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エピソード

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市川宗家と市川団十郎・海老蔵
 朝日新聞のサイト版に「海老蔵さん”4、5人組とトラブル” ほお骨にひび」と題して掲載されました(2010年11月25日付け)。
 「顔面などにけがを負い、25日朝に救急搬送された歌舞伎俳優市川海老蔵(本名・堀越孝俊)さん(32)が警視庁に、「知り合ったばかりの4、5人のグループと酒を飲んでいたところトラブルになり、男に殴られた」と話していることが同庁への取材でわかった。同庁は傷害容疑で捜査している。
 父で歌舞伎俳優の市川団十郎さんは25日夜、東京都内のホテルで会見し、「本人は『飲み屋で具合の悪くなった人を介抱していたら、そばにいた人に一方的に暴行を受けた』と言っている。お騒がせしたことを申し訳なく思っている」と話した」。
 毎日新聞のサイト版に「中村富十郎さん 死去 人間国宝”弁慶”あたり役 81歳」と題して掲載されました(2011年1月4日付け)。
 「関西歌舞伎で活躍した女形の四代目中村富十郎と、舞踊家で吾妻流家元の吾妻徳穂の長男として東京に生まれる。1943年に坂東鶴之助を名のり、大阪・中座で初舞台を踏む。恵まれた素質で早くから頭角を現し、当時は中村扇雀を名のっていた現・坂田藤十郎さんとともに「扇鶴時代」と呼ばれる一時代を築いた。
 その後東京に拠点を移し、64年に歌舞伎座で六代目市村竹之丞を襲名。72年に同座で「逆櫓(さかろ)」の樋口、「京鹿子娘道成寺」の花子で五代目富十郎を襲名した。
 94年に人間国宝、96年に芸術院会員、08年に文化功労者に認定された。
 96年に33歳年下の元女優、橋爪正恵さんと結婚。99年、富十郎さん69歳の時に鷹之資さん、03年、74歳で長女の愛子さんが生まれ、話題を呼んだ」。
 これらの記事を読んで、海老蔵さんの父・市川団十郎さんは市川家の12代目になり、初代の団十郎など傑出した歌舞伎役者により歌舞伎界では特例に「宗家」と呼ばれていることも知りました。
 さらに歌舞伎界の複雑な系図なども検証することにしました。
@市川団十郎 A市川団十郎 B市川団十郎
(1660-1704) C市川団十郎 D市川団十郎 E市川団十郎 F市川団十郎 ━*
G市川団十郎 H市川団十郎 I市川団十郎 J市川団十郎 K市川団十郎 @市川海老蔵
市川団十郎家
 歌舞伎界最高の名跡を市川宗家と言います。初代団十郎は荒事芸を創始しました。二代目団十郎は「助六由縁江戸桜」を初演しました。7代目団十郎は「勧進帳」を初演したり、「歌舞伎十八番」を制定しました。事件を起こした海老蔵はやがて団十郎を襲名するのでしようが、以前は、その逆でした。海老蔵が結婚したのが成田屋の屋号のおこりになっている成田山新勝寺でしたね。
 屋号は成田屋で、家紋は三升です。
H市川団十郎 A市川段四郎 @猿翁 B段四郎 B猿之助
(1885-1922) C段四郎
C段四郎
A寿猿
G中車
市川段四郎家
 9代目市川団十郎から出た市川段四郎が始祖で、もともとケレンミ(早変りや宙乗り)を得意としていました。3代目市川猿之助は、その特徴を活かして「スーパー歌舞伎」で評判を得ています。
 屋号は沢瀉屋で、家紋は三つ猿です。
@松本孝四郎 A幸四郎 B幸四郎
(1674-1730) C幸四郎 D幸四郎 E幸四郎 F幸四郎 J市川団十郎 K市川団十郎
G松本幸四郎 H松本幸四郎
A中村吉右衛門
A尾上松禄 @尾上辰之助
C中村雀右衛門 H大谷友右衛門
F中村芝雀
松本幸四郎家
 松本幸四郎家は、市川団十郎家に子が無い場合に、松本孝四郎家から養子を迎えるという団十郎家の弟子筋にあたる家です。4代目団十郎、5代目団十郎、11代目団十郎は、松本幸四郎家から迎えられています。5代目幸四郎は「鼻高幸四郎」を得意とし、7代目幸四郎は師匠の9代目市川団十郎譲りの絶品として「勧進帳」の弁慶役を1600回以上演じました。
 9代目松本幸四郎さんで印象に残っているのは、黒澤明監督の脚色をTV化した『まあだだよ』です。松たか子さんのお父さんです。
 2代目中村吉右衛門さんは、『鬼平犯科帳』の長谷川平蔵役です。
 屋号は高麗屋で、家紋は四つ花菱です。
@中村歌六 A歌六 C時蔵 D時蔵
(1779-1859) B歌六 @吉右衛門 A吉右衛門 嘉津雄 @信二郎
