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エピソード

032_02

天平美術U(正倉院御物と世界性)ー日本の歴史は世界史の一部
 正倉院校倉造で有名です。
 正倉院は光明皇太后が夫の聖武天皇の遺品を東大寺に献納した品々で有名です。当時の工芸技術の最高水準を見ることができます。漆胡瓶、三彩鉢、碧瑠璃坏、箜篌(ハープ様弦楽器)、螺鈿紫檀五絃琵琶、白瑠璃碗などがあります。
 漆胡瓶の「胡」は、中国の北方や西方に住む遊牧民族の総称で、あごひげの長い人種を意味していました。瓶は、水をくむ器や液体を入れる小口の容器のことです。
 世界史の五胡十七国の「五胡」とは、5つの胡人(匈奴・鮮卑・羯・テイ・羌)のことです。十七国とは、彼らが建国した17の国のことです。その他、胡のつく言葉に、「胡人」・「胡弓」・「胡坐」・「胡椒」・「胡瓜」・「胡麻」・「胡琴」などがあります。
 漆胡瓶とは、ペルシア風の鳥形をした液体を入れる器です。
 三彩鉢の「三彩」とは、三色のうわぐすりをかけて焼いた陶磁器のことで、唐三彩が有名です。他にペルシア産三彩もあります。
 碧瑠璃坏の碧は緑色、瑠璃は中国のガラスです。坏を字源的に見ると、「不は、ふくれたつぼみ(菩)を描いた象形文字で、坏は「土+音符不」で、ふくれた土器」のことです。つまり、緑色をした中国製のガラスのふくれた形をした器ということになります。実際は西アジア産です。
 螺鈿紫檀五絃琵琶も素晴らしい作品です。
 螺鈿とは、「おうむ貝・あわび貝・夜光貝・蝶貝などの貝殻から真珠色の光を放つ部分を切りとって、漆器などの表面にはめこんで装飾としたもの」をいいます。
 紫檀は、「熱帯アジアに産するまめ科の落葉高木で、材質は赤紫色で堅く、高級家具材として珍重される材料」をいいます。
 つまり、熱帯産の紫檀に、螺鈿を高度の技術ではめ込んだ、5絃の琵琶のことです。ここには、熱帯樹や孔雀や駱駝が描かれています。
 忍冬唐草模様東ローマを源流として、イスラム世界を通り、天竺・唐から日本に伝わったと言われます。既に日本の歴史は世界の歴史の一部だったことが分かります。
白瑠璃碗に感動した女子高生
 白瑠璃碗を図表を使って説明した時のことです。授業後、ある女子高生が職員室にやってきました。彼女は、明るく、活発で、生徒会活動を積極的にする、先生にも生徒にも評判のよい生徒でした。
 「もう一度、白瑠璃碗の写真を見たい」と言うのです。「見て、どうするのか」と尋ねますと、「先生が紹介してくれた写真のなかで特に感動したのがあれば、家族で実物を見に行くことにしているんです」と答えました。
 次に彼女は、正倉院に行って見てきた感想を伝えてくれました。彼女はやがて関西では最も難関と言われている女子大に合格し、日本史の授業で扱った美術作品を堪能していると言うことでした。
 教える側が感動して伝えると、聞く側も感動して受け入れる好例といえます。

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