた授業料軽減助成となっている。
 生徒1人あたりの教育費は、府立、私立とも年間約96万円(18年度)でほぼ同額。府立はこのうち84万5000円が公費でまかなわれるのに対し私立は38万5000円で、46万円の差がある。
10 橋下知事「日本一の先生」募る(朝日2008年04月05日)
 4月5日、橋下徹知事は、大阪市中央区の府立青少年会館で開かれた来春採用の教員志望者向け受験説明会に出席し、「教育日本一をともにめざそう」と参加者に呼びかけた。
 午前10時からの部には約1200人が出席。笑顔で登場した橋下知事は「僕と府教委はいま、日本一の教育制度をつくろうと議論している。でも、日本一の教職員が集まらないとせっかくの制度も実践できない」と訴え、「教育から大阪を変えてやろうという熱い気概を持った人たちを歓迎します」と呼びかけた。説明会への出席は橋下知事が自ら望んだ。歴代の府知事で初めてという。
*解説4:橋本知事は、「教育日本一をめざすには日本一の先生が集まって欲しい」と訴えました。5月30日、大阪府教委は、給与月額で平均11・9%のカットを打ち出していることもあってか、今夏の教員採用試験の志願者数が、昨年の1万5302人から1272人減の1万4030人となった、と発表しました。志願者数が前年から1000人以上減ったのは9年ぶり。府教委は、「今後の採用計画を練り直さねば」と頭を抱えている(読売新聞5月31日)。
 大阪府の日教組組織率は約30%ですが、本年度の学力テスト結果は小中とも45位です。
 他方、日教組の組織率は約50%超ですが、本年度の学力テスト結果は小(1位)中(2位)です。
 秋田県の教育長は、「本県も非常に財政難ですが、知事や議会の理解もあり、平成13年度から少人数学習を導入し、のべ56億円を人件費に導入しています」と語っています。
 橋本知事の教育観と、秋田県知事の教育観の差を感じました。
11 橋下PTが府教委と1日激突 35人制学級廃止、時間教師の減給など激論必至(産経2008.4.29)
 橋下徹知事自身が「改革のメーンテーマ」と位置づける教育施策をめぐり、府教委との協議が行われる。
 来年4月に廃止する方針が示された35人学級制。義務教育へのスムーズな移行を目的とし、平成16年度から全公立小学校の1、2年生クラスで段階的に導入されているが、廃止となると1クラスあたりの上限は国が定める40人に戻る。公表直後から市町村教育長らから存続の要望が出され、現場の反発が特に強い項目だが、約550人の教員の給料が浮く計算になる。
 綛山(かせやま)哲男教育長は「『子供に落ち着きがみられるようになった』と教員、保護者の両方から評価されている制度。廃止すれば、せっかく出た成果が元に戻ってしまいかねない」。大阪教職員組合の辻保夫中央執行委員長も「小人数学級を増やそうというのが教育界の流れ。これに逆行するような動きは全国でも例がない」と案の内容を厳しく批判する。
*解説5:大阪府の綛山哲男教育長は、この段階では、橋本知事のパワハラにも屈せず、教育の中立の姿勢を維持しています。
12 「受験のための勉強がすべてではない」(産経2008.5.7)
 阪神家政高等専修学校(大阪市福島区)を視察。ファッション科の生徒のショーを見て「そのドレス。すぐにでも売れそう。材料費はいくら」などと質問。生徒に「大学受験のための勉強がすべてではない。手に職を付けることも重要」とエールを送る。
 報道陣の取材に応じ、「子供たちに多様な進路を確保するため、高等専修学校の役割をPRすることが必要だ」。
13 橋下知事、教員減らしどうする?(朝日2008年05月20日)
 5月19日、橋下徹知事は、同府吹田市の市立千里新田小学校を訪れ、1年生の35人学級の授業を見学した。
 35人学級は太田房江・前知事が小学1、2年での実施を公約し、07年度から府内の全小学校で実現した。知事直轄の改革プロジェクトチーム(PT)が、40人学級に戻すことで加配した教員を減らし、09年度だけで人件費30億円を減らす案をまとめ、府教委が「効果が上がっているのに」と反論している。
 図工と国語の授業を見終えた橋下知事は「1、2年生はきめ細やかな指導が有効だという先生方の声には合理性があると思った。ただ、予算の問題があるので、他の施策とも合わせて政治判断する」と話した。
14 橋下知事の支持率82% 過去最高に(産経2008.6.12)
 6月12日、産経新聞社が府内の有権者500人を対象に知事と府議会改革に関するインターネットによるアンケート調査を実施した。知事の支持率は82・6%にのぼった。
15 橋下知事 人件費、私学助成めぐり民主と論戦(産経2008.7.5)
 7月4日、大阪府の平成20年度本格予算案を審議する7月臨時議会が始まった。野党の民主が2月議会とは打って変わって橋下徹知事と淡々と論戦を繰り広げたのに対し、与党の公明は橋下知事の文化行政への考え方について、「大阪維新プログラム案は極めて非文化的。大阪ののれんに傷を付けるようだ。そのような傷を大阪にもたらす権限まで府民は知事に与えていない」と厳しく批判した。
16 私学助成で6倍以上の格差 「非常に問題」と橋下知事(産経2008.7.9)
