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エピソード

024_01

班田収授法(輸租と位田とは?)
 私の祖父は、戦前の地主です。母の記憶では、子供時代、小作人の納めた米俵の上に座って怒られたことがあったそうです。
 母の記憶では、小作人が米に困った相談に来ると、祖母は「旦那様には内緒やで」と言って、納屋の側で米を分け与えるのを見たといいます。私は、祖父の死ぬ直前、祖父に会うためにの家に行った記憶があります。
 小作人とか妾というのは、母の話から私が勝手に解釈したものです。
 祖父には、搾取する悪意があったとは思えません。そういうシステムがあったのです。このシステムの初見は『魏志』倭人伝に「祖賦を収む。女王国より以北には、特に一大率を置き、諸国を検察せしむ。諸国之を畏憚す。国中に於て刺史の如き有り」とあります。
 この土地を自分の土地だと言って、その土地を囲った瞬間から、搾取するピラミッド型のシステムが誕生しました。
 古代、私地私民の地方分権から公地公民の中央集権に変化しても、内容は、より効率的で、より統一的です。百姓に土地を与えることは、ボランティアではありません。税を徴収するために、土地を与えるのです。
 戸籍計帳が作られました。
 戸籍は、6年毎に作成されています。班田も6年毎ですから、戸籍班田のために作成されたことが分かります。
 計帳は、毎年作成されています。徴税は毎年ですから、計帳徴税のために作成されたことが分かります。
 他の種類を大きく分けると、輸租田不輸租田となります。「」は運輸から分かるように、輸送するまたは送るの意味です。「」は租税から分かるように、租税(税金)のことです。「不輸」とは輸送しない、つまり送らないを意味します。
 輸租田とは税金は払う田、不輸租田とは税金を払う必要のない田という意味です
 輸租田には口分田位田功田賜田易田であります。口分田の「口分」とは、一人一人等分に分けるという意味で、班田収授法により分け与えられた田です。
 位田の「」とは、五位以上の位に与えられる田です。功田の「」とは国家に対して功績のあった人に与えられる田です。賜田の「」は天皇から与えられる田です。易田の「」は、一般には”やさしい”という意味で使われますが、漢和辞典を調べると、”とりかえる”とか”次々とりかえる”という意味もあります。つまりやせていて次々とりかえる必要のやせた土地という意味です。
 「」の「禾」(ノギヘン)は作物のことで、「且」は一の上に物を重ねた様を意味し、合わせて”収穫した物の上にかかって徴収されるもの”となります。また、地租とか田租とかいう言葉がありように、土地からとれる収穫物の一部を納めさせる意味になります。
 「調」は”みつぐ”とも読みます。「調布」市という言葉がありますが、昔この地から税として布を朝廷に収めた名残です。つまり「調」とは布などの物納による税を意味します。
 「」は”もちいる”とも読みます。「庸人」という言葉があるように、人を雇うという意味があります。つまり労働力を提供する代わりに物を納めるということです。
 「雑徭」の「」のツクリの意味は”肉声で長く引き伸ばして歌うこと”、「彳」は”行くこと”で、合わせて長く労役に行かせる意味になります。
 「義倉」の「」は忠義とか正義などに使われるように、公共の為に尽くす意味があります。つまり凶作に備えて富裕の者が粟を貯蓄することを言います。
 「出挙」は毎年春に稲を貸しし、秋に利息をげることを言います。
表意文字から学ぶ歴史用語(V)
 歴史用語を字源的に、また、持っている知識を総動員すると、かなりのことが分かります。これが知恵です。知恵になると忘れることはなく、日常的に使用できるようになります。
 私は学問の基礎基本は、読解力と表現力だと思っています。他人の言うことや書いてある文書を正しく読解して、自分の考え(メッセージ)を相手に正しく表現することが最も大切なことです。

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