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エピソード

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商品作物(紅花・茶・藍・綿花)
 高校時代、「四木三草」という歴史用語を覚えさせられました。四木とはの4つの木からとれる作物のことです。三草とは紅花の3つの草からとれる作物のことです。それ以外に、綿花・油菜・櫨・藺などがあります。
 楮は紙の原料になります。桑は蚕のエサになります。漆は輪島塗など塗料の原料になります。
 麻は越後縮・奈良晒などの繊維になります。油菜(種子)は菜種油になります。櫨(実)は蝋燭の原料になります。藺は畳表になります。
 今回は、紅花・茶・藍・綿花の製法を紹介します。
紅花
 紅花は、エジプトからシルクロードを経て中国に渡来し、飛鳥時代に日本に伝わりました。十二単衣も紅花で染色されています。
 江戸時代に、口紅や紅染めの着物など、多くの人に愛用されるようになりました。
(1)7月上旬、太陽が昇る前、朝露で棘が柔らかい内に、七分咲きの花を手で摘み取ります。
(2)花蒸籠で、寝かせ水をうって、発酵させます。
(3)花びらが赤くなり、粘りがでて、丸めやすい状態になるまでつきます。
(4)手で丸めて団子状にし、花むしろに並べます。その上に、むしろをかぶせて裸足で踏みます。煎餅状にして自然乾燥させます。これが「紅餅」です。
(5)紅餅を冷水に浸して、黄色をもみ出して、黄色を流します。
(6)紅餅を灰汁(アルカリ液)に浸して、紅分を取り出します。
(7)取り出した紅分に梅酢(酸性液)を加えると、紅が発色します。「ゾク」(麻)に紅分を吸着させます。
(8)「ゾク」に灰汁(アルカリ液)をかけ、ロクロで紅の色素(紅液)を搾り出します。
(9)搾り出した紅の色素(紅液)に梅酢を入れると、紅分が細かい粒子となって沈殿します。
(10)沈殿した紅液から水分を切ると、トロリとして紅が出来ます。
 紅花の色素は、99%が黄色色素です。残りの1%が、赤色色素です。丹念に、本当に丹念に、紅色を搾り出す作業は、熟練と、根気のいる職人技ということがよく分かります。
 自然乾燥させたものを「紅」といい、口紅として使用します。
 染料として、紅染めの着物・振袖に使います。
 お茶は大別して、不発酵茶(緑茶)と半発酵茶(烏龍茶)・発酵茶(紅茶)になります。
(1)烏龍茶は、茶葉の発酵(炒り)を途中までにして、出来たお茶です。
(2)紅茶は、茶葉を完全に発酵させ、乾燥して作ります。
 緑茶には、葉を直射日光から避けるために、覆いする覆下園と覆いをしない露天園があります。
 覆下園の茶には、抹茶・玉露・かぶせ茶があります。
(3)抹茶は、新芽を、蒸した後、もまずに乾燥させ、臼でひいて粉にしたものです。
(4)玉露は、新芽を、蒸した後、揉みながら乾燥して作ります。
(5)かぶせ茶は、覆いを軽くした新芽を、蒸した後、揉みながら乾燥して作ります。
 露天園の茶には、葉を直射日光に当てる煎茶・番茶・ほうじ茶・玄米茶・玉緑茶があります。
(6)煎茶は、新芽を、蒸した後、揉みながら乾燥して作ります。
(7)番茶は、新芽を摘んだ後に収穫した二番目の葉を原料にし作ります。
(8)ほうじ茶は、番茶や煎茶を、強火で炒って作ります。
(9)玄米茶は、番茶や煎茶に、炒った玄米を混ぜて作ります。
 玉緑茶は、釜炒り製と蒸し製があります。
(10)釜炒り製玉緑茶は、鉄製の釜で茶葉を炒って作ります。
(12)蒸し製玉緑茶は、煎茶のように蒸してから曲玉状に作ります。
 藍は、様々な植物繊維から抽出されます。しかし、日本の藍は、日本固有の植物である「蓼」から採取されます。
 6月に刈り取った蓼の葉を細かく砕き、土蔵の中に積み上げてねかせ、「すくも」を作ります。
 「すくも」の作り方は、次のようにします。
(1)藍の生葉は、無色透明で水溶性の配糖体「インディカン」の状態すが、葉の細胞から外に出ると、「インディカナーゼ」という酵素に接して、インディカンから糖が離れ、「インディキシル」に変化します。
(2)「インディキシル」はめ、空気の酸素と接して、不溶性の「インディゴ」(藍色色素)に変化します。
