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エピソード

094_02

御伽草子(浦島太郎、一寸法師、さるかに合戦)
 御伽草子の「御伽」は、高貴な人の側につきそって、話相手になり、退屈をなぐさめることや人をいいます。「草子」は綴じた本、絵入りの大衆本などのことです。語源的には、『千夜一夜物語』のように、富豪を相手に、夜な夜な、話をするテーマということになります。
 しかし、形式が平易な散文体であり、内容が庶民が好む夢物語なので、語源をそのまま、鵜呑みにするわけにはいきません。私は、角川書店の創立者である角川源義氏の「伽の語源は、絵解きの”とぎ”に由来する」という説を採っています。
 内容は、異界流浪譚(浦島太郎)、異類婚姻譚(狐女房)、立身出世譚(一寸法師・文正草子)、貴種伝説譚(物ぐさ太郎)、擬人型伝説譚(鼠の草子)、異類世界譚(さるかに合戦)などです。私は、大島建彦氏の「御伽草子の基調は庶民の口承文芸であり、内容は物語文学であり、描写は類型的な昔話である」という説に賛同しています。
 主な作品を解説します。
(1)一寸法師が貴族になる
(2)3年寝たままの物ぐさが皇族と判明する
(3)文太が製塩業で富む
(4)龍宮城に行って戻ってくる
(5)源頼光が大江山の酒呑童子を退治する
(6)放屁の特技で富み栄える福富と、それをまねて失敗する隣人を描く
(7)姫に家出されて鼠が出家遁世する
(8)十二支の動物が歌合せをし、狸が反逆・出家する
 その他の作品を列挙します。
 天稚彦物語・化物草紙・付喪神・こほろぎ草子・玉蟲の草紙
 ふくろふ・富士の人穴草子・俵藤太物語・びしやもんの本地・貴船の本地
 鶴のさうし・いはやのさうし・辨の草紙・かざしの姫君・花みつ
 玉水物語・美人くらべ・三人法師・伊香物語・音なし草紙
 小町草紙・御曹子島わたり・唐絲草紙・はちかづき・木幡ぎつね
 七草草紙・猿源氏草子・さゞれいし・蛤の草紙・小敦盛
 二十四孝・梵天國・のせざる草紙・濱出草紙・和泉式部
 さいき・横笛草紙
庶民に支持された物は強し
 つまり、庶民の素朴な夢が託された話が、庶民の間で長く語られ、伝承され、地域化され、誇張されてきた口承文芸が、一部の知識人によってまとめられた
 私が子どもの頃は、カマドに薪を入れて米を炊いていた時代です。火加減を見ながら、浦島太郎や桃太郎、一寸法師や大江山の鬼退治の話を、母から聞かされたものです。
 その原点が、この御伽草子だったのですね。当時は物質的に貧しく、お金も無ければ、物も無い時代でした。しかし、精神的には、満たされていたと感じています。
 今は、高度に電気化され、大量消費時代で、お金さえあれば、何でも、何時でも、どこでも買える時代です。しかし、毎日のように殺人事件が起きています。
 どうすれば、物質時代において、満たされた精神生活を送れるのでしょうか。やはり、他人がどう思おうが、自分が気に入ったことがブランドなんだという、自信を持つしかないでしょうね。

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