 7月9日、大阪府の橋下徹知事が大阪維新プログラム案に削減案を盛り込んだ私立学校の経常費助成について、学校ごとに生徒、児童1人当たりへの配分額を算出したところ、学校間で最大6倍以上の格差があることが分かった。橋下知事は「非常に問題があると思う」としており、改善策を検討する方針を示した。
 答弁に立った南部英幸・生活文化部長は、高校(95校)で、最高69万7500円、最低10万9492円▽中学(60校)は最高71万9000円、最低13万7376円▽小学校(16校)は最高53万2404円、最低16万6862円−と配分額を明示。高校では約6・4倍、中学で約5・2倍、小学校で約3・2倍の格差が生じていることが明らかになった。
17 恵まれた私学を拒む“美学” (産経2008.7.28)
 1月19日、橋下徹氏は、母校の北野高校で個人演説会を行った。「府立高校の学区制を撤廃したい。これは公約です。まだまだ子供たちには競争が足りないんです」。学区をなくし、府内全域から優秀な子供を集めることで「公立エリート校」をつくる狙いだ。逆に、私学助成の削減をめぐる議論では「公立にはない付加価値を求めて入学するのだからお金がかかって当然」とあっさり述べ、実際に削減に踏み切っている。
 「弁護士でも、エスカレーター式で上がってきた人と公立でもまれた人とではえらく違う。私立一貫校の同質性の中で育つと、なかなか異質な人と接することはできにくいように思う」。
 これまでにも触れたが、橋下の中学は、本人も言うように「かなり荒れた学校」だった。その中で塾にもいかず、ラグビーを続け、「ワル」たちとともに過ごしながら難関を突破した橋下。15歳の春に芽生えた「自信」は相当なものだったのだろう。
 すでに恵まれた存在ともいえる「私学」は、彼の“美学”が受けつけないのではないか。
 弁護士時代、出身中学で講演会をした橋下は、真っ赤なポルシェで現れ、生徒らにこう訴えたという。
 「努力すれば、誰だってはい上がれるんです」
18 教育改革「提案するのはいつも僕」 橋下知事が教委批判(朝日2008年8月26日)
 8月25日、大阪府の橋下徹知事は、府の教育委員5人と報道陣の前で懇談した。委員が口にした学力向上策や教育改革について納得せず、「ビジョンが全く感じられない」とその場で厳しく批判する場面もあった。
 知事は具体的でないと受け止めたのか、「放課後学習や習熟度別授業など、提案するのはいつも僕じゃないですか」と声を荒らげた。
19 【学力テスト】「このザマは何なんだ」橋下知事が大阪府教委批判(産経2008.8.29)
 橋下徹知事は「教育委員会には最悪だと言いたい。これまで『大阪の教育は…』とさんざん言っておきながら、このザマは何なんだ」と述べ、府教委を厳しく批判した。
 今月6日に府特別顧問に就任した東京都杉並区立和田中学校前校長、藤原和博氏は「全国第2の都市としては考えられない結果。先生方は熱心で頑張っていると感じるが、システムが成り立っていないのだと思う」。「先生方の熱意が効果を発揮するシステムを作れば大阪でも不可能ではない」との見方を示した。
20 「夜スペ」の藤原氏起用をめぐり「不協和音」 橋下知事と府教委(産経2008.8.29)
 藤原和博氏(52)の特別顧問としての活動が本格始動した。ただ、今回の人事をめぐり橋下知事は、府教育委員会を「抵抗勢力」ととらえる発言を繰り返しており、知事部局と教委の不協和音を抱えながらのスタートとなった。
 「藤原先生の就任に府教委は強烈に反対したと聞いている」
 これに対し生野照子教育委員長は「反対しましたか?」と困惑顔。さらに「藤原先生の起用を私たちは新聞報道で知った。大阪で何をどうするつもりか聞かなければ賛成も反対もできない」と述べ、逆に知事の独断専行ぶりを批判した。
21 橋下知事「学力調査の市町村結果、公表すべし」(朝日2008年8月31日)
 8月30日、大阪府の橋下徹知事は、全国学力調査で大阪府が昨年に続いて下位だったことに触れ、市町村ごとの結果を公表するよう府教委に「指示する」との意向を示した。A文科省は「過度の競争を招く」として、都道府県教委に対して、市町村や学校別の結果を公表しないよう通知している。
 橋下知事は子育てをめぐるシンポでのあいさつで、大阪の結果低迷の一番の問題点として、市町村ごとの結果が公表されず、府民の目に触れないことを指摘。「市町村の教育委員会は甘えている。結果が表に出ないから」と話した。ただ、学校別の結果の公表については、「競争になる」と慎重な考えを示した。
22 橋下知事、教育委員再任しない意向 シンクロの井村氏ら(朝日2008年9月2日)
 9月2日、大阪府の橋下徹知事は、現在の府教育委員会委員のあり方への不満から、9月末で任期の切れる教育委員2人を再任しない意向を明らかにした。任期満了となるのはシンクロ中国代表ヘッドコーチを務めた井村雅代氏(58)と元毎日新聞大阪本社代表の木戸湊(あつむ)氏(69)の2人。
 再任しない理由について、橋下知事は、「全体のビジョンが何も感じられなかった」と指摘。「事務局からは『再任でお願いします』と言われたが、そんなことをやっているから、今の教育委員会みたいになってしまう」と批判した。
