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「くいしん坊」のカウンター席(写真提供:くいしん坊 長屋門(大石内蔵助邸)
丸山利一郎画
くいしん坊の丸山利一郎さんと最初の出会い
 地元赤穂の人から美味しい料理屋を紹介してもらった中に、常にトップになったのが「くいしん坊」である。
一度行きたいというと、「未だ早い」と言われ続けて数年たった。私の外食は大体妻と同伴である。予約をと
り、個室で料理を味わいながら、日頃の疲れを癒すのがパターンであった。
 予約を入れると、カウンターに座るよう言われた。店に行って最初の会話は「予約の場合は大体個室だっ
たが…」で始まったと思う。丸山さんその理由を「一番美味しい状態で出せるのがカウンター席なんです」
と言う。なるほど言われてみればもっともである。
 次に写真に見るように、カウンターと板場を遮る物は何もない。カウンター越しに息苦しい無言が続く。調
理前の素材がまな板の上に並べられる。手際よく裁いたり、調味したり、調理する手元が全て見える。そう
か、自慢の材料、修行を積んだ熟練の技。これを見るように出来ているのだ。どこで手に入れた素材か、ど
う工夫して味付けされているかを食べながら、教えてもらう。つまり、料理を通じて板前と客とがコミュニケー
ション
をとっているのだ。夫婦の会話は家でも出来るが、料理を介して板前さんとの会話はこのときしかな
い。食べるため、飲むために自分は存在する。あちこちかなり食べに行ったつもりではあるが、一品一品吟
味された材料、洗練された味付け、そして料理とは…頭をどやされた感じで、最初の出会いは終わった。
二回目の出会は次回へ

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