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第2 事案の概要等(003P)
略称は原判決に準ずることとし、初出の際に括弧内に表示する。
事案の概要
 本件は、控訴人梅澤及び控訴人赤松が、控訴人梅澤につい
ては被控訴人らが出版し若しくは執筆した原判決別紙書籍目
録記載1の書籍(「太平洋戦争」)及び同記載2の書籍
(「沖縄ノート」)によつて、控訴人赤松の実兄である赤松
嘉次(赤松大尉)については「沖縄ノート」によって、太平
洋戦争後期に座間味島及び渡嘉敷島の各住民にそれぞれ集団
自決を命じ、住民を多数強制的に死なせながら自らは生き延
びたという虚偽の事実を摘示され、控訴人梅澤及び赤松大尉
の社会的評価を著しく低下させられて、その名誉を甚だしく
毀損され、もって控訴人らの人格権や、控訴人赤松の赤松大
尉に対する人間らしい敬愛追慕の情を内容とする人格的利益
が侵害されたとして、次の各請求をした事案である。

@  被控訴人岩波書店に対し、人格権に基づき、「太平洋戦
争」及び「沖縄ノート」の出版、販売、頒布の差止め

A  被控訴人らに対し、不法行為に基づき、
(ア) 謝罪広告の掲載
(イ) 慰謝料の支払

 本件の請求及び訴訟物は以上のとおりであり、その法律構
成はマスメディアによる一般の名誉毀損事件と異ならないが、
本件訴訟の内容的な特色は次のような点にある。
@  太平洋戦争後期の沖縄における集団自決という63年前
の歴史的事実についての日本軍の各隊長の命令に関する記
述について、その名誉毀損等の有無を問うものであること

A  名誉毀損等にあたるとして出版の差止めが求められてい
る各書籍は、その第1版が、昭和43年(40年前)及び
昭和45年(38年前)に出版され、その後も版を重ねる
などして継続して出版されてきた書籍であること

B  各書籍中の各記述は、出版当時にはいわば通説とされて
いたものであるが、控訴人らは、その後昭和48年ころか
ら平成12年ころに公刊された資料等に基づき、その時か
ら真実相当性が失われたと主張して、その後の出版継続の
不法行為責任を問うものであること

C  提訴の動機は、単に個人への名誉侵害にとどまらず、本
件各書籍や高等学校の歴史教科書(平域17年度検定)等
の公の書物に、集団自決が日本軍の命令により強制された
かのごとく記載されているのを放置できないという点など
にあるとされ、集団自決の歴史を正しく伝えていくことが
本件訴訟の目的であるとされていること

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