23 橋下知事、大阪府の「教育非常事態」を宣言(産経2008.9.5)
 大阪府の橋下徹知事は5日の記者会見で、全国学力テストの成績が2年連続で低迷したことを受け、「府の現状について『教育非常事態宣言』を発する」と述べ、教育力向上への取り組みを徹底する考えを示した。
 橋下知事は「府教育委員会が前回の(学力)テスト後に『方策を取る』と言ったのに、全く改善されなかった」と理由を説明。「教員が逃げているだけ」として、正答率も含めた学力テストの市町村別結果を公表する必要性を強調した。
 「学校に全部任せるのをやめて、地域や家庭に教育の責任を持ってもらう」と指摘。さらに、「駄目教員は去ってもらう」として、不適格教員に対する分限免職の厳格な適用を府教委に求めると述べた。
 9月末で2人が任期を迎える教育委員に絡んで「僕の考えに共鳴する人に多数を取ってもらいたい」と述べた。
24 学力テスト成績公表は「序列化招く」 戸惑う大阪府の市町村教委(産経2008.9.6)
 「公表しない市町村は逃げている」。全国学力テストの市町村別成績公表を迫る大阪府の橋下徹知事。テストの分析を示すなどして平均正答率の公表を避けてきた各市町村教委の担当者らは、「国や府教委は『序列化を招かないように』と求めてきたではないか」と戸惑いを見せている。
 泉佐野市教委の担当者も「数値は公表できない。数字が独り歩きして競争があおられる」と困惑している。
25 学力検査の結果公表めぐり「府教委は解散」 橋下知事(朝日2008年9月6日)
 9月6日、橋下徹知事は、「市町村教委が公表しないとか自由にやるなら、府教委は解散する」「府は義務教育から引く」「(全国学力調査を担当する府教委の)小中学校課には予算をつけない」などと発言した。
 地方自治法では「普通地方公共団体に置かなければならない委員会」として教育委員会が最初に挙げられている。橋下知事はフォーラム後、報道陣に「あくまで表現の方法。市町村教委への指導・助言が無視されるような存在意義のない小中学校課は要らないということ」と説明した。
26 橋下知事、今度は「PTA解体」?(産経2008.9.6)
 9月6日、橋下知事は、記者団に“PTA解体”について「(実際に)僕ができるわけではない」と前置きした上で「今のPTAが機能していないからこういう状況になった」と批判。制度の見直しの必要性に触れ「とにかく今の教育現場は形式的すぎる」と述べた。
27 橋下知事、ラジオで「クソ教育委員会」 学力調査巡り(朝日2008年9月7日)
 9月7日、橋下徹知事は、ラジオの公開生放送で「あのクソ教育委員会のメンバーが、過度な競争が生まれるという理由で発表しない」と発言した。
 橋下知事は放送後も、報道陣に対し、公表・非公表の市町村教委によって来年度の予算編成で「差をつける」と述べた。一例として、府が年間30億円負担し維持する公立小学校での35人学級編成について、非公表の教委に「費用は出す必要はない」と主張。「府がつける予算は府の判断、責任でやる」と話した。
28 橋下知事「自主的に公表しないと予算つけぬ」 学力調査(朝日2008年9月8日)
 9月8日、橋下徹知事は、報道陣に対し、教委が情報公開請求により結果を開示したとしても、「自主的に公開したとみなさない。予算をつけるときは『非公開』と判断する」と話した。
29 橋下知事、学力テストをめぐる発言“トーンダウン”(産経2008.9.8)
 9月8日、報道陣の取材に応じた橋下知事は、「予算執行権をちらつかせて市町村の裁量を狭めるのは、知事が目指す地方分権に反するのでは」との質問を受け、「住民や首長が(データを)開示していいと思っているのに、教育委員会が非開示と判断できるのか」としたうえで、自らの発言については「確かに問題があるかもしれないので、ちょっと考えを整理して、また会見で意見を言いたい」と述べた。
30 橋下知事の重なる過激発言、与党からも「行きすぎだ」(朝日2008年9月9日)
 大阪府北部の市の教育長は「恫喝だ」と憤慨する。「文科省の言う通り序列化につながるし、知事発言を認めてしまえば、今回に限らず、今後の教育問題に影響を与えてしまう」
 知事を擁立した自民府議は「タレントで生き残ってきたため、常に注目を浴び続けなあかんという強迫観念がある。泳ぎ続けないと死んでしまうマグロみたい」と分析。今回は「行きすぎ」としたうえで、「傍若無人の独裁者を続けて、周囲の協力を得られなくなって一番困るのは自分やのに」と心配する。
 報道陣から「予算をちらつかせて市町村を従わせるやり方は中央集権的」と批判されると、「やり方としてまずいというのなら変える」と述べ、教委を動かす手法の変更に含みを持たせた。
 元鳥取県知事で慶応大教授の片山善博さんは、予算権を盾に圧力をかけようとした手法を「まさにファッショだ」
 元吉本興業常務でフリープロデューサーの木村政雄さんは「同じパターンで攻めるだけでなく、硬軟取り混ぜてアプローチしないと。強く当たるだけでは現場を萎縮(いしゅく)させ、改革の効率が悪くなるだけだ」と話す。
