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エピソード

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大衆文化の登場(1)、大衆文化とは?
 大衆文化とは何か?。
 大衆文化の文化とは何か。文化を英語ではcultureといいます。cultureの原語はcultivate、つまり耕作するということです。人間に最も近いといわれるチンパンジーは、食物は採集できるし、言葉も喋れるし、道具も使えるし、表情も豊かです。しかし、田畑を耕して、米や野菜を栽培できません。これが人間とチンパンジーとの基本的な差です。つまり、文化とは「人間が作り上げた物」ということになります。
 では、大衆の定義は何でしょうか。国語辞典などをひくと、「世間一般の人」という訳の分からないことを書いています。他には、「農民・労働者など、社会の大多数を占める、特殊な身分・地位のない一般勤労者」とか「社会を占める、大多数の・大勢を占める、とされる人々、またはそれに属する個人」と分析しているのもあります。
 では、大多数を占める人の文化を大衆文化というのかというと、少し違います。
 私には、日本の歴史を使って大衆文化を説明する素材がありません。そこで、ヨーロッパの音楽の歴史を使って大衆文化を説明したいと思います。
 私は、モーツアルトが大好きで、小学館から発売された『モーツアルト全集(全15巻)』(CDの枚数は180枚)をBGMにして、このエピソード日本史を書いています。録画している映画『アマデウス』も何度も繰り返し見ています。
 最初、モーツアルトは宮廷の作曲家・演奏家として登場しました。やがて、たくさんの観客の前で、指揮して、自分の作品を発表します。ここで描かれているのは、数人で演奏する室内楽から大勢が演奏する交響楽への変化です。また、一部の特権的な人に占有されていた音楽が、やがて大勢の人に親しまれる音楽(主に旧制度を批判する歌劇)に変化していったことです。この大勢の人は、モーツアルトの音楽を鑑賞し、モーツアルトのメッセージを理解できる人です。
 工場制機械工業には、苗字(姓名)が必要です。読み書き(教育)が必要です。そして、産業革命による大量生産・大量消費を背景に、高等教育を受けた人々が、たくさん輩出されました。
 私は、教育によって、教養や知識を身につけた多くの人々が作り、支持した文化を大衆文化と定義したいと思います。
 大衆文化を育んだ教育の普及に目を向けたいと思います。 義務教育の尋常小学校の就学率を見ると、学生に反対したストが嘘のように、1912(明治45)年には、ほぼ100%になっています。この教育力が日本の発展を支えてきた原動力だったのです。
尋常小学校就学率(和歌山県。単位:%)
1877年 1882年 1892 1897年 1902年 1907年 1912年
男子 39.7 62.0 65.2 77.0 96.2 88.9 99.2
女子 11.7 25.4 31.6 45.7 86.3 97.1 98.3
尋常小学校就学率(全国平均)
1873年 1877年 1882年 1887年 1892年 1897年 1902年 1907年 1912年
男子 40% 55% 65% 67% 75% 80% 93% 98% 99%
女子 10% 25% 32% 35% 34% 50% 80% 93% 95%
 中学生の数は1920年には17万人でしたが、1930年には34万人と倍増しています。また、大学の生徒数も1920年には3000人でしたが、1930年には3万人と10倍になっています。
 都市を中心に膨大な知識層が誕生し、彼らが新しい文化を耕したのです。これを大衆文化といいます。
 彼らが愛読したのが、活字文化です。新聞では、『大阪朝日』・『大阪毎日』・『東京朝日』・『東京日日』などはそれぞれ100万部の購読数を誇りました。中央の情報が日本各地に伝わりました。
 雑誌では、『改造』(山本実彦)、『中央公論』(滝田樗陰)、『キング』など個性的なものが登場しました。
 改造社が1冊1円で発行した『現代日本文学全集』は、円本といわれて、気軽に日本の名作を手にすることが出来ました。岩波書店からは岩波文庫が出されて、古典・名著が安価で、読める時代になりました。
 サイレント映画は、1896に上映されており、トーキー映画は1921年に上映されました。
 ラジオ放送は、1925年に始まりました。この時の契約者は、36万人でしたが、1931年頃には100万人におよび、中央の情報は、より早く、日本各地に伝播していきました。
 衣食住に関してみると、衣は洋服が一般化し、看護婦(今は看護士)やバスガールの制服が話題になりました。食は、洋食が一般化して、和洋折衷の食べ物が氾濫しました。住は、鉄筋コンクリ−ト造りの公共建築や、家庭における電灯の普及が一般化しました。
物価とサプリメント
公務員の初任給
明治27年 明治40年 明治45年 大正7年 大正15年 昭和12年
50円 50円 55円 70円 75円 75円
映画館入場料
20銭 10銭 15銭 20銭 30銭 50銭
大学授業料
48円 55円 120円 160円
コーヒー
2銭 3銭 3銭 5銭 10銭 15銭
レコード
1円25銭 1円20銭 1円50銭 1円65銭
 「ビタミンCのサプリメント(栄養補助食品)が飛ぶように売れ」ているそうです。
 「ノーベル賞科学者のライナス・ポーリング博士が、”風邪をひいたらビタミンCを飲めば治る。毎日飲めばひかない”と発表して以来、”風邪にはビタミンC”が定説になった。毎日、錠剤やカプセルを飲んでいる人も少なくない」そうです。
 日本の年間消費額は8600億円で、国民1人当たり6800円は、アメリカを抜いて世界一だそうです。
 サプリメントは、食事では十分に栄養を補給出来ないときに補うのが本来の役目ですが、錠剤やカプセルが主で、食事を取らない人もいるといいます。
 最近の研究では、残念ながら、ビタミンCをせっせと取っても風邪を防ぐことはできないという結果が出ています。
 ミカンやレモンなどの天然のビタミンCに比べ、人工のサプリメントでは吸収率が5割も少ないという研究結果が出ています。
 医者によれば、「風邪の予防には、うがいと手洗いを忘れず、栄養価の高いものを食べる。ひいてしまったら、休養と睡眠を心がけ、早めに医師に診てもらう」。これが一番です。(神戸新聞2006年1月30日付け「正平調」より)
 大衆文化時代は、マスメディア時代ともいえます。
 サプリメントを主食にしている若者が増加しているそうです。どうして、このような偏った情報しか利用しないのでしょうか。
 形は悪いし、虫も食っているが、無農薬の天然物が一番です。土を「天地返し」したり、落ち葉や鶏糞などのアルカリ性の栄養を与えるような、土を愛する人の作物は、水々しいし、何も調味料をつけなくても、とても甘い。
 ところが、添加物や防腐剤を入れた食べ物は、口にしたときは、美味しいが、しばらくすると、甘みがねばねばして、水を飲まずにはいられない。
 マスメディア時代は、自分の舌で、本物を見極めることが大切です。それがブランドです。人が並んでいても、いなくても、自分の舌で美味しいものが、美味しいのです。自分を大切にしたいものです。

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