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エピソード

036_04

密教の流行W(曼荼羅の覚え方)
 最初数千億個の銀河を含んだ大宇宙は直系1センチメートルほどの大きさでした。それが大爆発して現在の宇宙が出来ました。水素などの集合体である星が天体を形成しました。
 物質の密度の高い中心部分が太陽となりました。残りのチリなどが集まって岩などができ、それが惑星の原型となりました。太陽をとりまく惑星の1つが地球で、こうして太陽系が形成されました。
 蝶は花から蜜をもらって生き、蝶が運んだ花粉で花は実を結ぶ。天地自然の理法にそって生きているのです。
 アメリカでの話です。鹿を襲う狼を全滅させました。すると鹿も全滅したのです。鹿が増えすぎ、草が不足したのです。天地自然の理法に反したということでしょうか。それが宇宙なのです。
 こうした「もちつもたれつ」の関係を縁起といいます。縁起の世界が曼荼羅なのです。
 小乗仏教の時代、阿羅漢(聖者)になることが目的でした。しかし阿羅漢になると、在家信者の教化に励まなくなりました。
 そこで、在家信者は阿羅漢を離れ、仏塔で釈迦如来を偲ぶようになりました。仏塔の管理者は「お釈yさんは肉体的には消滅しましたが、お釈迦さまが説いた宇宙の真理は永遠に残っている」と語りました。肉体としての存在と精神としての存在から曼荼羅が作られたのです。
 曼荼羅では仏陀を3つのタイプに分けています。(1)宇宙仏(宇宙そのものである仏陀)は姿が見えず、これは大日如来のことです。(2)理想仏(修行をして仏陀になった存在)は、阿弥陀如来や薬師如来像のことです。(3)人間仏(人間を導くために人間の姿をし、寿命もある仏陀)は、釈迦如来のことです。
 宇宙仏が使っている言葉は人間にはすぐ分かりません(密教)。そこで人間の言葉で導くために人間仏を派遣しました(顕教)。
 花が咲き、蝶が蜜を吸うのも宇宙の法則です。鹿が草を食べ、狼が襲うのも、宇宙の法則です。宇宙仏である大日如来の言葉が分かれば、天地自然の理法が分かるのです。目の曇りを払い、耳を澄ませば、大日如来の宇宙語による説法が聞こえてくるのです。ニュートンが万有引力の法則を発見したように、宇宙仏である大日如来の言葉に耳をかたむければ、宇宙の真理が分かるのです。
 顕教は仏をめざして修行する仏教で、そういう人を凡夫といいます。密教は仏をまねて仏らしく生きる仏教で、そういう人も仏と考えています。密教ではあらゆる生き物、宇宙の存在が仏陀と考えます。このような密教の考えが曼荼羅だと言えます。
 曼荼羅には金剛界曼荼羅と胎蔵界曼荼羅があります。2つ合わせて両界曼荼羅といいます。
 金剛界の金剛とは悟りの智恵が金剛のように強く壊れないという意味です。胎蔵界の胎蔵とは母親が胎児のように衆生を大事に護るという意味です。
 胎蔵界の中心は大日如来で、その周囲には4如来、4菩薩(文殊、普賢、弥勒、聖観)がいます。 
 観世音菩薩には聖、十一面、千手千眼、馬頭、不空羂索、如意輪など33の化身があります。
 その他の菩薩として、地蔵、勢至、虚空蔵があります。
 明王には不動、愛染、孔雀があります。
 天部として梵天、吉祥天、鬼子母神、帝釈天、弁財天、聖天などがあります。
難しい話を相手に分かり易く説明するのが、本当の先生
 曼荼羅のことばはよく知っていますが、きちんと正式に習った記憶がありません。密教が本当に分かって説明できる人は、上の話から推測しても、ほとんどいないのではないでしょうか。だから分かりやすいように説明できなかったんだと思います。それが密教の密教と言われる所以だと思います。
 ひろさちやさんには本当にお世話になりました。本でもTVでも、相手に分かり易く説明できる人が本当の理解者だという定義をすれば、ひろさちやさんが第一人者でしょう。私なりにひろさんのお話をここでまとめさせていただきました。間違っていたら、ご指摘をお願いします。
 今回は背景・教義を扱う関係で以下の書物を参考にしました。先人の労苦に感謝します。
ひろさちや原作『仏像のはなし』(すずき出版)
田中義恭・星山晋也編著『目で見る仏像-如来-』(東京美術)
瓜生 中著『仏像がよくわかる本』(PHP文庫)
西村公朝著『仏像の声』(新潮文庫)

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