31 学テの市町村別データ公表を要請  大阪府教委(産経2008.9.10)
 9月10日、府教育委員会は、市町村教委の教育長らを府庁に集め、成績を開示するよう正式に要請した。市町村側からは「知事の要望は脅しのようだ」「公表すれば競争や序列化を招く」などと反発が相次ぎ、綛山(かせやま)哲男・府教育長が「混乱を招き申し訳ございません」と謝罪する場面もあった。
 豊中市の山元行博教育長が「脅しともとれる知事の主張に屈するかどうかの判断を迫られている。知事の真意は何か」と質問。和泉市の馬越かよ子教育長も「『公表しない教委は甘えている』という知事の発言は許せない」と府教委側に詰め寄った。
 綛山教育長は「知事のきつい表現は教委への叱咤(しつた)激励だ」と釈明した。
 橋下知事は会合前に行われた定例会見で「僕が公表にこだわるのは、教育委員会の尻に火が付くから。これで市町村教委も必死になってくれるのではと思う」と述べた。
*解説6:橋本知事のパワハラに屈した大阪府教育委員会は、市町村教委の教育長らを府庁に集め、成績を開示するよう正式に要請した。市町村側からは「知事の要望は脅しのようだ」「公表すれば競争や序列化を招く」などと反発が相次ぎ、綛山哲男・府教育長が「混乱を招き申し訳ございません」と謝罪する場面もあった。
 前任の知事に任命され、議会で承認された教育長です。新任の知事の意向によって、苦悩する姿が読み取れます。まさに、行政の圧力によって、教育の中立性が犯される経過が映画のように理解できます。
32 市町村教委事務局を「そんなやつら」 橋下知事が酷評(朝日2008年9月11日)
 9月11日、大阪府内43市町村の教育長らが反発している問題で、橋下徹知事は、報道関係者に「猛反発しているのは教育委員会の事務局長。全部、教員の代弁者なんですよ。そんなやつらに(公表、非公表の)権限を渡していいのか」と述べ、市町村教委事務局を酷評した。
33 「事務局が言うこと聞いてくれない…」学テ公表めぐり教育委員長が橋下知事に直訴(産経2008.9.12)
 9月11日、大阪府の生野照子教育委員長が、橋下知事と会い、「公表について話し合う教育委員会議を早急に開きたいが、事務局が応じてくれない」と不満を伝えた。
 府教委総務企画課は「今月初めに生野委員長から要請があったが、委員の日程調整がつかなかった」と説明している。
*解説7:ここでは、橋本知事のパワハラに屈した教育委員長が「公表について、事務局が応じてくれない」と哀れな姿を晒します。私なら、私の信念にかけて、相手のパワハラと戦うでしょう。橋本知事もそんな骨太の人間を欲しているはずです。こんなことでは、本当に子どもを守ることが出来るのでしょうか。
 教育長を含め、教育委員を束ねるのが教育委員長です。事務局は、教育長と教育次長で構成されますが、実質は教育次長が権限を握っています。その下に課長や指導主事がいます。現場のことを最も知っている人々です。 
 橋本知事の早く結果を数字で出したいという成果主義も分らないではありません。
 しかし、人間関係がズタズタです。教育以前の問題です。教育は、信頼関係で構築されます。橋本法律事務所のように経営方針では、学校教育はできません。
34 橋下知事、「市町村教委は関東軍みたい」 テレビで批判(朝日2008年9月15日)
 9月14日、橋下徹知事は、民放のテレビ番組に出演し、全国学力調査の結果の公表を求める橋下知事に反発する市町村の教育委員会について「中立性の名の下に、自分たちの領域は神聖不可侵なんだという本当に恐ろしいような状態。関東軍みたいになっている」と述べた。
35 【橋下改革第2弾、学力テストあなたの意見は?】(9)公表し分析 福山市の試み(産経2008.9.12)
 「序列化や行き過ぎた競争を招く」として全国学力テストの成績を非公開とする市町村教育委員会は多いが、ホームページなどで成績を広く公表している都市もある。広島県福山市である。
 この中の市立内海中学校は全教科で全国平均を上回っていたものの、「『数と式』の分野に限れば県平均より低い」といった課題を掲げ、「不足している計算練習を充実させる」などの対応策を示している。
 国崎昌英教頭(50)は「分析によって、身につけさせるべき学力が明確になった。それを保護者や地域に広く知ってもらうことで協力も得やすくなりました」。
36 【橋下改革第2弾、学力テストあなたの意見は?】(10)行き過ぎはないか? 教育委員会の中立性(産経2008.9.16)
 法律的に知事や市町村長から独立した機関と位置づけられている教育委員会。橋下知事は「その中立性は守らなくてはならない」としながらも、「外部の批判にさらされない組織は消滅して当然だ」「教員出身の事務局員が結果公表に反対している」と繰り返し主張している。
 大阪府内の市で教育長を務めていた70代の男性はこんな手紙を寄せた。
 市教委の部長時代、勤務時間中の小学校教員がスーパーで買い物をしているという保護者からの電話があった。校長を通じてこの教員に事情を聴くと、「授業に必要なものを買いにいっていた」と反論され、「電話をした保護者はだれだ」と抗議まで受けたという。それでも《「現場を知らない者が…」という錦の御旗を前に、「保護者に誤解を与えることがないように」と言うのが精いっぱいだった》