A時蔵 ━━━━━ ━━━━ @獅童 A獅童
P勘三郎 D勘九郎 A勘太郎 C錦之助
A七之助 C歌六 D歌六
B歌昇
中村歌六家
 3代目中村歌右衛門の門弟中村歌六を始祖とします。17代目中村勘三郎はNHK大河ドラマの子役で印象に残る縁起をし、『元禄繚乱』では主役の大石内蔵助役を公演しました。
 萬屋錦之助(以前は中村姓)は、私が中学生時代の映画少年だった頃、『新諸国物語 笛吹童子』・『新諸国物語 紅孔雀』などに主演しています。
 屋号は中村屋で、家紋は桐蝶です。
@中村歌右衛門 A歌右衛門 H福助
(1714-1791) B歌右衛門 C歌右衛門 C芝翫 D歌右衛門 D福助 F芝翫 A橋之助
E歌右衛門 C梅玉
D松江
D東蔵 C玉太郎
A翫雀
B翫雀 @雁次郎 A雁次郎 C坂田藤十郎
中村歌右衛門家
 1代目歌右衛門から4代目歌右衛門までは立役を得意としていました。5代目以降は女形の代名詞となりました。
 4代目歌右衛門の養子C芝翫は江戸に出て中村歌右衛門家を継承しました。
 4代目歌右衛門の養子B芝翫は大阪に残って中村鴈治郎家を分立させました。3代目中村鴈治郎は230年ぶりに4代目坂田藤十郎の名跡を2復活させました。
 屋号は成駒屋で、家紋は祇園守(中村歌右衛門家)、イ菱(中村鴈治郎家)です。
@尾上菊五郎 A菊五郎 B菊五郎 C菊五郎 D菊五郎 ━*
(1717-1783)
E梅幸 F梅幸 F菊五郎 D菊之助
E菊五郎 A九郎右衛門
E坂東彦三郎 P市村羽左衛門 G坂東彦三郎 D坂東亀三郎
N市村羽左衛門 O羽左衛門
尾上菊五郎家
 5代目菊五郎は「散切り物」を演じ、6代目は「世話物」で現代歌舞伎の基礎を築いたと言われています。
 屋号は音羽屋で、家紋は重ね扇に抱き柏です。
@坂東三津五郎 A三津五郎 C三津五郎 K守田勘弥 F三津五郎 G三津五郎 H三津五郎
(1745-1782) L守田勘弥 M守田勘弥 D坂東玉三郎
@坂東好太郎
3三津五郎 D三津五郎 E三津五郎
坂東三津五郎家
 9代目坂東三津五郎は城めぐりで有名だし、5代目坂東玉三郎は女以上の女の色気をだす女形として人気絶頂です。
 屋号は大和屋で、家紋は三ツ大(坂東三津五郎)、花かつみ(坂東玉三郎)です。
@片岡仁左衛門 A仁左衛門
(1656-1715) ‥‥‥ C仁左衛門 ‥‥ ‥‥ F仁左衛門 ━*
G仁左衛門 H仁左衛門
I仁左衛門 K仁左衛門 M仁左衛門
J仁左衛門 L仁左衛門 D我當 @進之助
A秀太郎 E愛之助
N仁左衛門 @孝太郎
片岡仁左衛門家
 在職時代、片岡我當が高校生を対象に「歌舞伎鑑賞教室」を実施し、古典歌舞伎を演じました。若手の歌舞伎役者だったのか、不評でした。そこで、父の13代目片岡仁左衛門が助太刀しました。「演題」は『足摺』で喜界島に流された僧瞬間を演じました。仁左衛門がでると凍りついた様な緊張感が走り、高校生は息をのむ事も忘れたと言っていました。その息子の片岡秀太郎の元妻が高田浩吉に娘美和です。
 市川海老蔵の殴打事件の影響で、代役に立ったのが秀太郎の養子片岡愛之助です。関西では海老蔵より愛之助の方が人気が高いということです。。
 屋号は松島屋で、家紋は七つ割り丸に二引きです。
10
@沢村宗十郎 A宗十郎 B宗十郎 C宗十郎 D宗十郎 C助高屋高助 ━*
(1685-1756)
F沢村宗十郎 G宗十郎 H宗十郎
沢村宗十郎家
 屋号は紀伊国屋で、家紋は丸にいの字です。
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@坂田藤十郎 A坂田藤十郎 B坂田藤十郎 ‥‥ C坂田藤十郎
(1647-1709) (1669-?) (1701-1774) (1931-)
坂田藤十郎家
 初代坂田藤十郎は、和事の芸を確立しました。江戸の市川團十郎と並んで最も権威がありました。1774(安永2)年 に3代目が亡くなると、長い間、欠番になっていましたが、231年後の2005(平成17)年に4代目坂田藤十郎が誕生しました。
 屋号は、中村鴈治郎(成駒屋)、 四代目坂田藤十郎(山城屋)です。家紋は中村雁治郎(イ菱)。四代目坂田藤十郎(五つ藤重ね星梅鉢)です。
12 凡例:(養子)、(娘婿)
 Wikipediaなどのホームページを参照しました。
映画・歌舞伎との個人的体験談
 小・中学生・高校生の時、「映画評論家になるのか」と言われるほど、小遣いのほとんどを映画につぎ込んでいました。
 印象に残った俳優は中村(後の萬屋)錦之助です。中村歌六家です。屋号は萬屋です。
