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エピソード

074_02

鎌倉時代の建築様式(和様・大仏様・禅宗様・折衷様)
【1】大勧進重源の指導のもとで行われたある寺の再建から、芸術の分野で時代の新しい感覚を示す新様式の代表的な作品が生まれた。この新様式を説明した文として適当なものを選べ。
1.簡単な組立てで大きな建物を造りうる大仏様(天竺様)建築様式である。
2.色彩や装飾が少なく洒脱な趣のある禅宗様(唐様)建築様式である。
3.華麗な色彩と力強い描線をあわせもつ豪華な障壁画の画風である。
4.寄木造の技法を利用して造られた優美な定朝様の彫刻様式である。
【2】東大寺南大門に関連して述べた文として誤っているものを選べ。
1.この建築物には、運慶と快慶らの共同作業によって作られた金剛力士像が安置されている。
2.この建築物を造るにあたって、資金調達から建築まで中心になって行ったのは重源である。
3.この建築物は、源平の争乱による焼き打ちによって焼失した寺の再建の一環として建立された。
4.この建築様式は宋より禅宗とともに伝えられ、塗り柱を用いない簡素な造りである点に特徴がある。
 いきなりテスト問題から始めて申し訳ありません。
 私の持論は、歴史的に重要だから覚えるのであり、大切な内容だからテストに出るのです。テストに出るから、重要で、覚えるのではありません。これを再確認してみたいと思います。
 仏様(天竺様)は、挿肘木が特徴です。太い円柱をそのまま上屋まで立てたものに、「肘木」を幾層にも「挿」し込んで重ね、重い屋根を支える。寺院に最適の様式です。
 「天竺(インドも面積が大きい)・大仏は大きく、大きい寺院(東大寺大仏殿)に最適です」と覚えます。東寺南門がその代表です。図説で確認しておきましょう。
 禅宗様(唐様)は、細かく、長四角の垂木が特徴です。急勾配で軒反りが強い屋根を支えるために垂木を放射状に配置します。また、大虹梁(ハリ)の上に大瓶束(ツカ)を乗せて、仏壇全面の柱を省き、内陣を広く見せる工夫をしています。簡素な禅宗寺院に利用された様式です。
 「中国(。本当は宋です)から伝えられ、禅宗寺院に最適です」と覚えます。円覚寺舎利殿がその代表です。図説で確認しておきましょう。
 様、ゆるやかな勾配の屋根や檜皮葺の屋根などの繊細さ・優雅さが特徴です。これらは日本(大)の寝殿造の特徴でもあります。
 「日本(大)的な建築に、最適です」と覚えます。v華王院本堂や石山寺多宝塔がその代表です。図説で確認しておきましょう。
 折衷様(新和様)は、和様(主)に大仏様・禅宗様(従)を取り入れた様式が特徴です。
 「和様を主として、他の要素と折衷して作られた、しい和様」と覚えます。観心寺金堂がその代表です。図説で確認しておきましょう。
歴史的に重要だからテストに出るのです、「脅迫型教師」がもてはやされる時代は異常?
【1】の問題のミソは、重源が建てたある寺とはどこか、これが分かれば、簡単です。東大寺大仏殿です。ここまでくれば、答えは大仏様(天竺様)です。
(2)の問題のミソは、消去法でいくと、南大門の建築様式は大仏様(天竺様)ですから、「宋より禅宗とともに伝えられ」てもいませんし、「簡素な造り」でもありません。
【1】【2】は過去のセンター試験問題です。【1】の答えは「1.」で、【2】の答えは「4.」です。暗記して覚えた知識は、テスト終了と共に「さよなら」です。歴史的に重要な事項は、内容や文字から覚えるようにしたいものです。一生の宝となります。
 私の高校時代、「ここをテストに出すから覚えておくように」とテストに出すと脅迫して授業する教師は、指導能力のない先生だと評価されていました。
 歴史的に重要だから覚えるのであり、大切な内容だから、テストに出るのです。テストに出るから、重要で、覚えるのではありません。
 しかし、現在、もてはやされているのは、「脅迫型教師」です。私達の時代の無能教師が、評価される時代は、異常なのでしょうか。時代の流れなのでしょうか。
 建築様式の覚え方を説明していた時の経験です。「先生、はやく結論を言ってください」と生徒から指摘を受けたことがあります。私は「脅迫型教師」によって、「アンチョコ型生徒」が誕生しているのを実感したものです。
 ちなみに、「アンチョコ」とは「安直(アンチョク)」が転じた俗語で、教科書に注釈や答えなどをつけた安易な参考書・とらのまきのことです。私は、「重要な論理性を飛ばして、すぐ答え・結論だけを欲しがること」と理解しています。そうなると、情念の部分が強調されて、第二のヒトラー、第二のオウムの登場に手を貸すことになるでしょう。冷静な時、「自分が幸せになるために、他人を不幸にしていい」という論理は不合理だと誰でも気がつくでしょう。また、「儲け話は、他人には話さないものだ」は合理的でしょう。

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