 たしかに、教員の仕事は行政職とは大きく異なる。一朝一夕に成果が出るものではないし、数値で結果を示すことも難しい。「現場を知らない者」から教員を守ることは当然必要だろう。
37 「橋下知事は教育介入を」 府内市長から共感、賛同(朝日2008年9月17日)
 9月17日、首長が介入できない教委制度そのものを疑問視する橋下知事に対し、各市長は「知事には教育に介入してほしい」「教委に指示できず隔靴掻痒の思い」など、知事に共感する意見が相次いだ。知事が主張する全国学力調査の市町村別の結果公表の是非についても、大半が賛同した。
 最後に橋下知事は「文科省は自分の判断がすべてだと考え、おごっている。地方分権すればするほど、教育委員会の中立性は薄まるべきだと考えている」と持論を述べた。
38 「結果公表の前に支援を」 大阪府教委で井村雅代氏 (共同通信2008年9月18日)
 9月18日、大阪府教育委員会は、橋下徹知事が全国学力テストの市町村別結果の公表を求めてから初めて教育委員会の定例会議を開いた。6人の委員のうち北京五輪でシンクロ中国代表ヘッドコーチを務めた井村雅代氏は学力テストの市町村別結果の公表について「反対ではないが、市町村が公表する前に府教委は何をサポートするのか詰めるべきではないか。(そうしないと)悪い方の波紋が広がる」と指摘した。
39 「橋下知事はテレビ中毒」 退任会見で大阪府教育委員2氏が反論(産経2008.9.18)
 9月18日、橋下徹知事が「教育ビジョンがない」と批判し再任を拒否した府教育委員の井村雅代氏(58)=北京五輪シンクロ中国代表ヘッドコーチ=と、木戸湊(あつむ)氏(69)=元毎日新聞大阪本社代表=が、今月末の任期満了を前に退任会見を開いた。
 木戸氏は「私は『再任は結構です』と事務局に伝えていた。なのに知事が『ビジョンがないから再任しない』と言い出すとは…。失礼、無礼だ」と切り出した。
 井村氏も「私たちが取り組んだ府立高校再編の結果、公立高校に行きたいという子供は増えている」と主張し、「知事は教育行政がどうあるべきかをまったくご存じない」と語気を強めた。
*解説8:教育委員会の任命承認制度の弊害が如実に露呈されました。前知事が新任していた委員を現知事は罷免し、自分の気に入った委員を任命します。後任の知事がまたまさ自分の気に入った委員を任命します。
 産経新聞(9月19日)は、「全国学力テストに公立学校が唯一不参加の愛知県犬山市で、参加を主張する田中志典市長に立場が近い市立中学元教頭(67)を教育委員に任命する人事案について、市議会は賛成多数で同意した。その結果、委員6人のうち市長派が4人となり、形勢が逆転する」と報じています。
 知事が変わるたびに、方針がコロコロ変わり、その結果、教育現場は大混乱をきたします。そのもっともの被害者は児童・生徒です。
 教育委員会の公選制を求めるものです。
40 学力テスト問題、大阪・堺、東大阪、箕面の3市教委が公表へ(産経2008.9.19)
 9月18日、大阪府の堺、東大阪、箕面の3市教育委員会は、全国学力テストの結果を公表することを決めた。
 箕面市教委の小川修一委員長は「平均正答率を活用することが必要で、公表すれば学校と地域が協力して取り組むことができる」と述べた。
 堺市教委の阪之上清以彌委員長は「公表は橋下徹知事の考えとは、まったく関係ない。公表によって保護者に今まで以上に関心を持ってもらえる」と独自の判断を強調。
 東大阪市教委は「学校ごとの公表は望ましくない」との付帯意見を付けた。
41 橋下知事に宣戦布告。教育は点数だけではない―吹田市長(朝日2008年9月19日)
 9月19日、吹田市の阪口善雄市長は、記者会見し、「公表の雪崩現象が起きている」とし、「教育の本質の論議が失われている。アホな大騒ぎにつきあっていられない。点数だけで評価できないのは自明の理。学校が塾になりかねない」「うちはいじめられても大丈夫。点数だけが正しいという風潮に警鐘を鳴らしたい」と持論を述べた。
42 学力調査、吹田市教委が非公表決定 「序列化の危険」(朝日2008年9月24日)
 9月24日、吹田市の田口省一教育長は、記者会見で「数値の公表は序列化・過当競争化という危険な要素をはらんでいる」と述べた。
43 橋下知事「吹田の子どもかわいそう」 学力調査非公表で(朝日2008年9月24日)
 橋下知事は、「吹田の市長さんは教育に関して理解がない。吹田市民の子どもたちがかわいそう」と報道陣に話した。阪口市長の姿勢を「点数だけにこだわらないなんて言っている時代ではない。もっと冷静に、教育について勉強していただきたい」と酷評する一方、「それも住民が選んだ首長さんだから仕方がないと思う」とも述べた。
44 橋下知事、“盗撮”謝罪せず、「当然、と府民に喜ばれる」(産経2008.9.26)