(3)「インディゴ」化した生葉を乾燥させ(これを乾燥葉といいます)、約100日間醗酵させます。インディゴ以外の糖やタンパク質を分解し、「染め」(インジゴが主成分)状態にします。これが、染液の原料となる「すくも」です。
(4)「すくも」をさらに発酵させ、非水溶性の「インディゴ」を還元し、水溶性のインディゴ(「ロイコインディゴ」)に変化させます。
(5)水溶性のロイコインディゴに浸して染色し、染色した布を空気の酸素に触れさせると、不溶性のインディゴに戻り、藍色の布が完成します。
 布や糸は、大きな甕の染料(水溶性のロイコインディゴ)に浸して、乾かします。この作業を15回から20回します。絹の場合は、40回から45回ほど繰り返します。最後に天日干しをして、不溶性のインディゴに戻してやると、鮮やかな藍の色が現れます。
 藍の染料に浸す方法には、絞り染め・板締め・ローケツ染・型染・筒描き等があります。
(1)絞り染めは、布の一部を糸などで絞って染める技法で、絞った部分が防染され白く残ります。
(2)板締めは、布を折り紙のように畳み、上下から板や棒で挟んで染める絞り染めの一技法です。
(3)蝋纈(ローケツ)染の蝋は蝋燭のことです。纈は絞り染めのことです。ロウで模様を描いた部分は染料がのらないので、模様の部分が白く染め抜かれます。
(4)型染は、図柄を彫り込んだ型紙を布の上に置き、その上から防染糊、あるいは抜染糊を塗布して模様を付ける技法です。
(5)筒描きは、円錐形の糊筒に入れた糊で布にフリーハンドで模様を描く技法です。
無茶苦茶と、吸水性の木綿
 あなたが、彼女の家を訪問した時、お茶も出されなかったら、両親は、あなたをどう思っているでしょうか。それは「無茶」ですよ、ということになります。出されたお茶が、苦かったら、それは「苦茶」ということになります。いずれにしても「無茶苦茶」ということになります。あきらめましょう。これ、冗談。
 「鬼も18、番茶も出花」という言葉があります。「番茶」は、新茶の次に摘んだ二番手の茶のことです。
「出花」は、湯をそそいだばかりは、かおりがよいという意味です。つまり、二番手の茶でも、湯をそそいだばかりの茶はかおりがよいという意味です。「鬼も18」とは、鬼の娘でも、年頃になると、それ相応に美しくなり、世の情けも分かるという意味です。
 ここから転じて、「顔だちが悪くて見苦しい女でも、年頃になると、それ相応に美しくなり、世の情けも分かる時がある」となります。男女とも、潮時があるということですが、最近はセクハラ的というので余り使われなくなりました。
 それほど茶は、日本の生活に根付いているのです。
 私の大学は京都にありました。京都は盆とで、夏はとても暑いのです。私の友人で、豪傑がいます。彼は、暑い夏を乗り切るために、新聞紙を糊で貼りつけて、敷布団と掛け布団をつくりました。とてもしのぎやすかったと言う話でした。
 しかし、1週間もしない内に、新聞で作った布団は使えなくなったといいます。寝ている間に、汗が出て、新聞紙布団が、その汗を吸い取ります。汗を吸い取った新聞紙布団は、ボロボロになってしまったそうです。同時に、体中が新聞のインクまみれになったといいます。
 これを聞いて、知人に、人間の汗の話を確認しました。人間は、一晩に、コップ一杯分の汗を出すそうです。
 汗を吸い取る繊維に一番適しているのが、木綿ということでした。
 木綿は、アオイ科の植物である綿を栽培してできた白い花の綿毛です。木綿の繊維は、自然界で得られる最も純粋なセルロースだそうです。乾燥時には、セルロースは88〜96%になります。木綿の繊維は、立体的な積層構造になっており、断面は中空でです。水分はこの中空に吸着されます。
 蒲団を直射日光に当てて干した場合、とても軽くなるのは、中空の水分が蒸発するからです。長い間干さないで、万年床になった布団は、とても重くなっています。それは、木綿繊維の中の中空に水分が吸着いるからです。
 ファッションとして、カッターの下に何も着ないことが流行しています。木綿のシャツは、体から排泄する汗や体毒を吸着したり、体を硬いカッターから保護してくれています。
 「ファッションより、健康」でありたいものです。美容と健康に一番いいのが、木綿だと知りました。

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