1687年発行(第033号)
生類憐みの令(2)
エスカレートする憐れみ令
赤穂城内犬之覚(大石神社蔵) |
貞享4(1687)年の正月の『御当家令条』 「一、捨子之有り候はゞ早速届るに及ばず。其所の者いたはり置、直に養候か、又は望の者之有り 候はゞ、遣すべく候。急度付届に及ばず候事。 一、主無き犬、頃日は食物給させ申さず候様に相聞候。畢竟食物給させ候えば、其人の犬の様に 罷成、以後迄六ケ敷事と存、いたはり申さずと相聞、不届に候。向後、左様之無き様相心得べ き事。 一、犬計家に限らず、惣て生類、人々慈悲の心を本といたしあはれみ候儀、肝要の事。 一、捨て病人、捨て牛馬せし者、死刑に処す」 貞享4(1687)年3月21日の『御仕置裁許帳』 「喧嘩している犬を分けるのに脇差を使い、犬を傷つけて八丈島送りになる」 元禄4(1691)年10月の『正宝事録』 「弥捨子仕間敷く候。向後町中にて子供出生致し候はば、早速、名主方帳面に付置べく申候。捨 子これ有り候はば 早速届けるに及ばず 其所の者いたわりおくべき候。養育まりかたきわけ有り候 はば、奉公人は其主人…町方は其の所の名主五人組え其の品申出し…其の所にて養育仕るべく 候」 元禄4(1691)年10月24日の『御当家令条』 「蛇使いを処罰する」 元禄7(1694)年の『御当代記』 「頃日は犬医者、犬針立などいふもの出来て、病犬をたすくるといへば、犬乗物、犬駕篭などとい ふ者にのせて医師の方へつれ行く事おびただし」 戌年に当たり、犬の飼育について一段と細かな触れが出された。 『御当代記』 @「町内には犬わか水と書いた桶、柄杓が置かれ、犬の字を紋にした羽織を着た番人がつけられ たが、あまり目立つので、人目に立たないようにせよ」 A「将軍の側に奉公する者は獣だけでなく魚介類・玉子に至るまで口にせず、蚤・ 虱・蚊・蝿も殺 さないと誓紙を出し、ボウフラを殺さないために下水を打たないようにすること」 B「犬を御いたはり遊ばされ候に付きて、犬目付といふ役人、江戸中は云ふに及ばず、果々をも見 あるきて、犬をうち申し候か又あしくあたり候ものあれば…その者の名をきゝ所を書き付けるべく候」 2.「その他の禁止事項」 @犬の毛色をすべて帳簿に記して、その出入りを把握せよ A食用に魚や鳥を飼ってはならない B野良犬には食物を与えよ C猪・鹿・狼などが田畑を荒らしたり、人間を殺傷したときは、そのときに限って銃 で打ってもよ い。ただし、追い払うのが本当である D蛇・犬・猫・鼠などに芸を教えて見世物にしてはならない E魚釣りは厳禁 F大八車を引いて行くときには、別の一人がついて犬を避けさせ、車に轢かれないよう先導せよ G犬の喧嘩は引き分けよ。傍観してはならない H病気の犬がいたら、犬医師に診察させて薬を飲ませよ。医師には謝礼を払え…など、 詳細な法律が次々に六十以上も発布された。 |