 9月26日、9月定例府議会の代表質問で、民主会派の北口裕文議員が「施設内はカメラの持ち込みと撮影を禁止する規則があるのに、知事ならやぶってもいいのか」と謝罪を求めた。これに対し、橋下知事は「規則は館内の本の著作権保護を目的にしたもので、今回は館内の現状を把握することが目的なので規則違反には当てはまらない」「謝罪するつもりはない。むしろ当然の行為と府民から喜ばれると思う」と応じた。
*解説9:学校現場で、生徒の喫煙行動が問題となります。生徒に「チクラせる」という方法もあります。教室を盗撮するという意見もあります。しかし、先生と生徒の信頼関係で学校教育は成り立っています。言葉による説得により、対策をたて、効果を求めます。早く成果を出したい橋本知事には、「だるい」ことでしょうが、これが教育なのです。棺桶を足を突っ込む瞬間に、その場面を思い出せばいいのです。教育はトータルで考えるのです。
 部下が本当に働いているかを盗撮するという行動には、部下の言動を信頼していないからです。「府民が喜ばなければ、政策を中止するのですか」と問えば、橋本氏の理論は簡単に崩壊します。
45 吹田市議が橋下知事に公開請求 学力テスト市町村別データ(産経2008.9.29)
 9月29日、吹田市の藤木栄亮市議(自民)ら同市議3人が、知事に対し情報公開請求を行った。B文部科学省の意向を踏まえ、府教委は情報公開請求を受けても市町村別の平均正答率は明らかにしていない。都道府県レベルで市町村別データが公表されたケースはない。しかし、橋下知事はこれまで、「(C文科省方針に)僕が縛られる必要はない」と発言しており、判断が注目される。
46 橋下知事が「PTA解体」発言撤回(産経2008.9.30)
 9月30日、橋下徹知事は、9月6日に開かれた日本青年会議所主催のフォーラムでの「PTAは解体する」との自身の発言について、「先日、子供の運動会に行ったが、PTAの皆さんが一生懸命、運営をしてくださっていた。もし僕の一連の発言でPTAの方にいろいろ不快な思いをさせたのであれば、その部分はすべて撤回する」とした。
*解説10:橋本知事は、テレビタレント時代のように、無知で根拠のない発言をして、撤回しています。タレント時代はそれが「キャラ」として支持されていましたが、こういう朝令暮改の上司に仕える府の職員の心境に同情します。精神的に疲れ果てた行政から、どんな結果がでるのか、楽しみです。
47 50%超が授業料値上げへ 助成削減で大阪の私立小中高校(産経2008.9.30)
 9月30日、大阪府は、橋下徹知事が打ち出した私立学校経常費助成削減の影響について、府内の全私立学校を対象に実施したアンケート結果を発表した。回答を寄せた小中高校の54・6%(83校)が「授業料の値上げを検討している」とし、値上げ時期のめどについては約8割の65校が「来年度」と答えた。
48 学力向上へ橋下色、「百ます」陰山氏ら教育委員に 大阪(朝日2008年10月1日)
 10月1日、橋下徹知事は、府教育委員に立命館小学校副校長の陰山英男氏と元大阪市立中学校教諭の小河勝氏を任命し辞令を交付した。橋下知事が選んだ教育委員の就任は初めてで、低迷する全国学力調査の成績向上をめざす橋下色が鮮明になった。
 6人いる教育委員をめぐり、橋下知事は「ビジョンがない」「お飾りだ」と批判、4年の任期が切れる2人を再任しなかった。「百ます計算」などで知られる陰山氏と小河氏の起用で基礎学力の定着を目指している。
 陰山氏は「緊急の対応が必要。三たび子どもたちに悪い成績を取らせるのか。受験テクニックもどんどん教えていい。学力は1年で必ず伸びる」と意気込んだ。一方で小河氏は「教職員と相互理解できればおのずと解決策が見えてくる。なぜこれほどの学力問題が起きたのか、先生たちとの合意形成に走り回りたい」と語った。
*解説11:あの陰山メソッドを提唱していた陰山英男という人が、2006年4月から立命館の教授になりましたね。私は、以前から、「20年後でなければ、奴隷的拘束下における競争的百桝計算は、メソッドとは言えない」「中学・高校生なら、陰山メソッドを強制したら暴動が起こりますよ」と指摘していました。
 山口小学校や朝来郡や兵庫県で支持者が今もいるはずですが、学校として実践しているところはありません。
 土堂小学校のHPには、百桝のことに関して一片の写真も一言の説明もありません。
 向山洋一氏は、「考えない頭→考えられない頭」を作る。このことは「デキル子」にも「出来ない子」にも当てはまると指摘しています。
 佐々木かをり氏は、「公立小学校を支持している人たちからすると、陰山先生も、ついに、公立の限界を感じて私立に?なんて思っているのではないかと想像するのですが」とずばり切り込まれています。
 奴隷的な状態で競争を煽り、その限界を知って、公立を切り捨てた陰山氏に、大阪府の公立の再生をかけるという橋本知事の矛盾した学力観がよく分りました。
 秋田県では、少人数学級を導入し、出来る子には出来る制度、じっくり考える子にはじっくりの制度をつくり、子どもの意志で教室を選択させるシステムを構築しています。ここでは、学力テストで上位に入る指導はしていません。膨大な予算を計上し、豊な人材を駆使して、その結果としての全国1位なのです。
 大阪府の橋本知事の学力観には全く見られない地道な取り組みです。