 『銭形平次』で目の澄んだ二枚目役を演じた大川橋蔵は、6代目尾上菊五郎の門弟でしたが、将来性を買われて、6代目菊五郎の養子となり、2代目大川橋蔵を襲名しました。
 『眠狂四郎』でぞくっとする殺気を感じさせて市川雷蔵は、人間国宝の3代目市川壽海の養子となり、8代目市川雷蔵を襲名しました。37歳の若さで病死したことが惜しまれます。
 NHK大河ドラマ『赤穂浪士』で赤穂浪士の大役を務めた「永遠の二枚目」長谷川一夫(林 長二郎)は、初代中村雁治郎の娘たみと結婚しています。「みーはー」の語源は、若い娘が好きな「あんつ」と「やし」であると言われたりしています。
 大学時代は、下宿先のお嬢さんが映画女優の雪代敬子さんでした。太秦で撮影がある時、下宿の母親の所に帰ってきました。南座で歌舞伎がある時は、よく招待券を頂いたものです。
 今もその感動が残っているのは、13代目片岡仁左衛門、3代目實川延若(『冥土の飛脚・封印切』)ででした。
 逆に、中村富十郎です。台詞が聞き取れないし、若手には拍手でも負けていました。しかし、その後、人間国宝になったということです。非常に努力をしたということでしょうか。

 秘事口伝といいながら、弟子を養子にしたり、娘の婿を抜擢して、屋号を維持しています。
中村吉之助主演『鬼平犯科帳』
第1シリーズ(1969年10月7日〜1970年12月29日)
第 1話 血頭の丹兵衛 第34話 むかしの男
第 2話 四度目の女房 第35話 情炎
第 3話 谷中いろは茶屋 第36話 白痴(こけ)
第 4話 蛇の眼 第37話 おみね徳次郎
第 5話 怪談さざ浪伝兵衛 第38話 敵(かたき)
第 6話 本所・桜屋敷 第39話 猿(ましら)の銀次郎
第 7話 暗剣白梅香 第40話 かわうそ平内
第 8話 密偵(いぬ) 第41話 白浪看板
第 9話 唖の十蔵 第42話 恋文
第10話 女掏摸(めんびき)お富 第43話 うんぷてんぷ
第11話 老盗の夢 第44話 おみよは見た
第12話 妖盗葵小僧 第45話 夜鷹殺し
第13話 埋蔵金千両 第46話 報復(しかえし)
第14話 お雪の乳房 第47話 運の矢
第15話 むかしの女 第48話 密通
第16話 駿州宇津谷峠 第49話 神田明神裏
第17話 熊五郎の顔 第50話 かまいたち
第18話 市松小僧始末 第51話 艶婦の毒
第19話 霧(なご)の七郎 第52話 乞食坊主
第20話 山吹屋お勝 第53話 おせん
第21話 浅草御厩河岸 第54話 色と欲
第22話 血闘 第55話 深川千鳥橋
第23話 罪(つみ) 第56話 金太郎蕎麦
第24話 八丁堀の女 第57話 お菊と幸助
第25話 男の毒 第58話 雨の湯豆腐
第26話 井筒屋おもん 第59話 おっ母ァすまねえ
第27話 五年目の客 第60話 罠(わな)
第28話 縄張り 第61話 あほうがらす
第29話 麻布ねずみ坂 第62話 罪ほろぽし
第30話 盗法秘伝 第63話 女賊の恋
第31話 女の毒 第64話 女の一念
第32話 まじめの新助 第65話 おしろい猫
第33話 鬼坊主の花  
第2シリーズ(1971年10月7日〜1972年3月30日)
第 1話 剣客 第14話 平松屋おみつ
第 2話 猫じゃらしの女 第15話 下段の剣
第 3話 兇族 第16話 掻掘のおけい
第 4話 狐火(前篇) 第17話 のっそり医者
第 5話 狐火(後篇) 第18話 情事
第 6話 おしげ 第19話 刃傷以后
第 7話 夜狐 第20話 裏道の男たち
第 8話 兇剣(前編) 第21話 あいびき
第 9話 兇剣(後編) 第22話 殺しの掟
第10話 隠居金七百両 第23話 泥鰌の和助始末
第11話 女賊 第24話 大川の隠居
第12話 鈍牛 第25話 礼金二百両
第13話 雨乞い庄右衛門 第26話 はさみ撃ち
 歌舞伎に精通した人の話では、歌舞伎界では、最高位は成田屋(市川団十郎家)、次は高麗屋(松本孝四郎家)、その次は音羽屋(尾上菊五郎家)だそうです。最近は、中村屋(中村歌六家)が17代目中村勘三郎の好演で、人気が上昇しています。
 最新情報では、最高位はやはり成田屋、次は音羽屋、次は高麗屋ということです。
 私は、成田屋は当然としても、松本孝四郎・中村吉右衛門の高麗屋を支持していますが、TVでの活躍と歌舞伎での活躍は別物ということでしょうか。

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