エピソード日本史(エセ陰山メソッドの検証)←クリック
49 橋下知事が公約を取り下げ 駅前などの保育所整備 (産経2008.10.1)
 10月1日、橋下徹知事は、9月定例府議会の一般質問で、選挙公約に掲げた、一時預かりを行う保育所を駅前や駅構内に整備する事業について、「取り下げる」と述べた。
 橋下知事は今年1月の知事選の公約で、駅前や駅構内に一時預かりを行う保育所を100カ所設置することを目指すと明記していた。
*解説12:選挙公約まで取り下げました。
50 鳥取・南部町の学力調査結果開示 文科相「違反」と指摘(朝日2008年10月7日)
 10月7日、鳥取県南部町の教育委員会が、全国学力調査の学校別平均正答率を情報公開請求した住民に開示した判断について、塩谷文部科学相は、閣議後会見で「開示請求に対して公表することはあってはならないこと」と述べたうえで、同省が定めた調査の実施要領との関係についても「違反といえば違反」と指摘した。
 実施要領では、学校が自校の結果を公表することは認めているが、市町村教委が学校別の結果を公表することは「序列化を招く」などとして禁じている。
51 橋下知事「文科相は論理むちゃくちゃ」 学力テスト公表(朝日2008年10月8日)
 10月8日、全国学力調査の学校別平均正答率を開示した鳥取県南部町の教育委員会に対し、塩谷文部科学相が「公表はあってはならない」と批判したことについて、大阪府の橋下徹知事は、報道陣を前に「学校別を出そうが市町村別を出そうが、市町村が判断することは全然問題ない」と反発、「おかしいですよ。論理がむちゃくちゃ」と憤った。
 文科省が「序列化を招く」として学校別結果の公表を実施要領で禁じていることについては、「教員の評価につながるから、公表したら教員が大反対闘争を起こすので、(文科省は)いろんな理屈をつけて公表を抑え込んでいる」と指摘。「もう破綻(はたん)ですね。国が決めたルールが地方の実情に応じて変えられるいい例ができた」と語った。(春日芳晃)
*解説13:全国学力調査を導入する際、以前の学力テストの弊害を除去し、全国の小中学校に参加を求めるため、実施要領に「序列化につながらない取り組みが必要」とあります。この約束事により、全国の小中学校は参加したのです。一知事の専権で、この約束事が破られることがあっては、ルールを作った意味がありません。
 しかし、こうしたことが既成事実となって戦争への道に進んでいった戦前の情景が追体験できます。
52 資料1:文科省の全国学力調査に関する実施要領(調査結果の取扱いに関する配慮事項)
 調査結果の取扱いについて配慮すべき点は、以下のとおりとする。
ア  調査結果の公表にあたっては、本調査の結果が学力の特定の一部分であることを明示すること。
イ 本調査の実施主体が国であることや市町村が基本的な参加主体であることなどにかんがみて、都道府県教育委員会は、域内の市町村及び学校の状況について個々の市町村名・学校名を明らかにした公表は行わないこと。
 また、市町村教育委員会は、上記と同様の理由により、域内の学校の状況について個々の学校名を明らかにした公表は行わないこと。
ウ 市町村教育委員会が、保護者や地域住民に対して説明責任を果たすため、当該市町村における公立学校全体の結果を公表することについては、それぞれの判断にゆだねること。また、学校が、自校の結果を公表することについては、それぞれの判断にゆだねること。
 ただし、本調査により測定できる学力は特定の一部分であることや、学校評価の中で体力なども含めた教育活動の取組の状況等を示し、調査結果の分析を踏まえた今後の改善方策等を併せて示すなど、序列化につながらない取組が必要と考えられること。
橋本知事に期待する
 文科省も人が悪い。橋本知事は、大阪府の学力テスト下位を材料に、大阪府の教育委員会を抵抗背力に仕立て上げ、小泉流の小泉劇場で大見得を切ってきただけに、この段階の、この発言は、人気喝采の人気俳優の振り上げた刀を下ろしかねてまごつく大根役者に仕立てるのに、最大の効果はあります。
 しかし、新聞記事を冷静に読んでみると、文科省は、一貫して橋本さんの方針に否定的な見解を出しています。しかし、橋本さんは、「(文科省の方針に)僕が縛られる必要はない」と発言しております。
 弁護士である橋本さんが法律を曲げてでも、推進しようつするエネルギーには感心します。
 私たちは、以上の経過から、何を学ぶべきなのでしょうか。
 総論である「学力とは何か」という定義がないまま、各論の「学力調査結果を公表するか否か」の議論に入っています。教育を語る場合、冷静に、原点に返って、「学力」を定義すべきです。
 『広辞苑』では学力を「@学習によって得られた能力。A学業成績として表される能力」と定義しています。
 学力を「@学習によって得られた能力」ととらえるか、「A学業成績として表される能力」ととらえるかによって、その後の各論に影響します。
 橋本知事は、「A学業成績として表される能力」説で、学力を「ペーパーテストの結果」と固定的にとらえています。ペーパーテスト重視して競争すれば、必ず上位と下位に分かれます。下位組の挫折感・トラウマが若者から夢を奪って、大人になっても「パラサイト」から脱出できない現在の社会を誕生させています。
 私は、「@学習によって得られた能力」の立場です。そこで、『広辞苑』で学習を調べると、「過去の経験の上に立って、新しい知識や技術を習得すること」とあります。過去の経験を重視する訳ですから、パーパーテスト以外の要素を重視しています。
 私たちの子どもの頃は、運動もしない、親の手伝いもしないで、ペーパーテストの結果がいい生徒を「アホ」扱いしていました。当時の社会は、価値観が多様化しており、色々な形の「一人前」(自活できる能力、妻子を養う能力)がいました。私は、一人前こそ真の学力だと信じています。
 橋本知事の言動の中で「クソ教育委員会」と表現された教育委員会を感情論でなく、法的位置づけで考える必要があります。
 教育委員会は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に基づいて設立されています。
 地方公共団体における教育行政は、「教育基本法」の趣旨にのつとり、教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない(基本理念)。
 委員は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有する者で、人格が高潔で、教育、学術及び文化に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が、議会の同意を得て、任命する。
*解説14:教育委員会は、国会の議決で決定された法律によって、設置されたので、大阪府レベルの条例で左右できるものではありません。
 次に、教育行政は、教育の憲法(教育基本法)に基づいて、教育の機会均等・教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興を図るものです。
 教育委員は、シンクロでは世界的に有名な井村雅代氏(橋本知事により再任否定)など教育や行政の専門家ではないが、教育・学術及び文化に関し識見を有する人が知事などより任命されます。そして、相互協力の下、公正かつ適正に、総合的な見地から基本方針を決定するのです。文科省や知事等のいいなりでは、法の趣旨に反しますので、教育の政治介入を阻止し、教育の中立性を確保する機関となっているのです。
 弁護士でもある橋本知事は、法律が保障する教育の中立性を犯してはいないでしょうか。
 教育は当然のことですが、政治・政策は信頼関係があって、成功します。
 信頼関係のない強権的・独裁的な政治・政策は、一時的に恐怖心に恐れおののいて、妥協したり、服従する形で成果を挙げるでしょうが、面従腹背の成功は、真の成功ではありません。陰山メソッドのように、直ぐに破綻します。「一将功なって万骨る」の例のように、自分だけ栄達しますが、残されたものは悲惨なものです。
 井村氏を再任せず、陰山氏を任命した橋本知事のねらいは、「市町村を競わせて、学力向上をはかる」ということでしょうが、陰山氏の方法論は既に破綻しています。橋本氏の奴隷的拘束状態で、競争を煽るのでしょうか。
 橋本知事も、大阪府をかき回して、途中で、敵前逃亡しても、橋本さんには元知事という経歴がつきます。タレント業務には格好の資格です。しかし、残された府民や子どもたちの心はどうでしょうか。
 秋田県の例を見るまでもなく、基本的な生活習慣をがあり、地域と学校、保護者と先生の信頼が厚い地域ほど「学力」は高いことは当然です。橋本知事に「1回に60億円も投資する学力テストの費用を、人件費に投資するよう」声を大にして叫んで欲しいと思います。
 鳥取県議会は、学力テストについて県教育委員会に開示するよう求める決議を賛成多数で可決しました。他方、中永広樹・県教育長は「今は司法の判断を見守りたい」と話しています(10月14日)。
 大阪府吹田市の阪口善雄市長は、市町村教委に自主的な公表を強く求める橋本知事に、「アホな騒ぎにつき合ってられない」「補助金に格差をつけるような発言をしている。非常に危険な考えだ」と改めて批判し、もし非公表を理由に知事が吹田市の教育予算を削るなどした場合、「訴訟も選択肢としてある」と話しました(10月14日)。
*解説15:もし、訴訟となると、訴える方も税金を使うし、訴えられる方も税金を使います。政治が教育に介入し、教育が政治に振り回される悲劇を私たちは、税金を払って、見ることになるのです。
 今からでも遅くありません。橋本知事の若さと情熱と人気を背景に、10年・20年先を見据えた政策をお願いします。
 身近なところで、成果主義の成功者(勝ち組)と落伍者(負け組)を見聞し、その断末魔にうごめく若者の悲鳴を共有しています。ペーパーテストによる成果主義でなく、多用な価値観をもつ「一人前」主義で、若者に夢を与えて欲しいと思います。
 柔軟な考えを持っている橋本知事に期待します。
 NIE(教育に新聞を)に賛同して、色々な新聞社の記事を掲載しております。

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